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女王様ゲームで負けない!②

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 アイヴィは紙をハサミで切って4つのくじを作りながら、レックスに説明をする。ここにいるのはサキュバス4人とレックス。彼が引く分のくじは用意されなかった。つまり、彼女たち4人で行われるゲームであるということ。

「私が説明しましょう。女王様ゲームとは我々サキュバスが行うゲームで、くじを引いて女王様を決め、他の番号を持ったサキュバスに男性をいじらせるゲームです。今回のいじられる対象はレックス様です」

「ねぇ、それボクに得ある? いじられるだけのボクになんか得あるか?」

「くじは用意しました。ヴァネッサ姉さん、サフィア、お母様が引いて、残った最後のくじを私のものとさせていただきます」

「聞けや」

 てきぱきと準備を進めていくアイヴィは、しかしレックスの言葉を涼しい顔で華麗にスルー。それぞれに王冠、1・2・3の番号を書いて折りたたむ。そして、テーブルの上に折りたたまれた状態で完成したくじが4つ置かれる。

「よし、やるか。ただし今回はあまりにも過激なものは禁止だ。調子に乗るとレックスが枯れるからな」

「では始めるとしましょう。女王様だーれだ!」

「慈悲は無いのか? おい、ボクの意見は無視なのか?」

 相変わらず無表情であるが元気のよいアイヴィの掛け声と共に、置かれたくじがばっと取られる。それぞれそのくじをすぐに開き、ある者はムッと表情を硬くし、ある者はにんまりと笑った。

「うむ、妾だ」

 最初の女王様はレックスたちの母であるマーガレット。1番最初に命令権を引いてくるあたり、運が強い。

「では妾から1番に命ず。レックスの〇〇〇ピーーをしゃぶれ。出すまでな」

「さっそく過激禁止のルール破るなぁ!」

 下半身をズボンの上から押さえて身を守ろうとするレックス。その光景を見てマーガレットとサフィアはぷっと噴き出した。もうこの時点で、ビビった彼の感情ごちそうさまなのである。感情に大きな動きがあった時に放出されるエネルギー、それがサキュバスの食事なのだ。

「なぁに、冗談だ」

「あっ、私が1番だ。じゃあレックス君の〇〇〇〇〇ピーーーーを気持ち良くしてあげるね? ちょっと久しぶりに咥えるから、上手くできるかなぁ」

「冗談だと言っているであろう。では改めて1番、レックスに告白せよ」

「もう! 変な冗談はやめてよお母様! 本気にしちゃったよぉ。……よし、告白なら」

 ベッドに座っているレックスの横に座り込み、ヴァネッサは上目遣いでレックスを見る。皆の前で告白するためか頬は羞恥しゅうちで赤く染まっており、緊張していることがうかがえる。

「レックス君」

「な、なんだよ改まって……」

「お姉ちゃんはレックス君のことが大好きだよ。いつも大切に思ってるからね? 幸せにすると言ってくれたあの日から、私はレックス君のことが大好きです、愛しています。これからもずっと一緒にいてね」

 そっとレックスの頬に添えられる手。ヴァネッサの顔がゆっくりと迫り、暖かく柔らかな唇が重ねられる。そのあまりに自然な動作に驚いたレックスは目を丸くした。動きのない静かな口づけ。
 やがてレックスはその感触を味わうように目を閉じた。穏やかな空気に包まれた後、ヴァネッサは唇を離して彼を抱擁する。翼でも覆う形のいつもと同じ抱擁だが、その抱きしめ方は普段より優しい。
 ふわりと抱擁が解かれ、お互いにもじもじ。

「突然告白しちゃってごめんね? お姉ちゃんのこと、き、嫌いにならない?」

「いや……その、ボクもヴァネッサのことは大好きだから心配しないで」

「うん。嬉しいよレックス君、大好き」

 改めて思いの丈を打ち明けたことで、お互いに顔が真っ赤に染まる。恥ずかしい、嬉しいという気持ち。つまりそれはサキュバスのごちそうというわけで……。

「あぁ~、お姉ちゃんの告白で出た、お兄ちゃんの感情美味しいんじゃあ~!」

「ごちそうさまですお二人とも」

「うむうむ。まんざらではないようだな、レックス」

「空気台無しだよこいつら……」

 アイヴィは無表情で、そしてサフィアとマーガレットはぱちぱちと拍手する。
 そして再び始まる女王様を決めるくじ引き。次に女王様となったのはいつも無表情なアイヴィだった。しかし命令できることが嬉しいのかパタパタと翼が小さく羽ばたく。そこが可愛らしいんだよなぁとレックスは思ったのだが、その瞬間にアイヴィは彼をちらっと見る。考えていたことがバレたようだ。

「では3番に命じます。レックス様に膝枕をして、撫でてあげてください」

「うむ、妾だ。さっ、おいでレックス。この母が膝枕となでなでをしてやろう」

 自信満々な笑みを浮かべる母。だが、12歳にもなってまた母親に膝枕をしてもらうのかとレックスに羞恥の気持ちが湧く。隣ではその感情を味わっているのか、サフィアとヴァネッサがほんわかしていた。

「むぅ、お母様ばかりズルいです。さすがサキュバスクイーンだけのことはありますね。」

「くっ、恥ずかしすぎる……。ねぇ、これ拒否権――」

「ないです」

「くっ!」

 マーガレットがベッドに腰掛け、ぽんぽんと自分の膝を叩く。しょうがなさそうにももの上に頭を乗せたレックスを待ちかまえていたのは、彼女の顔を伺えないほどの下乳だった。

 ――いや、胸でか! 胸、下から見るとめっちゃでっか!? 顔見えないじゃん!

 仰向けではなく横向きに座ればよかったという公開も束の間。サキュバスクイーンが持つ強力な淫気ではなく、マーガレットの母としての優しい香りに包まれて、レックスのまぶたが段々と重くなっていく。頭を優しく撫でられるとともに与えられる眠気は耐えがたいもので、すぐにレックスはまぶたを閉じてしまった。

 ――あれ? なんだか眠たく……。安心する……。

「ねむい……」

「ん? よしよし、母の膝枕でゆっくりと休むがよい」

「おかあ、さん……」

 その言葉を最後に、すうすうという静かな寝息がたち始める。日々の搾精といたずら、そして修行や勉学で疲れが溜まっていたためか、慈愛の膝枕で睡眠に入ってしまった。こうなってしまえばいたずらなどすることができず、ゲームは終了である。

「ありゃあ、お兄ちゃん一気にすとんと寝ちゃったぁ」

「日々の鍛錬や勉学もありますし、疲れがたまっていたのかもしれませんね」

「あうぅ、レックス君の寝顔可愛い。吸精したいよぉ。でも、あまりにも気持ちよさそうで、私達も眠くなってきちゃったかも」

「しょうがないなぁ。ではこの母が面倒を見てやろう。お前達も今日は一緒にお休みしてはどうだ?」

「よろしいのですか? お母様」

「お前たちはいつもよくやってくれている。今日くらい良いだろう。レックスと共に幸せな夢を」

 幅の広いヴァネッサのベッドの上に川の字で寝転がるサキュバスメイド達。その姿を見て、マーガレットは暖かく微笑むのだった。

 後にマーガレットの膝枕から目覚めたレックスは語ったという。「負けてないが? ただ眠たかっただけだし、あれを負けと言うならアイヴィ達みんなも負けているが?」と。
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