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キメラサキュバス3人、ご主人に逆らえない

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 研究員たちの手により、キメラサキュバス達はカプセルルームから運び出された。サキュバスとしての風貌を含むせいか、実験服を着こんでても目立つほどに、研究員たちの股間が立派にテントを張っていたことは言わないでおこう。

 それから俺は上に事情を冷や汗流しながら説明した。彼女たち3人が会社や全人類に楯突こうとしたこと。それを危険に思った俺が、緊急で彼女たちの知能に変化させるプログラムを流したこと。

 上の答えはこうだった。

「では、生みの親である君が彼女たちが安全か確かめてくれ。隔離ルームで彼女たち3人と数日間過ごすがいい。自分の身で有用性を見せてくれ」

「えっ」

 実質、死刑宣告だった。


 と、いうわけで。髪もひげも整えていない俺は、研究服だけ着て何も持たずに真っ白な隔離ルームへと押し込まれたのである。ここを何日か無事に生き残れば、俺は晴れて生存と。……殺す気か!? 殺す気だわ!

 部屋の隅では、こちらを恨めしい目で見るキメラサキュバス3人。

 アメジスト色の長髪に、蛇のような細い瞳の目と蛇腹状の下半身を持ち、さらにドラゴンみたいな大きな翼を持ったサキュバス。名前は実験体1番『ドラコー』。

 尖った耳を警戒気味に立たせ、艶のある黒色の毛並みが両手両足に生えている獣人サキュバス。実験体2号『ヘルハウンド』。

 2本の足の代わりに、8本の触手と2本のさらに長い触手を生やした、電気イカサキュバス。実験体3号『クラーケン』。

 クラーケンの長い2本の触手がうねうねとこちらに切っ先を向け、ヘルハウンドがぐるると唸り、ドラコーがこちらを射殺すような細い目で見る。
 生存確率0です。どうもありがとうございました。

 死を前にして、もはやまともな言葉も出ない。どうしろというんだ。

「あなたが今までのご主人ですのね……。お顔を初めて拝見しましたわ。研究続きで貧弱そうな体つきで、美味しそうな肉が少なそうですの……」

 獣人サキュバスのヘルハウンドがじりじりと寄ってくる。もう殺してくれ。それでも俺はあと一秒でも生きていたいと後ずさる。そして壁に背中をぶつけた。

「ボク、最後にえらい目に遭わされた。復讐する」

 ねちゃねちゃと音を立てながら、クラーケンがぬめぬめとした触手たちを器用に動かして前進する。俺の体が震えてくる。

「どうせオレ達、処分されんだろ? ならキメラサキュバスらしく、お前の精液も水分も全部搾り取ってやるよ!」

 翼をはためかせて長い尻尾ごと飛翔するドラコー。ばっさばっさと大きく羽ばたき、上空から見下ろしながらどんどんと迫る。俺、もう泣いていい?

 上空に舞い上がったドラコーを見ていた間に、すぐ近くにヘルハウンドが忍び寄っていた。彼女たちは全員裸で、人類には醸し出せないエロスを出しているが、こんな状況ではそんなの感じていられない。

 ヘルハウンドが俺の首筋に顔を近づける。金色の瞳に見抜かれる。首筋の匂いを嗅がれ、俺はもうへなへなとその場に崩れ落ちそうだ。

「ふんっ。お風呂には入っているようですが、身だしなみがちゃんとしていないですの。肉のノリも悪そう。最後の食事がこれとは、マズッそうですの……!」

 グルルルルル……!

 ヘルハウンドの毛並みと尻尾が逆立ち、明確な怒りをあらわにする。
 あっ、これ死んだわと思った俺が口にした言葉は……。

「やっ、やめてくれ!」

「わんっ!?」

「ひゃい!?」

「うわぁ!?」

 ぺたんっ、ぐちょりっ、どしゃんっ。ヘルハウンドがその場にお座りし、クラーケンがビビッて怯え、ドラコーが空中から真っ逆さまに落下した。

「な、何が起こったんだ……?」

「じょ、状況を説明しますの! わたくしたちはご主人の命令には逆らえませんの! かっ、勝手に口が……!?」

「ボク、ご主人がやめろって言ったから! な、なにこれ!? なんで状況説明を」

「オレ、やめろって言われたら飛べないよぉ! な、なんだーっ!?」

 えっ。

 一時の空白を置いて、俺の頭は状況を少しずつ理解していく。まさか、こいつら俺の命令に逆らえないように、脳内チップがバグを起こしたのか?
 確かにあのときに作成したプログラムには、命令絶対みたいな動作をするように設定したような感じもするが、きちんとした完成とはいいがたい。死にたくない気持ちで一生懸命だったので、その内容もあんまり覚えていない。

「えっと……みんな、おすわり」

「わおん!」

「うん!」

「オレ、お座りどうすればいいの……? とぐろ?」

 既にお座りの姿勢で待機していたヘルハウンドは吠え、クラーケンは触手をべたぁと地面に広げて姿勢を低くし、ドラコーは困惑気味に尻尾でとぐろを巻く。

 あー、これ確定だ。こいつら、俺の言うことには逆らえないんだ。
 じゃあ死ねって言ったら舌噛んだりして自害するのかな。それはそれで、貴重な実験体を失ったとして残った俺も処刑ものなんだが。

「ご、ご主人……まさか、オレ達に死ねとか言わないよな?」

「や、やめてほしいですの……! 何でも言うことを聞きますから、それだけは!」

「ボク、怖いよ……! 死ぬのやだよ……!」

 なんだろう、キメラサキュバス達が一気に怖くなくなった。
 しかし、彼女達と数日間過ごして、全員無事であることが生存への目標となる。寝ている間に襲われたりしないように……。

「じゃあみんな聞け。俺に恋してみろ」

「な、なんだその命令!? そんなの、オレが、聞くわけ……」

「ハレンチですの! わたくし、あなたのような人を好きになる、なんて……」

「ボク、そんな言葉……受け入れない、もん……」

 3人のキメラサキュバス達は、その場で両手を合わせ、頬を赤く染めながらもじもじと困り果てるのだった。目を逸らしたり、じっと見つめたり、目線があったと思えば下を向かれたり。はい、キメラサキュバス3人性奴隷確定です。

 どうせ生き残っても、上から実用性無いじゃないか死ねと言われかねない命だ。この真っ白な空間が最後なら、彼女達に好き放題やってやる。
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