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第33話 オレンジ色の帰り道 at 1995/4/17
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「つーん、だ」
「……えっと」
具合が悪いのは本当だし、あまり長居をしてもアレだから、と咲都子の家から退散した僕たち。隣を歩く純美子が唇をとがらせてそっぽを向いているのは、例の名前呼びのせいである。
「あ、あのさ? で、でも、元気になりそうで良かったよね、咲都――野方さんもさ?」
きっ!!
なんだよぉ……睨むことないじゃんかよぉ……。
またもや純美子の機嫌をちょっぴり逆撫でしてしまったらしく、本気でしょんぼりする僕。
咲都子の住むハー20号棟から帰るなら、純美子と僕は逆方向になる。でも、なんとなくこのまま帰る気にはなれなくって、純美子の家がある団地の中の商店街の方へと一緒に歩いていた。あたりは夕食の準備にやってきた人たちの姿が増え始め、誰かに見られやしないかとソワソワしてしまう。
と、突然、
「ああ! もうっ!」
純美子は苛立ちをあらわに、両手を突き出すように地面を思いきり踏みしめて声をあげた。
「えと。あの……ごめんね?」
「……なんで古ノ森君が謝るの?」
「い、いや。なんとなく、と言いますか……」
なんともだらしない言い訳めいたセリフを口に出すと、純美子は飛び跳ねるように振り返った。
「古ノ森君は悪くないでしょっ!? なんでもないのに謝らないのっ!」
「理不尽」
「うるさいうるさいうるさいーっ! いいから黙ってて! もうっ!!」
オレンジ色の夕陽に照らされた純美子の顔は真っ赤に染まっていて、やっぱりかわいかった。最後にひとつ、とばかりに盛大に鼻を鳴らして溜息を吐き出すと、純美子はようやく口を開く。
「あ、あたしが、あたし自身に対して怒ってるのっ! それだけ! それだけなんだからっ!」
「そ、そっか。了解」
勢いに呑まれて僕があいづちを打った途端、なぜだか純美子はくつくつと笑い始めた。
「ふふふ……変なの。なんにも気づいてないくせに。了解! だって。うふふふふ――」
「?」
ますます訳がわからないけれど、なんだかほんのちょっぴり機嫌が直ったようでよかった。純美子の住むハー12号棟まではあと少しだけれど、ズレていた歩調が少しずつ揃っていった。
「今日はありがとね、古ノ森君。あたしが無理に誘っちゃったから」
「あ、いや! いいって! 僕だって誘われて嬉しかったし」
「………………嬉しかった、の?」
「え――?」
足を止めた純美子を振り返る。
わずかに首を傾げて問いかけるように、純美子は僕を見つめていた。
「今、嬉しかった、って言ったの?」
「あ……うん」
まずい――咲都子の病気が伝染ったか?
すごくドキドキして、苦しくって――。
だからかもしれない。
刻々と色を変えていく夕焼けに照らされた純美子の姿があまりにも眩しすぎて、気づいた時にはすでに、僕は今の気持ちを素直に言葉に出してしまっていた。
「い、今だってさ、一緒にいると嬉しいし楽しい」
純美子は笑う。
そしてスカートの裾をひるがえして、その場でくるりと踊るように回った。
「実は、あたしもなの! ……ねえ、知らなかったでしょ? じゃあ、また学校でね!」
「……えっと」
具合が悪いのは本当だし、あまり長居をしてもアレだから、と咲都子の家から退散した僕たち。隣を歩く純美子が唇をとがらせてそっぽを向いているのは、例の名前呼びのせいである。
「あ、あのさ? で、でも、元気になりそうで良かったよね、咲都――野方さんもさ?」
きっ!!
なんだよぉ……睨むことないじゃんかよぉ……。
またもや純美子の機嫌をちょっぴり逆撫でしてしまったらしく、本気でしょんぼりする僕。
咲都子の住むハー20号棟から帰るなら、純美子と僕は逆方向になる。でも、なんとなくこのまま帰る気にはなれなくって、純美子の家がある団地の中の商店街の方へと一緒に歩いていた。あたりは夕食の準備にやってきた人たちの姿が増え始め、誰かに見られやしないかとソワソワしてしまう。
と、突然、
「ああ! もうっ!」
純美子は苛立ちをあらわに、両手を突き出すように地面を思いきり踏みしめて声をあげた。
「えと。あの……ごめんね?」
「……なんで古ノ森君が謝るの?」
「い、いや。なんとなく、と言いますか……」
なんともだらしない言い訳めいたセリフを口に出すと、純美子は飛び跳ねるように振り返った。
「古ノ森君は悪くないでしょっ!? なんでもないのに謝らないのっ!」
「理不尽」
「うるさいうるさいうるさいーっ! いいから黙ってて! もうっ!!」
オレンジ色の夕陽に照らされた純美子の顔は真っ赤に染まっていて、やっぱりかわいかった。最後にひとつ、とばかりに盛大に鼻を鳴らして溜息を吐き出すと、純美子はようやく口を開く。
「あ、あたしが、あたし自身に対して怒ってるのっ! それだけ! それだけなんだからっ!」
「そ、そっか。了解」
勢いに呑まれて僕があいづちを打った途端、なぜだか純美子はくつくつと笑い始めた。
「ふふふ……変なの。なんにも気づいてないくせに。了解! だって。うふふふふ――」
「?」
ますます訳がわからないけれど、なんだかほんのちょっぴり機嫌が直ったようでよかった。純美子の住むハー12号棟まではあと少しだけれど、ズレていた歩調が少しずつ揃っていった。
「今日はありがとね、古ノ森君。あたしが無理に誘っちゃったから」
「あ、いや! いいって! 僕だって誘われて嬉しかったし」
「………………嬉しかった、の?」
「え――?」
足を止めた純美子を振り返る。
わずかに首を傾げて問いかけるように、純美子は僕を見つめていた。
「今、嬉しかった、って言ったの?」
「あ……うん」
まずい――咲都子の病気が伝染ったか?
すごくドキドキして、苦しくって――。
だからかもしれない。
刻々と色を変えていく夕焼けに照らされた純美子の姿があまりにも眩しすぎて、気づいた時にはすでに、僕は今の気持ちを素直に言葉に出してしまっていた。
「い、今だってさ、一緒にいると嬉しいし楽しい」
純美子は笑う。
そしてスカートの裾をひるがえして、その場でくるりと踊るように回った。
「実は、あたしもなの! ……ねえ、知らなかったでしょ? じゃあ、また学校でね!」
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