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第125話 恋は戦争(4) at 1995/7/16
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「よかったら、座る?」
「うん。ありがとう」
まだ夏本番には早いけれど、『虹と水の広場』には子どもたちが集まっていて、どっ、と落ちてくる水流に黄色い悲鳴をあげてはしゃいでいた。ああ、もうずぶ濡れだ。それを見守るパパ・ママに混じるように、空いていた木製ベンチを見つけた僕たちは並んで腰を下ろした。
純美子は、はしゃぐ子どもたちの姿を目を細めて眺めている。
僕は純美子の横顔を見つめ、今この瞬間を忘れぬよう目に焼きつけていた。
(スミの――どこが一番好き?)
そうだなぁ――とロコの幻影が発した問いを、今度は拒絶することなく、ふむ、と考える。
頑張り屋で努力家で。
何に対しても一生懸命で。
一度決めたことは、必ずやり遂げる、そんな信念を持った子だ。
(あんたはテニスコーチかなんかか、ってーの! そーゆーんじゃないでしょー? ほら――)
脳内に居座るロコの幻影が、昨日とは違ったセリフを勝手にしゃべりだしたものだから、僕は眉をしかめて身を引き剥がし、それからひとつ咳払いをしてもう一度ゆっくりと言葉を紡ぐ。
かわいい。
純美子が見せる、何気ない日常の仕草、それひとつひとつ、すべてがかわいくて愛しい。
(はン、あっきれた! 結局は『顔』なの? まったくケンタって――!)
そんなこと言ったって、顔はどうしたって外せないだろ。
心がキレイな人なら見た目なんて、とか、キレイごとを言うつもりはないからね。
まず見た目に心奪われ、その上で中身を知っていく過程でもっと好きになったら最高だろ?
(はいはい、そりゃーそーですねー! もうっ! あとは勝手に……うまくやんなさいよ?)
芝居がかった仕草で肩をすくめてみせたロコの幻影は、最後にいつもお決まりの、困ったように眉根を寄せた笑顔をにかっと浮かべると、すうっ、と闇の奥へと消えていった。徐々にフォーカスが戻り、現実世界にピントが合いはじめる。
「ん? どうしたの、ケンタ君?」
ちょうどそのタイミングで純美子が振り返り、僕を見た。僕はこたえる。
「うん。かわいいな、って思ってて」
「だよねー。子どもって無邪気だなー。帰ったらママは大変だー」
「えっと……そうじゃなくって。スミちゃんのこと」
「………………え? え? ……や、だ」
純美子はかぶっていたストローハットのつばの端っこをつまんで、ぐい、と引き下げると、真っ赤になった顔を隠してしまおうとする。
でも、熱を帯びて潤んだ瞳とピンク色になった鼻の頭までは隠し切れなかった。カラダを丸め、もじもじと座ったまま両膝をすりあわせている。
「な――なんで、なんで突然そんなこと、言うの……?」
「スミちゃんに、教えたかったんだ。君が好きだ、って」
「……っ!?」
びくり、と純美子のカラダが震える。
そして、囁くような声が、掠れたような声が聴こえた。
「うれしい……とっても……」
ヴーッ。ヴーッ。ヴーッ。
その時突如、胸ポケットの中で、スマホが震え出す。
「でも………………ごめん……なさい………………。ケンタ君とは……付き合えません……」
「うん。ありがとう」
まだ夏本番には早いけれど、『虹と水の広場』には子どもたちが集まっていて、どっ、と落ちてくる水流に黄色い悲鳴をあげてはしゃいでいた。ああ、もうずぶ濡れだ。それを見守るパパ・ママに混じるように、空いていた木製ベンチを見つけた僕たちは並んで腰を下ろした。
純美子は、はしゃぐ子どもたちの姿を目を細めて眺めている。
僕は純美子の横顔を見つめ、今この瞬間を忘れぬよう目に焼きつけていた。
(スミの――どこが一番好き?)
そうだなぁ――とロコの幻影が発した問いを、今度は拒絶することなく、ふむ、と考える。
頑張り屋で努力家で。
何に対しても一生懸命で。
一度決めたことは、必ずやり遂げる、そんな信念を持った子だ。
(あんたはテニスコーチかなんかか、ってーの! そーゆーんじゃないでしょー? ほら――)
脳内に居座るロコの幻影が、昨日とは違ったセリフを勝手にしゃべりだしたものだから、僕は眉をしかめて身を引き剥がし、それからひとつ咳払いをしてもう一度ゆっくりと言葉を紡ぐ。
かわいい。
純美子が見せる、何気ない日常の仕草、それひとつひとつ、すべてがかわいくて愛しい。
(はン、あっきれた! 結局は『顔』なの? まったくケンタって――!)
そんなこと言ったって、顔はどうしたって外せないだろ。
心がキレイな人なら見た目なんて、とか、キレイごとを言うつもりはないからね。
まず見た目に心奪われ、その上で中身を知っていく過程でもっと好きになったら最高だろ?
(はいはい、そりゃーそーですねー! もうっ! あとは勝手に……うまくやんなさいよ?)
芝居がかった仕草で肩をすくめてみせたロコの幻影は、最後にいつもお決まりの、困ったように眉根を寄せた笑顔をにかっと浮かべると、すうっ、と闇の奥へと消えていった。徐々にフォーカスが戻り、現実世界にピントが合いはじめる。
「ん? どうしたの、ケンタ君?」
ちょうどそのタイミングで純美子が振り返り、僕を見た。僕はこたえる。
「うん。かわいいな、って思ってて」
「だよねー。子どもって無邪気だなー。帰ったらママは大変だー」
「えっと……そうじゃなくって。スミちゃんのこと」
「………………え? え? ……や、だ」
純美子はかぶっていたストローハットのつばの端っこをつまんで、ぐい、と引き下げると、真っ赤になった顔を隠してしまおうとする。
でも、熱を帯びて潤んだ瞳とピンク色になった鼻の頭までは隠し切れなかった。カラダを丸め、もじもじと座ったまま両膝をすりあわせている。
「な――なんで、なんで突然そんなこと、言うの……?」
「スミちゃんに、教えたかったんだ。君が好きだ、って」
「……っ!?」
びくり、と純美子のカラダが震える。
そして、囁くような声が、掠れたような声が聴こえた。
「うれしい……とっても……」
ヴーッ。ヴーッ。ヴーッ。
その時突如、胸ポケットの中で、スマホが震え出す。
「でも………………ごめん……なさい………………。ケンタ君とは……付き合えません……」
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