137 / 539
第136話 『電算論理研究部』西へ at 1995/7/27
しおりを挟む
「これで全員揃ったね? よし、じゃあ佐倉君、切符をみんなに配ってくれる?」
我ら『電算論理研究部』は、今日から三泊四日のスケジュールで夏期合宿へと出発する。
いささか急なスケジュールだったので、日程の調整が可能か心配だったものの、案外とスムーズに、また、早急に決まってくれてホッとした。時間もなかったので旅のしおりはシンプルな物に留めた。かえってその味気無さが、それぞれの両親向けの説得材料になったようだ。
「ウチの親に話したらさー。『こっちは仕事だから、むしろ助かる』って言われちゃったわよ」
「あははは……。でも、ウチも似たようなものかな? サトちゃんとツッキーのところは?」
「ノハラさんとことほぼ同じ。弟も田舎のばあちゃんちにホームステイ中だからねー」
「あ……あの……あ、あたしの……とこ……は……」
「こーら。慌てないの。この三人の前では、リラックスして、ゆっくりでいーんだから。ね?」
まだ人前だと緊張するクセが抜けない水無月さんだったけれど、三人の笑顔を見て思い出す。
「ふーっ……。あ、あのですね、ウチは……楽しんできなさい、って。パパが……喜んでて」
「いーじゃんいーじゃん。ツッキーパパかー、一回会ってみたいなー?」
「こ、この前……ロコちゃんの話してたら……パパも言ってました……お礼、言いたいって」
「お礼なんていーのに」
目に見えて、むすり、と顔をしかめ迷惑そうな表情を浮かべるロコを見て、みなが、くすり、と笑い出す。もう、典型的かつ正統派なツンデレっ子なものだからニヤニヤが止まらないのだ。
「ま、ここでずっと話しててもいいんだけどね。旅は長いんだから、まずは出発といこうよ!」
僕の号令を合図に、部員たちは旅のしおりと貰った切符を手に移動を開始した。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
まずは、事前に立てたプランどおり電車での移動だ――小田急線『町田』駅から急行に乗って『新松田』駅へ、そこからJR御殿場線に乗り換えて『御殿場』駅まで順調に進んで行く。
そして、そこからさらに富士急行バスに乗り換えると『山中湖村役場』停留所まで曲がりくねった山道をゆるゆると揺られて進んで行った。もう見上げれば、富士山は目と鼻の先だ。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「ようやく到着、っと。どう? みんな大丈夫かな? 降り損ねてる呑気な奴はいないよね?」
バスを降りた僕らは車内で仲良くなったおばあちゃんに手を振ると、澄んだ空気を胸いっぱい吸い込み、遠くそびえ立つ富士山の雄大な姿と鏡のように凪いだ山中湖の美しさを味わった。
ここまで、実に二時間半ほどの長い長い道のりだった。
もっと楽で、早いルートもあるのだけれど、これは僕らで考えた水無月さん対策だ。見た目こそ変わったとはいえ、水無月さんはカラダが弱く体力も平均よりかなり低めである。また精神面においても、がやがやした人混みは苦手で、混雑した電車やせわしない乗り換えは得意じゃないらしい。なので、あえてのんびりと、スローペースで移動することにしたのだった。
「ええと……おーい、ハカセ? もうここから、そのコテージってのは近いのかい?」
「ええ。こちらです。みなさんがすぐ動けそうであれば、ご案内しましょう」
おのおののにこやかな顔がうなずいた。
疲れはあるが、楽しみの方が優っているらしい。
それにしても、三泊四日ともなると荷物も多くなるものだ――特に女の子連中は。
僕ら男子四人は、大きめのボストンバッグか肩に背負えるバックパックという『よくある恰好』をしていたものの、女の子たちの方はというと海外旅行にでも出かけるかのようなスーツケースをトラベルキャリーに乗せてゴロゴロと引っ張っている。大袈裟すぎやしないか、と苦笑が浮かんでくる。
「ここから林の中へ入っていきます。もし、何か必要なものがあればここでお求めください」
「じゃあ、飲み物あった方がいいよね、きっと」
手早くコンビニで買い物を済ませて湖畔沿いの舗装路から離れ、カラマツ林の中へと砂利道を進む。キャリーの扱いに手こずる女子部員の荷物を分担して運びつつ、僕らは奥へ奥へと進んで行く。
我ら『電算論理研究部』は、今日から三泊四日のスケジュールで夏期合宿へと出発する。
いささか急なスケジュールだったので、日程の調整が可能か心配だったものの、案外とスムーズに、また、早急に決まってくれてホッとした。時間もなかったので旅のしおりはシンプルな物に留めた。かえってその味気無さが、それぞれの両親向けの説得材料になったようだ。
「ウチの親に話したらさー。『こっちは仕事だから、むしろ助かる』って言われちゃったわよ」
「あははは……。でも、ウチも似たようなものかな? サトちゃんとツッキーのところは?」
「ノハラさんとことほぼ同じ。弟も田舎のばあちゃんちにホームステイ中だからねー」
「あ……あの……あ、あたしの……とこ……は……」
「こーら。慌てないの。この三人の前では、リラックスして、ゆっくりでいーんだから。ね?」
まだ人前だと緊張するクセが抜けない水無月さんだったけれど、三人の笑顔を見て思い出す。
「ふーっ……。あ、あのですね、ウチは……楽しんできなさい、って。パパが……喜んでて」
「いーじゃんいーじゃん。ツッキーパパかー、一回会ってみたいなー?」
「こ、この前……ロコちゃんの話してたら……パパも言ってました……お礼、言いたいって」
「お礼なんていーのに」
目に見えて、むすり、と顔をしかめ迷惑そうな表情を浮かべるロコを見て、みなが、くすり、と笑い出す。もう、典型的かつ正統派なツンデレっ子なものだからニヤニヤが止まらないのだ。
「ま、ここでずっと話しててもいいんだけどね。旅は長いんだから、まずは出発といこうよ!」
僕の号令を合図に、部員たちは旅のしおりと貰った切符を手に移動を開始した。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
まずは、事前に立てたプランどおり電車での移動だ――小田急線『町田』駅から急行に乗って『新松田』駅へ、そこからJR御殿場線に乗り換えて『御殿場』駅まで順調に進んで行く。
そして、そこからさらに富士急行バスに乗り換えると『山中湖村役場』停留所まで曲がりくねった山道をゆるゆると揺られて進んで行った。もう見上げれば、富士山は目と鼻の先だ。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「ようやく到着、っと。どう? みんな大丈夫かな? 降り損ねてる呑気な奴はいないよね?」
バスを降りた僕らは車内で仲良くなったおばあちゃんに手を振ると、澄んだ空気を胸いっぱい吸い込み、遠くそびえ立つ富士山の雄大な姿と鏡のように凪いだ山中湖の美しさを味わった。
ここまで、実に二時間半ほどの長い長い道のりだった。
もっと楽で、早いルートもあるのだけれど、これは僕らで考えた水無月さん対策だ。見た目こそ変わったとはいえ、水無月さんはカラダが弱く体力も平均よりかなり低めである。また精神面においても、がやがやした人混みは苦手で、混雑した電車やせわしない乗り換えは得意じゃないらしい。なので、あえてのんびりと、スローペースで移動することにしたのだった。
「ええと……おーい、ハカセ? もうここから、そのコテージってのは近いのかい?」
「ええ。こちらです。みなさんがすぐ動けそうであれば、ご案内しましょう」
おのおののにこやかな顔がうなずいた。
疲れはあるが、楽しみの方が優っているらしい。
それにしても、三泊四日ともなると荷物も多くなるものだ――特に女の子連中は。
僕ら男子四人は、大きめのボストンバッグか肩に背負えるバックパックという『よくある恰好』をしていたものの、女の子たちの方はというと海外旅行にでも出かけるかのようなスーツケースをトラベルキャリーに乗せてゴロゴロと引っ張っている。大袈裟すぎやしないか、と苦笑が浮かんでくる。
「ここから林の中へ入っていきます。もし、何か必要なものがあればここでお求めください」
「じゃあ、飲み物あった方がいいよね、きっと」
手早くコンビニで買い物を済ませて湖畔沿いの舗装路から離れ、カラマツ林の中へと砂利道を進む。キャリーの扱いに手こずる女子部員の荷物を分担して運びつつ、僕らは奥へ奥へと進んで行く。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】年収三百万円台のアラサー社畜と総資産三億円以上の仮想通貨「億り人」JKが湾岸タワーマンションで同棲したら
瀬々良木 清
ライト文芸
主人公・宮本剛は、都内で働くごく普通の営業系サラリーマン。いわゆる社畜。
タワーマンションの聖地・豊洲にあるオフィスへ通勤しながらも、自分の給料では絶対に買えない高級マンションたちを見上げながら、夢のない毎日を送っていた。
しかしある日、会社の近所で苦しそうにうずくまる女子高生・常磐理瀬と出会う。理瀬は女子高生ながら仮想通貨への投資で『億り人』となった天才少女だった。
剛の何百倍もの資産を持ち、しかし心はまだ未完成な女子高生である理瀬と、日に日に心が枯れてゆくと感じるアラサー社畜剛が織りなす、ちぐはぐなラブコメディ。
クラスメイトの王子様系女子をナンパから助けたら。
桜庭かなめ
恋愛
高校2年生の白石洋平のクラスには、藤原千弦という女子生徒がいる。千弦は美人でスタイルが良く、凛々しく落ち着いた雰囲気もあるため「王子様」と言われて人気が高い。千弦とは教室で挨拶したり、バイト先で接客したりする程度の関わりだった。
とある日の放課後。バイトから帰る洋平は、駅前で男2人にナンパされている千弦を見つける。普段は落ち着いている千弦が脚を震わせていることに気付き、洋平は千弦をナンパから助けた。そのときに洋平に見せた笑顔は普段みんなに見せる美しいものではなく、とても可愛らしいものだった。
ナンパから助けたことをきっかけに、洋平は千弦との関わりが増えていく。
お礼にと放課後にアイスを食べたり、昼休みに一緒にお昼ご飯を食べたり、お互いの家に遊びに行ったり。クラスメイトの王子様系女子との温かくて甘い青春ラブコメディ!
※特別編4が完結しました!(2026.2.22)
※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。
※お気に入り登録、いいね、感想などお待ちしております。
お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?
すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。
お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」
その母は・・迎えにくることは無かった。
代わりに迎えに来た『父』と『兄』。
私の引き取り先は『本当の家』だった。
お父さん「鈴の家だよ?」
鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」
新しい家で始まる生活。
でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。
鈴「うぁ・・・・。」
兄「鈴!?」
倒れることが多くなっていく日々・・・。
そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。
『もう・・妹にみれない・・・。』
『お兄ちゃん・・・。』
「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」
「ーーーーっ!」
※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。
※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。
※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)
『専属メイド全員が重すぎる愛で迫ってくる!~大学生の僕、11人?の美女に24時間甘やかされ尽くす生活~』
まさき
青春
僕は、ちょっと普通じゃない日常を送ることになった――それは、専属メイドが全員僕のことを溺愛してくれる暮らしだ。
朝は髪を整えてくれるリナ、朝食で笑顔を見せてくれるミユ、どの瞬間も全力で僕を甘やかす。掃除、料理、悩み相談まで、僕のためだけに動くメイドたち。
「ご主人様の笑顔が見たいんです」
その一言で、僕の毎日はちょっとドキドキ、ちょっと幸せ。
全員が僕を独占したいと競い合う日常の中、僕はどうやってこの溺愛地獄(?)を生き抜けばいいのか――!?
甘々、至れり尽くせりの日常ラブコメ、開幕。
「作品への感想代わりの『いいね❤️』や『エール📣』、心よりお待ちしております。」
「【応援のお願い】『いいね❤️』や『エール📣』をいただけると、作者のモチベーションが爆上がりします!」
「最後までお読みいただきありがとうございます。温かい『いいね❤️』が更新の支えです。」
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる