ラブ×リープ×ループ!

虚仮橋陣屋(こけばしじんや)

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第137話 僕らの『がっしゅく!』一日目(1) at 1995/7/27

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「ねー、ハカセー? そのコテージっての、まだ先なのー?」

「もうすぐ、です。もうすぐ着きますよ、上ノ原さん」


 何度も五十嵐君はそう答えたが、もう結構歩いてきたように思う。まだか、と不安定な足元から顔を上げると――ここからでもそれとわかるほど大きな建物が木々の間から姿を見せた。


「ま、まさか……あれが?」

「ええ。……これでは不足でしたか?」

「不足なんてもんじゃない。その逆! 物凄くデカくて立派なコテージに見えるんだけど……」


 その浮世離れした外観が近づくにつれ、部員たちの足取りは自然とゆっくりと遅くなっていく。誰もが圧倒されてしまっていた。この僕も、いわゆる丸太づくりのログハウスに毛の生えた程度のものをイメージしていたのだが……これは、明らかにそういう範疇内の代物ではない。


「嘘……っ! 超オシャレなんですけど! うわぁああああ! ここ、住みたいー!」

「すごくステキ……! 真っ白な壁がキレイで、窓もすごく大きくて開放感があるね!」

「ふーん。あそこ、テラスになってるの? 天幕が張ってあるから気持ちよさそうねー」

「うぁ……すごい……ですね……! 夢みたい……です!」


 おかげで女の子たちは大喜びなのだが――小心者の僕はというと、ますます『タダで』というわけには、どうやってもいきそうになくなってきたことに冷や汗をかきまくっていた。

 清潔感溢れる白壁にはあちこちに採光窓があり、大胆に斜めにカットされた立方体のような外観は、そこいらのデザイナーズハウスより数段センスがいい。正面には板張りの広いテラスがあって、うたたねどころかBBQバーベキューだってできそうだ。建物のすぐ脇には周囲の風景に溶け込むような生垣があり、その中に何か別の施設が併設されているように感じられる。何だろう。

 コテージの玄関に着く頃には、テンション爆上がりした部員たちがにわか陽キャになっており、ウェーイ! ウェーイ! と無意味なハイタッチを繰り返していた。やめんか馬鹿ども。


「カギは二つもらっておきました。男子用と女子用があった方がいいでしょうから。開けます」


 一歩室内に踏み入れると、天然木の放つ香気にたちまち包まれた。外観からはわからなかったその広さに再び驚かされ、家具や調度品、装飾のセンスの良さに溜息が漏れ出てしまった。


「ベッドルームは二階です。奥の少し広めな方を女子が使ってください。手前は男子です――」


 育ち盛りの元気な子供よろしく、せわしなく蹴り除けるようにして靴を脱いで上がり込んだ部員たちに、リビングの中央に立った五十嵐君がひとり淡々と説明を続けていく。


「季節は夏ですが、もし夜寒い場合にはそこにあるまきストーブを使うことになります。薪のストックは裏手に積んであります。キッチンは広く、冷蔵庫も大きいですが、退室時には廃棄するか持ち帰るかして必ず空の状態にしてください。ガス給湯器がありますのでお湯も使えます。包丁などの調理道具は基本的なものが揃っているはずです。トイレは個室が二つ。あとは――」


 はしゃぐ部員たちの様子を、ちら、とうかがい溜息を吐いてから、五十嵐君はこう締めくくった。


「――お風呂ですが、一階シャワールームを使うか、隣のを使ってください」





 ――しばしの沈黙。





「「「「「「「……はぃいいいいい!?」」」」」」」


 絶叫したきり、開いた口が塞がらなくなってしまった。
 それでも部長の意地で僕は確かめた。


「ハ、ハカセ!? い、今、『天然かけ流し』って言った? 『温泉』って言ったのかい!?」

「加水はしてませんし、溢れた分は循環させず排出していますよ? 加温はしていますが……」

「僕がツッコんでるのはそこじゃ……まぁいいか」


 もうここまでくると頭を掻いて苦笑するよりない。物凄く場違いな、とんでもなく立派な合宿所だけれど、喜んで提供してくれるっていうんだから、思いっきり楽しみまくってやろう。


(まったく。とんでもない特殊能力持ちばっかりだ、ウチの部の連中は。驚かされてばかりだ)

「さあ! 荷物を置いたら、みんなで湖の周りを探検しつつ、夜の買い出しにいくとするか!」


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