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第168話 『電算論理研究部』、奔走す(3) at 1995/8/1
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「方眼工作用紙で視聴覚室の精巧なミニチュアを作って、そこから今回の出し物に必要な装飾や装置を考えるんだって……やっぱり僕らのハカセじゃないと考えつかない発想なんだよなあ」
「で、ですよねっ」
「あ、やっぱり君もそう思う? だよねー」
僕はすぐ隣に立っていたかわいらしい女子がうなずき同意したので、反射的にそう返答した。
……って!
誰っ!?
これまで見たことも会ったこともない超がつくほどの美少女は、僕がぎょっとしてあとずさると、ちょっとおかしそうにくすくすと笑いをこぼした。膝上の白いミニスカートが薄暗い僕らの部室をパッと明るく照らしているようで、暗くてジメジメした所が得意な僕はたじろいだ。
「うふふっ。古ノ森リーダー、僕ですよぅ、佐倉でぇす」
「……へ? 佐倉君? 嘘だろ!?」
改めてその姿を見る。
頭のてっぺんあたりからヘアバンドでまとめられた肩までの栗色の髪の艶やかさに目を奪われ、なにもかもがかわいらしく控えめに配置されたどう考えても女の子な顔に見つめられて慌てて目を反らし、どういう魔法を使ったのかぽよんと膨らんでいる二つの隆起を凝視し――ていたらたちまち隠されてしまったが――腰からお尻にかけての流れるようなS字ラインに魅了され、ミニスカートから伸びる滑らかで健康的なすらりとした足の爪先までをまじまじと観察する僕。当然佐倉君もすぐそれに気づき、両手で素早く隠そうとする。
「こ、困りますよぅ……そんなえっちな目で見つめられたら……」
「み、見てない見てない! というか、ホントに佐倉君なの!?」
「さっきからそう言ってるじゃないですかぁ! それとも……直接確かめて、み・ま・す・?」
――ぴらっ。
余裕のまるでない半泣き顔をしているにもかかわらず、佐倉君はスカートのひらひらした裾をちょこんと摘まんでみせる。自分の意思、というよりは長年のクセのようにも見える仕草だ。
「じょ、冗談ですよぅ……。でも、僕、姉さんたちに仕込まれたメイクと衣装合わせのテクニックを自分のものにしなくっちゃいけなくて……。それで、ちょっとやってみたんですけど」
「そ、そういうこと、なんだ。あははは……。ちょっとびっくりしたよ」
内心、ちょっとどころではないくらい動揺していた僕だが、それを隠し通すことに成功した。一方の佐倉君は急に素に戻ったのか、とても、いや、かなり恥ずかしそうにもじもじしている。
「の、野方さんもいるから、僕の助けなんていらない気もするんですけどぉ……お願い、って」
「いやいやいや! たぶん、佐倉君のチカラが必要になると思う! いやそのはずだから!」
みんなは当然知らないが、いくら『未来』の人気コスプレイヤー・咲都子とはいえ、得意なのはあくまで男装なのだ。これほどまでに女の子らしいメイクや衣装は佐倉君にしかできない。
などと感心していると、当の本人である咲都子も僕の隣ですっかり感心した顔をしていた。まだ出かけてなかったのか。
「うーむ……。悔しいけれど、やっぱりかえでちゃんには敵う気がしないわー」
「サトチン、どっちかっていうとイケメンだしねー。ところで……触ってもいい? ぐふぐふ」
「って……そぅいっ! ……さーって! あたしとアンタは買い出し行くわよ! 中町商店街にいい生地屋さんがあるんだから。そうそう、あとで衣装作りの相談させてね、かえでちゃん」
「ぐ、ぐふぅ……鳩尾は……。せめて……せめて匂いだけでもぉおおおおお!」
さすがは夫婦ドツキ漫才の咲都子と渋田である。一切手加減のないボディーブローを叩きこまれグロッキー状態の渋田は、必死に手を伸ばしたが、咲都子に強引に引き摺られていく。
「あいつ……あんな一撃喰らって、よくあんな悪あがきできるな?」
「執念、なんですかね……。普通の人なら、即気絶しそうですけど」
僕と佐倉君は、妙に感心しつつ、次第に遠く消えていく渋田の叫び声を聴きながら言った。
「さーて、みんなの気合いに負けないように、僕も早速はじめるとするかなー?」
「まずは、肝心なシナリオ作り、ってことですよね!」
「うん。それがないとはじまらないからね。みんなが、あっ、というものにしてみせるよ!」
僕は佐倉君の声援を受けつつ、原稿用紙を置いたちゃぶ台の前に正座した。
そして筆を執る。
タイトルは――電算論理研究部プレゼンツ『電脳空間からの脱出』だ。
「で、ですよねっ」
「あ、やっぱり君もそう思う? だよねー」
僕はすぐ隣に立っていたかわいらしい女子がうなずき同意したので、反射的にそう返答した。
……って!
誰っ!?
これまで見たことも会ったこともない超がつくほどの美少女は、僕がぎょっとしてあとずさると、ちょっとおかしそうにくすくすと笑いをこぼした。膝上の白いミニスカートが薄暗い僕らの部室をパッと明るく照らしているようで、暗くてジメジメした所が得意な僕はたじろいだ。
「うふふっ。古ノ森リーダー、僕ですよぅ、佐倉でぇす」
「……へ? 佐倉君? 嘘だろ!?」
改めてその姿を見る。
頭のてっぺんあたりからヘアバンドでまとめられた肩までの栗色の髪の艶やかさに目を奪われ、なにもかもがかわいらしく控えめに配置されたどう考えても女の子な顔に見つめられて慌てて目を反らし、どういう魔法を使ったのかぽよんと膨らんでいる二つの隆起を凝視し――ていたらたちまち隠されてしまったが――腰からお尻にかけての流れるようなS字ラインに魅了され、ミニスカートから伸びる滑らかで健康的なすらりとした足の爪先までをまじまじと観察する僕。当然佐倉君もすぐそれに気づき、両手で素早く隠そうとする。
「こ、困りますよぅ……そんなえっちな目で見つめられたら……」
「み、見てない見てない! というか、ホントに佐倉君なの!?」
「さっきからそう言ってるじゃないですかぁ! それとも……直接確かめて、み・ま・す・?」
――ぴらっ。
余裕のまるでない半泣き顔をしているにもかかわらず、佐倉君はスカートのひらひらした裾をちょこんと摘まんでみせる。自分の意思、というよりは長年のクセのようにも見える仕草だ。
「じょ、冗談ですよぅ……。でも、僕、姉さんたちに仕込まれたメイクと衣装合わせのテクニックを自分のものにしなくっちゃいけなくて……。それで、ちょっとやってみたんですけど」
「そ、そういうこと、なんだ。あははは……。ちょっとびっくりしたよ」
内心、ちょっとどころではないくらい動揺していた僕だが、それを隠し通すことに成功した。一方の佐倉君は急に素に戻ったのか、とても、いや、かなり恥ずかしそうにもじもじしている。
「の、野方さんもいるから、僕の助けなんていらない気もするんですけどぉ……お願い、って」
「いやいやいや! たぶん、佐倉君のチカラが必要になると思う! いやそのはずだから!」
みんなは当然知らないが、いくら『未来』の人気コスプレイヤー・咲都子とはいえ、得意なのはあくまで男装なのだ。これほどまでに女の子らしいメイクや衣装は佐倉君にしかできない。
などと感心していると、当の本人である咲都子も僕の隣ですっかり感心した顔をしていた。まだ出かけてなかったのか。
「うーむ……。悔しいけれど、やっぱりかえでちゃんには敵う気がしないわー」
「サトチン、どっちかっていうとイケメンだしねー。ところで……触ってもいい? ぐふぐふ」
「って……そぅいっ! ……さーって! あたしとアンタは買い出し行くわよ! 中町商店街にいい生地屋さんがあるんだから。そうそう、あとで衣装作りの相談させてね、かえでちゃん」
「ぐ、ぐふぅ……鳩尾は……。せめて……せめて匂いだけでもぉおおおおお!」
さすがは夫婦ドツキ漫才の咲都子と渋田である。一切手加減のないボディーブローを叩きこまれグロッキー状態の渋田は、必死に手を伸ばしたが、咲都子に強引に引き摺られていく。
「あいつ……あんな一撃喰らって、よくあんな悪あがきできるな?」
「執念、なんですかね……。普通の人なら、即気絶しそうですけど」
僕と佐倉君は、妙に感心しつつ、次第に遠く消えていく渋田の叫び声を聴きながら言った。
「さーて、みんなの気合いに負けないように、僕も早速はじめるとするかなー?」
「まずは、肝心なシナリオ作り、ってことですよね!」
「うん。それがないとはじまらないからね。みんなが、あっ、というものにしてみせるよ!」
僕は佐倉君の声援を受けつつ、原稿用紙を置いたちゃぶ台の前に正座した。
そして筆を執る。
タイトルは――電算論理研究部プレゼンツ『電脳空間からの脱出』だ。
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