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第176話 特別顧問は頼みもしないのにやってくる at 1995/8/7
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「あ――あのっ! 古ノ森リーダー! 昨日はすみませんでした!」
「い、いいって、佐倉君! ただ……部活休む時にはひとこと言って欲しい。心配だからさ」
週明けの月曜日。
ひさびさに部室に姿を現した佐倉君は、僕の顔を見るなり透き通った高い声で叫ぶようにそう言うと、深々と頭を下げた。僕は慌てて佐倉君のカラダを支えるようにして押し留める。
「心配……だったんです? 僕のこと……?」
「当たり前だよ! だって大事な仲間だし、それに――」
「それに……なに? なーんか、僕たちにヒミツにしてること、あるんじゃないの、モリケン」
「うわびっくりした! いきなり音もなく背後に立つなって、シブチン!」
振り返ろうものなら、野郎同士のキスという大事故を起こしかねない超ゼロ距離から渋田にじめっと囁かれ、たちまち怖気とともに鳥肌が立った。赤くなった頬を手のひらで押さえているメルヘンポーズの佐倉君ととっさに飛びのいた僕との距離を、じろり、と計ってから続ける。
「センサーがびんびん反応するんだよねー。昨日あたり、ふたりだけのヒミツ、作ってない?」
「ヒ、ヒミツ……? き、気のせいだろ? 大体、僕と佐倉君は、男同士なんだぞ?」
「そ、そうですよぅ! ヒミツだなんてなにも――な、なかった、です!」
佐倉君……肝心なところで一瞬言葉に詰まるのやめて!
あと、なかった、ってのは、ほぼ自白してるのと同じだからね!
ますます疑いが増したジト目で渋田が近づいてくると、怯えた佐倉君は素直に逃げてくれればいいものを、僕を盾にするように、ぴとり、と背中にひっついた。うは、いい匂いするぅ!
その時である。
――バンッ!!
「たのもーぅ! ここが『電算論理研究部』の部室かなー? そうだなー? そうだろう!」
「あ……? え……せ、せりちゃん!? なんでここにいるの!? ここ、中学校だよ!?」
「うぇええええ!? いやいやいや! どうしたんですかなにしてんすか!」
ノックもせずいきなり部室のドアを開け放ったのは、佐倉君ちの長女――せりさんだった。昨日と同じ黒のパンツスーツに白い開襟シャツを合わせたビジネススタイルでびしっと決めている。ただ、この僕はすでに知っていた。せりさんは現在就活中で、まだ身分は大学生なのだ。
「お? 古ノ森リーダー、いい質問だな! もちろん、お前たちの特別顧問をするためだぞ!」
「……頼んだの、モリケン?」
「……いやいや。佐倉君は?」
「そ、そんなわけないじゃないですかっ! もー、ちゃんとした就職先決めて欲しいのになぁ」
僕ら三人が頭を突き合わせてごにょごにょやってる間に、代わりに一歩、ずい、と歩み出たのは、交渉と駆け引きならお手のもの、『電算論理研究部』イチの交渉人こと咲都子だった。
「突然すぎてアレだけど……佐倉君のお姉さんですか? 特別顧問なんて聞いてませんけど?」
「おっと。堅苦しい口調はナシだ。『せり』でいい。あと顧問には自発的に就任したからな!」
「自発的に、って……。せりさん、でしたっけ? なにができるのか知らないですけどね――」
腹立ちまぎれに吐き捨てた咲都子の目の前に、せりさんは一枚の写真を取り出し突き付けた。
「キミ……これ、誰だかわかるかね? ウチのかわいいかわいいおも――弟のかえでちゃんだ」
「………………ほう」
あれは……。
きっと例のアイドル衣装に身を包んだ『葉桜ふぅ』こと佐倉君の写真に違いない。
だが咲都子は、意外にもというか、思惑どおりというか、感心したような吐息を漏らした。
そして、
「特別顧問の件、どうかご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願いいたします! せりコーチ!」
「………………え!?」
その場に正座するなり、僕らがあっけにとられるほど礼儀正しく頭を下げたのである。
「ちょちょちょ! なに言ってんのさ、サトチン!? よろしくお願いします、ってさ――!」
「うっさい、黙ってて! この人の腕はホンモノよ! ぜひその技、伝授していただきたい!」
「い、いいって、佐倉君! ただ……部活休む時にはひとこと言って欲しい。心配だからさ」
週明けの月曜日。
ひさびさに部室に姿を現した佐倉君は、僕の顔を見るなり透き通った高い声で叫ぶようにそう言うと、深々と頭を下げた。僕は慌てて佐倉君のカラダを支えるようにして押し留める。
「心配……だったんです? 僕のこと……?」
「当たり前だよ! だって大事な仲間だし、それに――」
「それに……なに? なーんか、僕たちにヒミツにしてること、あるんじゃないの、モリケン」
「うわびっくりした! いきなり音もなく背後に立つなって、シブチン!」
振り返ろうものなら、野郎同士のキスという大事故を起こしかねない超ゼロ距離から渋田にじめっと囁かれ、たちまち怖気とともに鳥肌が立った。赤くなった頬を手のひらで押さえているメルヘンポーズの佐倉君ととっさに飛びのいた僕との距離を、じろり、と計ってから続ける。
「センサーがびんびん反応するんだよねー。昨日あたり、ふたりだけのヒミツ、作ってない?」
「ヒ、ヒミツ……? き、気のせいだろ? 大体、僕と佐倉君は、男同士なんだぞ?」
「そ、そうですよぅ! ヒミツだなんてなにも――な、なかった、です!」
佐倉君……肝心なところで一瞬言葉に詰まるのやめて!
あと、なかった、ってのは、ほぼ自白してるのと同じだからね!
ますます疑いが増したジト目で渋田が近づいてくると、怯えた佐倉君は素直に逃げてくれればいいものを、僕を盾にするように、ぴとり、と背中にひっついた。うは、いい匂いするぅ!
その時である。
――バンッ!!
「たのもーぅ! ここが『電算論理研究部』の部室かなー? そうだなー? そうだろう!」
「あ……? え……せ、せりちゃん!? なんでここにいるの!? ここ、中学校だよ!?」
「うぇええええ!? いやいやいや! どうしたんですかなにしてんすか!」
ノックもせずいきなり部室のドアを開け放ったのは、佐倉君ちの長女――せりさんだった。昨日と同じ黒のパンツスーツに白い開襟シャツを合わせたビジネススタイルでびしっと決めている。ただ、この僕はすでに知っていた。せりさんは現在就活中で、まだ身分は大学生なのだ。
「お? 古ノ森リーダー、いい質問だな! もちろん、お前たちの特別顧問をするためだぞ!」
「……頼んだの、モリケン?」
「……いやいや。佐倉君は?」
「そ、そんなわけないじゃないですかっ! もー、ちゃんとした就職先決めて欲しいのになぁ」
僕ら三人が頭を突き合わせてごにょごにょやってる間に、代わりに一歩、ずい、と歩み出たのは、交渉と駆け引きならお手のもの、『電算論理研究部』イチの交渉人こと咲都子だった。
「突然すぎてアレだけど……佐倉君のお姉さんですか? 特別顧問なんて聞いてませんけど?」
「おっと。堅苦しい口調はナシだ。『せり』でいい。あと顧問には自発的に就任したからな!」
「自発的に、って……。せりさん、でしたっけ? なにができるのか知らないですけどね――」
腹立ちまぎれに吐き捨てた咲都子の目の前に、せりさんは一枚の写真を取り出し突き付けた。
「キミ……これ、誰だかわかるかね? ウチのかわいいかわいいおも――弟のかえでちゃんだ」
「………………ほう」
あれは……。
きっと例のアイドル衣装に身を包んだ『葉桜ふぅ』こと佐倉君の写真に違いない。
だが咲都子は、意外にもというか、思惑どおりというか、感心したような吐息を漏らした。
そして、
「特別顧問の件、どうかご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願いいたします! せりコーチ!」
「………………え!?」
その場に正座するなり、僕らがあっけにとられるほど礼儀正しく頭を下げたのである。
「ちょちょちょ! なに言ってんのさ、サトチン!? よろしくお願いします、ってさ――!」
「うっさい、黙ってて! この人の腕はホンモノよ! ぜひその技、伝授していただきたい!」
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