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第178話 想定外のシナリオ at 1995/8/11
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「ふぅ……なんとかあらすじっぽいものは書き上がったぞ。あとは、これにもう少し……」
電算論理研究部プレゼンツ「電脳空間からの脱出」と銘打った出し物のシナリオに、おおまかに目鼻がつけられた手ごたえを得たところで、僕はあまり凝ってない肩をぐるぐると回した。
合宿中のミーティングで、純美子がいち早くそれに気づいた、僕らなりの出し物のやり方。
やりたいことをありったけ掻き集めて、無理矢理一箇所に並べて勢揃いさせたところで、渋田が言っていたように、そこいらのゲームセンターの真似事にしかならない。ごちゃごちゃでまとまりがなくって、どこからどう見たらいいのかすらわからない。きっとそうなってしまう。
なので、それらすべてを『一つの物語』としてまとめてやればいい、というのが僕の考えだ。
しかし、そこで君は不思議に思うだろう。
いやいや、待ってよ!
じゃあ、どうして純美子にそのアイディアが通じたんだい? と。
それはもちろん、僕たちの愛のパワーさ! ……と言えたら、どんなにステキだろうか。しかし、現実はそんなに甘くはないし、むしろ僕に対しては少し苦めな上に、やや塩対応である。
真実とは、さほど面白くもなければ、意外でもないところにふと落ちているものだ。なんのことはない、以前の『告白失敗デート』で中央図書館に二人で行った時、僕が純美子に薦めた一冊の小説の中に、今の状況ととても良く似たエピソードが登場していた、だからなのだった。
お手本があるのだから、シナリオを書くなんて造作もないことさ、と高を括っていたのだが。
「はぁ……甘かったなぁ……。考えてみたら僕、物語なんて一度も書いたことないんだった」
そうひとり呟きながら、なんとかカタチになった文章が書かれた紙を目の前にぶら下げる。
「……あ。それ、ケンタ君が書いたシナリオ? 見せてもらっても……いいかな?」
「あー……うん、ま、良いけどさー……って、ス、スミちゃん!?」
あまりに驚いた僕は、振り返りざま、しかめっ面で鼻と上唇で挟みこんでいたシャープペンシルを落としてしまった。まだ時刻は3時。女子テニス部の部活が終わるには早い時間だ。
「え? え? どうしてここに……? まだ部活中のはずじゃあ……?」
「今日は早めに上がらせてもらったの。椿山センセイにも許可をもらってるから大丈夫だよ」
今、この部室には、僕しか――いいや、僕と純美子しかいない。
シブチンと咲都子は昨日までの『特別顧問・せりコーチのヒミツのレッスン』を終えて、二人で買い出しと段ボールの受け取りに出かけてしまっていた。今日はもう戻ってこないはずだ。
佐倉君は午前中だけ来ていたけれど、午後からはひさびさにテニススクールに顔を出して練習する、と早めに帰ってしまった。五十嵐君は、ミニチュアサイズの視聴覚室の模型を完成させたいから、と言って、自宅で作業を続けているはずだし、水無月さんは昨日まで頑張ってチェックと修正作業を進めていたので、今日は大事をとってお休みします、と言っていたような。
「ね? 見せてくれないの……? もしかして……まだ、ダメ?」
ふと、そんなことを考えていたら、余計に僕は、目の前の純美子のことを意識してしまう。
鼻先をくすぐる制汗剤の、みずみずしいシトラスの香り。
少しでも早く、急いで部室へと駆けつけようとして。
でも、汗をかいたあとだから気になってしまって――しゅっ――これでよし、っと。
「い――いや、ダ、ダメじゃないけど……そのう……。まださ――」
「はい! もう取っちゃった! 読んでもいいよね! あ……! わっ!?」
――どさり。
あ、と思った時にはカラダが動いていて、悪戯っ子のように笑ってみせる純美子に奪い取られた紙切れめがけて慌てて飛びついてしまって。
僕は部室の畳の上に、ごろり、と寝転がった純美子を、ほんの少しだけ上空から見下ろしていて。そして――僕らの、目と目が、合って。
「「………………」」
電算論理研究部プレゼンツ「電脳空間からの脱出」と銘打った出し物のシナリオに、おおまかに目鼻がつけられた手ごたえを得たところで、僕はあまり凝ってない肩をぐるぐると回した。
合宿中のミーティングで、純美子がいち早くそれに気づいた、僕らなりの出し物のやり方。
やりたいことをありったけ掻き集めて、無理矢理一箇所に並べて勢揃いさせたところで、渋田が言っていたように、そこいらのゲームセンターの真似事にしかならない。ごちゃごちゃでまとまりがなくって、どこからどう見たらいいのかすらわからない。きっとそうなってしまう。
なので、それらすべてを『一つの物語』としてまとめてやればいい、というのが僕の考えだ。
しかし、そこで君は不思議に思うだろう。
いやいや、待ってよ!
じゃあ、どうして純美子にそのアイディアが通じたんだい? と。
それはもちろん、僕たちの愛のパワーさ! ……と言えたら、どんなにステキだろうか。しかし、現実はそんなに甘くはないし、むしろ僕に対しては少し苦めな上に、やや塩対応である。
真実とは、さほど面白くもなければ、意外でもないところにふと落ちているものだ。なんのことはない、以前の『告白失敗デート』で中央図書館に二人で行った時、僕が純美子に薦めた一冊の小説の中に、今の状況ととても良く似たエピソードが登場していた、だからなのだった。
お手本があるのだから、シナリオを書くなんて造作もないことさ、と高を括っていたのだが。
「はぁ……甘かったなぁ……。考えてみたら僕、物語なんて一度も書いたことないんだった」
そうひとり呟きながら、なんとかカタチになった文章が書かれた紙を目の前にぶら下げる。
「……あ。それ、ケンタ君が書いたシナリオ? 見せてもらっても……いいかな?」
「あー……うん、ま、良いけどさー……って、ス、スミちゃん!?」
あまりに驚いた僕は、振り返りざま、しかめっ面で鼻と上唇で挟みこんでいたシャープペンシルを落としてしまった。まだ時刻は3時。女子テニス部の部活が終わるには早い時間だ。
「え? え? どうしてここに……? まだ部活中のはずじゃあ……?」
「今日は早めに上がらせてもらったの。椿山センセイにも許可をもらってるから大丈夫だよ」
今、この部室には、僕しか――いいや、僕と純美子しかいない。
シブチンと咲都子は昨日までの『特別顧問・せりコーチのヒミツのレッスン』を終えて、二人で買い出しと段ボールの受け取りに出かけてしまっていた。今日はもう戻ってこないはずだ。
佐倉君は午前中だけ来ていたけれど、午後からはひさびさにテニススクールに顔を出して練習する、と早めに帰ってしまった。五十嵐君は、ミニチュアサイズの視聴覚室の模型を完成させたいから、と言って、自宅で作業を続けているはずだし、水無月さんは昨日まで頑張ってチェックと修正作業を進めていたので、今日は大事をとってお休みします、と言っていたような。
「ね? 見せてくれないの……? もしかして……まだ、ダメ?」
ふと、そんなことを考えていたら、余計に僕は、目の前の純美子のことを意識してしまう。
鼻先をくすぐる制汗剤の、みずみずしいシトラスの香り。
少しでも早く、急いで部室へと駆けつけようとして。
でも、汗をかいたあとだから気になってしまって――しゅっ――これでよし、っと。
「い――いや、ダ、ダメじゃないけど……そのう……。まださ――」
「はい! もう取っちゃった! 読んでもいいよね! あ……! わっ!?」
――どさり。
あ、と思った時にはカラダが動いていて、悪戯っ子のように笑ってみせる純美子に奪い取られた紙切れめがけて慌てて飛びついてしまって。
僕は部室の畳の上に、ごろり、と寝転がった純美子を、ほんの少しだけ上空から見下ろしていて。そして――僕らの、目と目が、合って。
「「………………」」
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