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虚仮橋陣屋(こけばしじんや)

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第183話 その13「みんなで夏祭に行こう!(という約束)」 at 1995/8/17

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『団地祭』とは、木曽根団地自治会の主催で毎年開催されている、夏の一大イベントだ。

 祭の会場は、子どもたちからは『中央公園』と呼ばれ親しまれている町田市立木曽根咲山公園で、公園内を一周できる遊歩道には夏祭り定番のありとあらゆる屋台がぎっしりと立ち並ぶ。公園のど真ん中の、普段はやや殺風景な広場にはやぐらが建てられ、夕方からは盆踊りを楽しむ人々で大にぎわいとなる。

 祭のフィナーレを飾るのは、夜八時から数十発も打ち上げられる色とりどりの花火だ。近隣都市で行われる花火大会と比較しても、ここまでの規模のものはなかなかない豪華さなのだった。

 本来なら七月の終わりか八月頭に開催されるものだったが、今年に限っては幾度も荒天と重なり、結局八月の最後の日曜日、二十七日に行われることになっていた。なお、自治会主催なだけに絶対に取り止めにはならない。なぜなら、木曽根・咲山の商店街に軒を連ねる店舗が日頃の感謝を伝える場も兼ねているからであって、おかげでテキ屋抜きの健全な祭としても知られていた。


「実は、僕は今まで一度も、祭に参加したことがないのですよ」

「あ、そ、そうなの……五十嵐君。あ、あたしも……だよ……」


 並んで座っている五十嵐君と水無月さんは思わずそっと顔を見合わせて苦笑している。


「だったら、なおさら参加してもらわないとね! なんたって、すっごーいんだから!」


 すっかり上機嫌になったロコは、すっごーい、の言葉に合わせ花をまくように両手を振った。


「ね? あたしたちと一緒なら絶対楽しいよ! この前の合宿の花火だって盛り上がったし!」

「学校の子たちも来ると思う。せっかくだし、イメチェンしたツッキーをお披露目しようよ!」

「そ、それは……大丈夫なのか?」

「んー? 大丈夫、ってなにが、ケンタ君?」


 純美子はとても不思議そうに、僕の差し挟んだ疑問に小首を傾げてみせた。
 ……僕の考えすぎかもしれない。


「い――いや、ごみごみしたところはニガテかもな、ってさ。早めに空いてる場所取っとくか」

「だねー。ほら、いつもレジャーシート引いて場所取りしてる人とかいるじゃん? あれでさ」

「うんうん。あれ、アリよね。ずっと歩いているのは疲れちゃうし」

「あ! 僕、大きいヤツ持ってますよ! 大会行くときに、お姉ちゃんたちが使ってるんです」


 僕の言葉に、渋田や咲都子、佐倉君までもが一緒になって気持ちを弾ませている中、笑みの形を崩さないようにしながらも、まだもやついたココロを抱えて、僕はひとり考えにふける。


 僕らにとっては、水無月さんはかけがえのない仲間で、大切な友だちだ。
 だが、クラスの連中にとってはどうだろうか。

 彼らの中の水無月さんは、一学期の期末テストの、あの日目にした印象で止まったままのはずなのだ。得体がしれなくて、不気味で近寄りがたくて。病的で、どこか不吉で。そんなネガティブな印象しか持っていないはずだ。吉川や小山田だけじゃない。それはみんな同じだった。


(でも、ツッキーは変わった。こんなにも、楽しそうに笑って――うん、僕の思いすごしだな)


 終業式までの間、僕はクラス中にアピールするように水無月さんとごくごく普通に接してきた。おかげで少しずつだけれど悪い印象は薄れたはずだ。その上での、この変わりようなのだ。


(なにかあったら、僕らで守ってやればいい。……もう悲しい思いはさせないから、ツッキー)


「……なによ? また、なんか考えごとしてんの、ケンタ?」

「な、なんでもないって。ちょっとぼーっとしてただけだよ」

「ふーん……あっそ」


 僕の顔をじろじろと眺めていたロコがいきなり僕の背中を、どん、と押し、ふらつかせた。


「お、おい、馬鹿っ! 押すなって――」

「ひゃん!!」


 僕は転びそうになりながら、目の前の純美子をかばって抱きしめる。たちまち二人とも顔が真っ赤になってしまった。


「こ、こらっ、ロコっ! お前なぁあああ! ふざけるのもいい加減にしろよぉおおおおお!」

「やーい! 熱々カップルカッコ仮ー! いひひー! 捕まえられるもんならやってみなー!」


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