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第182話 え? そうなる!? at 1995/8/17
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誰がどう示し合わせたわけではない。
スケジュールに組み込んでいたわけでもなかった。
「おっそーい!! 遅いぞー、部長と副部長っ! たるんでんじゃないのー?」
けれど、休み明けとなる今日、自然と我らが『電算論理研究部』の全メンバーが、匂いに惹かれるミツバチのように部室に集合していたのだった。むしろ僕と渋田の方が遅刻扱いである。
「はい! これお土産ね! 人数分あるから、ちゃんとみんな一つずつ取ってちょうだい!」
早速ロコが取り出したのは、秋田銘菓の『金萬』だ。毎年おすそ分けをもらっている僕にはすっかりお馴染みの一品である。卵の入ったきめ細かな白あんを、蜂蜜と卵をぜいたくに使って作られたカステラ生地で包んだ、ふっくらと丁寧に焼き上げられた定番のお菓子である。
純美子も咲都子も、五十嵐君や佐倉君も、次々とお土産を取り出してきたものだから、部室のこじんまりとしたちゃぶ台の上は、いろとりどりの美味しそうなお菓子でにぎやかになった。
「な、なんだか申し訳……ないです……。あたし……どこも出かけなかった……から……」
「そっか、ツッキーも里帰りはしなかったんだね。僕とシブチンもだよ」
「あ……。い、いえ……あたしは……」
「うわー! どれから食べよっかなー? サトチンのからにしまーす!」
すっかり恐縮する僕と水無月さんをよそに、一人テンション爆上がりの渋田。見た目どおりの食いしん坊キャラだが、妙に憎めないところがいかにも渋田らしい。
「じゃあ、せっかくだから、お茶、淹れてこよっか?」
「あ、スミ、ナイスアイディア! あたしも手伝う!」
え……?
と思わず顔を見合わせたのは僕と渋田だ。
とりわけ僕にとっては、二人は喧嘩の真っ最中で、よりによってロコから声をかけるなんてまずありえない、と思っていたのだから。少なくとも、渋田と一緒に二人が口論をしていた現場を見たはずの咲都子は動揺するものと思っていたのだが、横目で盗み見ると平然とした顔をしていた。これは……どういうことだ?
(お、おい……! どうなってるんだよ、この状況……!?)
(僕が知るわけないでしょ!? こっちが聞きたいくらいだよ)
渋田とこそこそ囁き合っていると、お茶の準備をしている純美子とロコが二人揃って振り返り、ん? と不思議そうに僕たちを見ていた。そして、ぷっ、と示し合わせたように噴き出す。
「なーんか、こそこそ内緒話してる人たちがいるんだけどー?」
「ホントだ! あたしたちのことみたーい。いやねー。うふふ」
いや。この前までと違ってロコから声をかけてる、どころのハナシじゃない。この二人、こんなに仲良かったっけか? 僕の記憶では、仲は悪くはないもののどこか遠慮があったはずだ。なのに、今目の前にいる純美子とロコは、ふざけて互いをお尻で押し合ったりして笑っている。
まるで狐か狸に化かされた気分で、そのまま二人を眺めていると、
「――!?」
湯のみを並べたお盆を手にして近づいてくる二人の視線が、同時に僕を見た――気がした。
「……」
「……」
な、なんだ……?
なんだか妙に胸騒ぎがする……いや、まさかまさかだ。
こん。
「そういえばさー」
ロコがちゃぶ台に僕の分の湯のみを置いた音で、僕にかけられていた呪縛は解けていた。
「この『電算論理研究部』のメンバーでさ、お祭り……行ってみない? 今度の『団地祭』に」
「ロコちゃんがまた手伝ってくれるから、女子は浴衣だよ? ね? いいでしょ、ケンタ君?」
スケジュールに組み込んでいたわけでもなかった。
「おっそーい!! 遅いぞー、部長と副部長っ! たるんでんじゃないのー?」
けれど、休み明けとなる今日、自然と我らが『電算論理研究部』の全メンバーが、匂いに惹かれるミツバチのように部室に集合していたのだった。むしろ僕と渋田の方が遅刻扱いである。
「はい! これお土産ね! 人数分あるから、ちゃんとみんな一つずつ取ってちょうだい!」
早速ロコが取り出したのは、秋田銘菓の『金萬』だ。毎年おすそ分けをもらっている僕にはすっかりお馴染みの一品である。卵の入ったきめ細かな白あんを、蜂蜜と卵をぜいたくに使って作られたカステラ生地で包んだ、ふっくらと丁寧に焼き上げられた定番のお菓子である。
純美子も咲都子も、五十嵐君や佐倉君も、次々とお土産を取り出してきたものだから、部室のこじんまりとしたちゃぶ台の上は、いろとりどりの美味しそうなお菓子でにぎやかになった。
「な、なんだか申し訳……ないです……。あたし……どこも出かけなかった……から……」
「そっか、ツッキーも里帰りはしなかったんだね。僕とシブチンもだよ」
「あ……。い、いえ……あたしは……」
「うわー! どれから食べよっかなー? サトチンのからにしまーす!」
すっかり恐縮する僕と水無月さんをよそに、一人テンション爆上がりの渋田。見た目どおりの食いしん坊キャラだが、妙に憎めないところがいかにも渋田らしい。
「じゃあ、せっかくだから、お茶、淹れてこよっか?」
「あ、スミ、ナイスアイディア! あたしも手伝う!」
え……?
と思わず顔を見合わせたのは僕と渋田だ。
とりわけ僕にとっては、二人は喧嘩の真っ最中で、よりによってロコから声をかけるなんてまずありえない、と思っていたのだから。少なくとも、渋田と一緒に二人が口論をしていた現場を見たはずの咲都子は動揺するものと思っていたのだが、横目で盗み見ると平然とした顔をしていた。これは……どういうことだ?
(お、おい……! どうなってるんだよ、この状況……!?)
(僕が知るわけないでしょ!? こっちが聞きたいくらいだよ)
渋田とこそこそ囁き合っていると、お茶の準備をしている純美子とロコが二人揃って振り返り、ん? と不思議そうに僕たちを見ていた。そして、ぷっ、と示し合わせたように噴き出す。
「なーんか、こそこそ内緒話してる人たちがいるんだけどー?」
「ホントだ! あたしたちのことみたーい。いやねー。うふふ」
いや。この前までと違ってロコから声をかけてる、どころのハナシじゃない。この二人、こんなに仲良かったっけか? 僕の記憶では、仲は悪くはないもののどこか遠慮があったはずだ。なのに、今目の前にいる純美子とロコは、ふざけて互いをお尻で押し合ったりして笑っている。
まるで狐か狸に化かされた気分で、そのまま二人を眺めていると、
「――!?」
湯のみを並べたお盆を手にして近づいてくる二人の視線が、同時に僕を見た――気がした。
「……」
「……」
な、なんだ……?
なんだか妙に胸騒ぎがする……いや、まさかまさかだ。
こん。
「そういえばさー」
ロコがちゃぶ台に僕の分の湯のみを置いた音で、僕にかけられていた呪縛は解けていた。
「この『電算論理研究部』のメンバーでさ、お祭り……行ってみない? 今度の『団地祭』に」
「ロコちゃんがまた手伝ってくれるから、女子は浴衣だよ? ね? いいでしょ、ケンタ君?」
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