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第185話 インタールードⅣ at 1995/8/19
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ヴーッ。ヴーッ。ヴーッ。
『……おや? 今日は土曜日、部活は休みではなかったのかね、古ノ森健太?』
「ああ、時巫女・セツナか。昨日、荻島センセイに許可をもらったんだ。午前中だけ、ってね」
ほら、君だってその場にいたろ? 知ってるくせに――そう問いたい気持ちを抑え、僕は手を休めることなく動かし続けながら、文机の上に置いたスマホに向けて話しかけた。
『なにもわざわざ……。部の他の連中に頼ればいいのではないか? データ入力、何人分だ?』
「おかげさまで回収率が良くってね。ざっと一三〇〇人分、ってところかな?」
僕は大袈裟に目玉を回しながら、わざと陽気にうそぶいた。なにせ、三学年分きっちりあるのだ。ピークを過ぎたとはいえ、伊達に『消えた第三次ベビーブーム』と呼ばれてはいない。
『……やれやれ』
「呆れないでくれよ。さすがに僕だって、みんなに内緒で、ひとりで全部入力する気はないさ」
『さすがにそこまで阿呆ではない、ということか。それはなによりだ! ククク……』
この『リトライ』の黒幕じゃないことはバレたんだし、そろそろその芝居がかった口調やめにしたら? という皮肉っぽいセリフを飲み下してから、代わりに僕はこう尋ねることにする。
「……なあ? 僕を笑うために電話してきたわけじゃないんだろ、時巫女・セツナ?」
『おっと、失礼。ククク……』
それでもなお響く含み笑いに閉口していると、僕の忍耐力が切れてしまう前に彼女は言った。
『……戯言はこのくらいにして、そろそろ本題に入ろう。お前の興味をひく情報を入手したぞ』
「いやに自信ありげだな? 無駄にハードル上げると転ぶハメになるぞ?」
『はン? それは意趣返しのつもりかね? ……まあ、まずは聴いてみたまえよ、古ノ森健太』
仕方なく口を閉じて待つ。それを肯定の意と受け取った時巫女・セツナはこう言った。
『なに、私も少し実証実験をしてみるかと思ったのだ。それで判明した事実は……意外だった』
「おいおいおい。なにをやったんだ、時巫女・セツナ?」
『あ――あの、だな……か、過去には決して起こりえなかった選択をしてみたのだ』
……ん?
あの、いつも他人を見下したように話すはずの時巫女・セツナの口調がやけにたどたどしい。
「それ……どういう意味だ?」
『え、ええい! うるさいうるさいっ! お、お前が知る必要なぞない! それよりも、だ!』
理由はわからないがすっかり取り乱した彼女が何かを叩く音が聴こえ、セリフはこう続いた。
『現実乖離率を変動させることができるのはどうやらお前だけらしい、それがわかったのだよ』
「え……!?」
思わず僕の手が止まる。慌ててスピーカーフォンにしていたスマホを取り上げて耳に当てた。
「それはおかしいんじゃないのか? だって、君だって『リトライ者』のはずじゃないか!?」
『ま――待て待て待て!』
理解不能な出来事を前に、口調が荒々しくなった僕を時巫女・セツナは急いでたしなめる。
『ならばこの理屈だって理解できるだろう? そのはずだからこそ、私も戸惑っているのだと』
「あ……」
彼女が冷静に事実を告げる声が、僕の頭にのぼった血をすみやかに冷やしてくれていた。
「そう、だよな……ごめん……」
『わ、わかればいい。わかればいいさ――』
時巫女・セツナは最後に僕へ、こう告げた。
『もう私たちには未来を変えることができないらしい。変えることができるのは、お前だけだ』
『……おや? 今日は土曜日、部活は休みではなかったのかね、古ノ森健太?』
「ああ、時巫女・セツナか。昨日、荻島センセイに許可をもらったんだ。午前中だけ、ってね」
ほら、君だってその場にいたろ? 知ってるくせに――そう問いたい気持ちを抑え、僕は手を休めることなく動かし続けながら、文机の上に置いたスマホに向けて話しかけた。
『なにもわざわざ……。部の他の連中に頼ればいいのではないか? データ入力、何人分だ?』
「おかげさまで回収率が良くってね。ざっと一三〇〇人分、ってところかな?」
僕は大袈裟に目玉を回しながら、わざと陽気にうそぶいた。なにせ、三学年分きっちりあるのだ。ピークを過ぎたとはいえ、伊達に『消えた第三次ベビーブーム』と呼ばれてはいない。
『……やれやれ』
「呆れないでくれよ。さすがに僕だって、みんなに内緒で、ひとりで全部入力する気はないさ」
『さすがにそこまで阿呆ではない、ということか。それはなによりだ! ククク……』
この『リトライ』の黒幕じゃないことはバレたんだし、そろそろその芝居がかった口調やめにしたら? という皮肉っぽいセリフを飲み下してから、代わりに僕はこう尋ねることにする。
「……なあ? 僕を笑うために電話してきたわけじゃないんだろ、時巫女・セツナ?」
『おっと、失礼。ククク……』
それでもなお響く含み笑いに閉口していると、僕の忍耐力が切れてしまう前に彼女は言った。
『……戯言はこのくらいにして、そろそろ本題に入ろう。お前の興味をひく情報を入手したぞ』
「いやに自信ありげだな? 無駄にハードル上げると転ぶハメになるぞ?」
『はン? それは意趣返しのつもりかね? ……まあ、まずは聴いてみたまえよ、古ノ森健太』
仕方なく口を閉じて待つ。それを肯定の意と受け取った時巫女・セツナはこう言った。
『なに、私も少し実証実験をしてみるかと思ったのだ。それで判明した事実は……意外だった』
「おいおいおい。なにをやったんだ、時巫女・セツナ?」
『あ――あの、だな……か、過去には決して起こりえなかった選択をしてみたのだ』
……ん?
あの、いつも他人を見下したように話すはずの時巫女・セツナの口調がやけにたどたどしい。
「それ……どういう意味だ?」
『え、ええい! うるさいうるさいっ! お、お前が知る必要なぞない! それよりも、だ!』
理由はわからないがすっかり取り乱した彼女が何かを叩く音が聴こえ、セリフはこう続いた。
『現実乖離率を変動させることができるのはどうやらお前だけらしい、それがわかったのだよ』
「え……!?」
思わず僕の手が止まる。慌ててスピーカーフォンにしていたスマホを取り上げて耳に当てた。
「それはおかしいんじゃないのか? だって、君だって『リトライ者』のはずじゃないか!?」
『ま――待て待て待て!』
理解不能な出来事を前に、口調が荒々しくなった僕を時巫女・セツナは急いでたしなめる。
『ならばこの理屈だって理解できるだろう? そのはずだからこそ、私も戸惑っているのだと』
「あ……」
彼女が冷静に事実を告げる声が、僕の頭にのぼった血をすみやかに冷やしてくれていた。
「そう、だよな……ごめん……」
『わ、わかればいい。わかればいいさ――』
時巫女・セツナは最後に僕へ、こう告げた。
『もう私たちには未来を変えることができないらしい。変えることができるのは、お前だけだ』
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