ラブ×リープ×ループ!

虚仮橋陣屋(こけばしじんや)

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第252話 オンリー・ユー at 1995/10/2

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 十月に入った。
 今日からは冬服、衣替えだ。


「おはよう、スミちゃん!」

「あら? おはよう、ケンタ君。……いいの、あたしなんかで?」


 また新しい週がはじまった――のだが。
 どうも朝から機嫌の悪い純美子さんである。


「な! なにを言ってるのさ、スミちゃん! き、君が良いに決まってるじゃん……」

「ふ、ふーん……あっそ」


 少し奮発めの言葉を控えめな声量で――さすがに照れるのだ――返すと、純美子のセミロングの栗色の髪から覗く小さくで形の良い耳たぶはたちまち朱に染まった。しかし、もう意地になっているのか、まともに僕の方を見てくれようともせず、せわしない手つきで通学鞄を置く。


 なんとなくぎこちないその訳は、土曜、日曜の二日間、僕らは来る運動会での『対決』に向けて飽くることなく猛特訓を重ねていたからだ。

 学校の体育館が使えず、五十嵐君考案の例の跳び箱を使った戦闘シミュレーションこそできなかったものの、団地内の小さな公園のブランコを占領して――さすがに小さな子がぐずりはじめたら極力譲るようにしていたけれど――僕とロコが横向きに踏み台をまたいで向かい合って座り、今度は左右に揺らしながらより動きのある中でのハチマキ強奪のテクニックを磨いた。


 が――。
 そうなると、必然僕とロコばかりいちゃいちゃしているような雰囲気になって。


「あら? ロコちゃん来たみたいよ? 行ってこなくていいのー?」

「い、意地悪言わないでよ、スミちゃん……」


 さすがにこうまでツンツンされっぱなしだと、僕だって気が滅入る。


「だ、大体さ、前にこんなこと言ってなかったっけ? 『ロコちゃんだったらいいの』って?」

「つーんだ。浮気を認めたわけじゃありませーん」

「う、浮気じゃないってば……。ああ、もう!」


 どうすればいいのかわからず、さりとて居ても立っても居られなくなった僕は、すっと立ち上がると、わずかに身構えた純美子の背後に回り込んでその首筋に息がかかるほど顔を寄せた。


『僕が大好きなのはスミちゃんだけだ。一回で足りなかったら。毎日でも、毎時間でも言うよ』

「ひ――ひゃん!?」


 唐突に純美子が椅子から飛び上がるようにして大きな悲鳴を上げたので、授業前のまばらな教室内の生徒の視線が一点に殺到した。その時すでに僕は、純美子から十分な距離を置いていたので、みんな不思議そうな視線を取り残された純美子に向けただけだ。

 なんだ、と小首を傾げつつ集まった視線が元の場所へ戻ると、純美子はむくれて振り返った。


「むぅーっ!!」

「お、怒んないでよ! ……でも、これが僕の、ホントの気持ちだから。嘘じゃないから!」

「もう……わかったよぅ……。ずるいんだから……」

「ずるい、って……。こんなセリフ、はじめて言ったんだ。この顔、見たらわかるでしょうが」


 さすがに自分で自分の顔は見れないけれど、これだけ熱を帯びていたら嫌でもわかる。たぶん、どちらも同じ見事な薔薇色に染まった顔を見ているのだろう。ぷっ、と噴き出した。


「うふふふ。でも……嬉しい、な……」

「そ、そりゃあ、僕だって……ね……」

「あ………………あのう………………」

「ひゃん!」「うはっ!」


 そこでいかにも気まずそうに、なにも悪くないのに済まなそうな声を掛けてきたのは水無月さんである。きっと一部始終を目撃してしまいながらも、一体どのタイミングで声を掛けたらよいものやら、カノジョなりに悩んでいたのだろう。ぺこり、と頭を下げて言う。


「た……大変失礼しました! お……おはようございます! で……では続けてくださいっ!」

「できないよぅ!」「できるかっ!」


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