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第283話 白より蒼く透明な at 1995/10/14
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「なんかさ……ちょっぴりかわいかったね、コトセ」
「は、はぁ!? あの天邪鬼の、ひねくれへそ曲がり娘がか!?」
「そりゃ本家のツッキーには敵わないわよ? でもね――?」
そこで言葉を区切ると、ロコはなにかを思い出してくすくすと忍び笑いを漏らす。
「ほら、イキナリぽろぽろ泣き出しちゃったりしてさ? ……でも、そうだよね。今まで誰にもヒミツを打ち明けることすらできずに、たったひとりで戦い続けてきたんだもん。運命と」
「確かに……そうだよな」
僕は白々と照らす更待ち月を見上げつつ、ロコの言葉がココロに染み入るのを感じた。だいぶ帰る時間が遅くなってしまったが、今夜の出来事にその価値は十分あったと言えるだろう。僕とロコは、車すら通らず誰ひとりいない、ただ青白く塗り潰された世界を並んで歩いていく。
「僕なんかについ弱さを見せちゃうほど、ほんのちょっぴりでも安心できたのなら良かった」
「まーた、そういう意地悪なこと言ってー! もー、知らないわよ?」
「あははは。冗談だって、冗談」
そういえば、今夜はロコたちと天体観測をするからって言って家を抜け出してきたんだっけ。その口から出まかせの言い訳がまるで真実だったかのように、見上げればキレイな空だ。夏特有のかすみがかった色は、見上げる空にはもうない。透明な空気が、星々を強く輝かせていた。
「……なーに? 空ばっかり見上げちゃってさ?」
「自分のこの先の運命を知ってる、ってどういう気持ちなんだろうな……と思ってさ」
「あはは! ばっかみたい!」
いくらなんでも、それはあんまりなセリフだと、かなりムッとしてロコを見る。
だが、ロコは平然と指さしてきた。僕を。
「今のあんただって同じことじゃん、ケンタ? あたしだってそう。この先の未来を知ってる」
「け、けど、ツッキーの辿る未来とは違うよ。少なくとも、まだ生きてるんだし」
「あんな未来……死んでいるのと、そう大きく変わらないでしょ?」
そう――なのかもしれない。
「あのさ……もしかして、そうじゃない、今と違う幸せな未来に変えるのが、ロコの『リトライ』の目的だったりするのか?」
「かもね」
「なんだよ、それ。『かもね』って」
「誰しも触れられたくない過去ってのはあるものよ、って前にも言ったでしょ?」
「過去じゃなくて未来なんだよなぁ」
どこがおかしかったのか、隣を歩くロコは、ずっとくすくす笑い続けている。さっぱりツボがわからない。次第に僕が馬鹿にされているように感じてきて、むっつりと前を向いた。
あの日、ひさしぶりに同窓会の会場で出会ったロコは、昔とは別人かと見間違うくらいの変貌を遂げていた。見た目ももちろんだったが、内面も、あれほど自信に満ちていきいきとしていたのが、何をするにもひどく怯え、打ちひしがれ、この先も続く未来をあきらめていた。
しかし、ある意味において、そんなロコの姿に自分と同類の匂いを感じ取って、場違いながらも少し嬉しく思ってしまったのは事実だった。また昔のように隣にいてくれる、そう思った。
だが、この『リトライ』の間のロコは、昔どおり輝いていた。
それは純粋に嬉しいことだったが、同時に物悲しくもあった。
かつての『一周目』同様、僕はロコとの間に埋められないへだたりがあるように感じてしまうからだ。学年トップの人気を誇る美少女、それがロコ。僕たち底辺陰キャとは違って当然だ。
「ま……それが正解かどうかは別にしても、ロコは幸せな未来を手にする権利があると思う」
「………………もちろん、そのつもりよ?」
妙な間があったが、僕はすぐに忘れてしまった。
すべてが白く、そして蒼い世界の中で、ロコは両手を広げてにかっと笑いながら僕に言う。
「ねえ、ケンタ? あたしはね? 今度こそ、二度と後悔なんてしない幸せな選択をするのよ。だって、ロコちゃんの物語は、いつも決まってハッピーエンド、だもん! でしょ?」
「は、はぁ!? あの天邪鬼の、ひねくれへそ曲がり娘がか!?」
「そりゃ本家のツッキーには敵わないわよ? でもね――?」
そこで言葉を区切ると、ロコはなにかを思い出してくすくすと忍び笑いを漏らす。
「ほら、イキナリぽろぽろ泣き出しちゃったりしてさ? ……でも、そうだよね。今まで誰にもヒミツを打ち明けることすらできずに、たったひとりで戦い続けてきたんだもん。運命と」
「確かに……そうだよな」
僕は白々と照らす更待ち月を見上げつつ、ロコの言葉がココロに染み入るのを感じた。だいぶ帰る時間が遅くなってしまったが、今夜の出来事にその価値は十分あったと言えるだろう。僕とロコは、車すら通らず誰ひとりいない、ただ青白く塗り潰された世界を並んで歩いていく。
「僕なんかについ弱さを見せちゃうほど、ほんのちょっぴりでも安心できたのなら良かった」
「まーた、そういう意地悪なこと言ってー! もー、知らないわよ?」
「あははは。冗談だって、冗談」
そういえば、今夜はロコたちと天体観測をするからって言って家を抜け出してきたんだっけ。その口から出まかせの言い訳がまるで真実だったかのように、見上げればキレイな空だ。夏特有のかすみがかった色は、見上げる空にはもうない。透明な空気が、星々を強く輝かせていた。
「……なーに? 空ばっかり見上げちゃってさ?」
「自分のこの先の運命を知ってる、ってどういう気持ちなんだろうな……と思ってさ」
「あはは! ばっかみたい!」
いくらなんでも、それはあんまりなセリフだと、かなりムッとしてロコを見る。
だが、ロコは平然と指さしてきた。僕を。
「今のあんただって同じことじゃん、ケンタ? あたしだってそう。この先の未来を知ってる」
「け、けど、ツッキーの辿る未来とは違うよ。少なくとも、まだ生きてるんだし」
「あんな未来……死んでいるのと、そう大きく変わらないでしょ?」
そう――なのかもしれない。
「あのさ……もしかして、そうじゃない、今と違う幸せな未来に変えるのが、ロコの『リトライ』の目的だったりするのか?」
「かもね」
「なんだよ、それ。『かもね』って」
「誰しも触れられたくない過去ってのはあるものよ、って前にも言ったでしょ?」
「過去じゃなくて未来なんだよなぁ」
どこがおかしかったのか、隣を歩くロコは、ずっとくすくす笑い続けている。さっぱりツボがわからない。次第に僕が馬鹿にされているように感じてきて、むっつりと前を向いた。
あの日、ひさしぶりに同窓会の会場で出会ったロコは、昔とは別人かと見間違うくらいの変貌を遂げていた。見た目ももちろんだったが、内面も、あれほど自信に満ちていきいきとしていたのが、何をするにもひどく怯え、打ちひしがれ、この先も続く未来をあきらめていた。
しかし、ある意味において、そんなロコの姿に自分と同類の匂いを感じ取って、場違いながらも少し嬉しく思ってしまったのは事実だった。また昔のように隣にいてくれる、そう思った。
だが、この『リトライ』の間のロコは、昔どおり輝いていた。
それは純粋に嬉しいことだったが、同時に物悲しくもあった。
かつての『一周目』同様、僕はロコとの間に埋められないへだたりがあるように感じてしまうからだ。学年トップの人気を誇る美少女、それがロコ。僕たち底辺陰キャとは違って当然だ。
「ま……それが正解かどうかは別にしても、ロコは幸せな未来を手にする権利があると思う」
「………………もちろん、そのつもりよ?」
妙な間があったが、僕はすぐに忘れてしまった。
すべてが白く、そして蒼い世界の中で、ロコは両手を広げてにかっと笑いながら僕に言う。
「ねえ、ケンタ? あたしはね? 今度こそ、二度と後悔なんてしない幸せな選択をするのよ。だって、ロコちゃんの物語は、いつも決まってハッピーエンド、だもん! でしょ?」
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