ラブ×リープ×ループ!

虚仮橋陣屋(こけばしじんや)

文字の大きさ
285 / 539

第284話 二人だけなら最高 at 1995/10/15

しおりを挟む
「ご、ごめーん! ケンタ君! ……待った?」

「いや、ぜんぜん。待つのも嫌いじゃないから」


 はぁはぁと肩で息をつき、うつむき加減の姿勢でワンピースの胸元を右手で押さえているのは純美子だ。足元はいつぞやの白いミュール。そんなので走ったら危ないのに……。


「僕のためにいろいろ考えてお洒落してたら時間なくなっちゃったんでしょ? 怒れないって」

「ぼっ! 僕のためってっ! う、うぬぼれないでくれますぅー!?」


 はいはい。
 ツンデレツンデレ。

 真っ赤になってふくれてそっぽを向いている純美子の耳元に顔を寄せて囁く。


「今日のスミちゃんも、とってもかわいいよ。いつもはさ? みんながいるから言えなくって」

「――――――!?」

「だ、誰にでもこんなこと言ってるわけじゃないからね? スミちゃんにだけは、僕のホントの気持ちをきちんと伝えないとイケナイって思ったから、す、すごく頑張って言ってるんだよ」


 ……なにせ、一周目はそのせいで気持ちが通じなかったんだし。
 鬱陶しがられるくらい、スキスキ大スキ! の路線でいこうと思ってます、はい。

 照れまくりの純美子だったが、深呼吸を繰り返し、平常心を取り戻すことに成功したらしい


「も、もう……真面目で品行方正なフリして、意外と女タラシだったりしないでしょうね……」

「えええええ!? 一生懸命頑張ったら頑張ったで、今度はそっちを疑われちゃうのかぁ……」


 なんちゅう難易度。
 激ムズなんですけど、この恋愛シミュレーション!


「そ、それよりさ、今日は……いいの? レッスンの日なんじゃ――」

「それは大丈夫! テスト前だもん。お休みくれたんだよ。……あ! 来たよ!」


 声優になるためのレッスンも順調らしい。『町田バスターミナル』行きのバスが到着して一緒に乗り込んでからそのハナシをしてくれる純美子。やっぱり声優業が性に合っているのか、ハナシている間中、大きくてキラキラとした瞳が輝いている。僕はというと見とれるばかりだ。


「……もう。ちゃんと聞いてる、ケンタ君?」

「き、聞いてますってば。今度オーディションを受けることになったんでしょ? 凄いじゃん」


 とはいえ、ちゃんとした役付きではなくって、いわゆるモブ役らしい。でも、そういうところで実力を発揮して監督やスタッフの目に留まり、次も呼んでもらえることだってあると聞く。

 いつもより距離の縮まった会話に花咲かせているうちに、バスは終点『町田バスターミナル』に到着した。今日の目的は、中央図書館。来る中間テストの勉強のためだ。このところ毎日部室でもやっていることだけれど、やっぱり二人きりならもっともっと楽しいんだよな。


「どこか空いてるかなぁ……あ! あそこ、空きそうだ! ちょっと相談してくるよ」


 陰キャな僕でも、こんなときばかりは張り切って初対面の人にだって話しかけるんだぜ。今帰るところだから待っていてくれれば交代するよ、と快く応じてくれた。お兄さん、ナイス。


「へへっ。ラッキーだったね。……そうそう、あのお兄さんとお姉さん、町高の先輩だったよ」

「町高、って……町田中央高等学校だよね?」

「うん。僕らが――い、いや違った、僕が目指しているのも町高なんだ」

「そう……なんだ……」


 わずかに純美子の表情が曇ったのを僕は見逃さなかった。

 それは言わずもがな、町田中央高等学校が学区内で一、二を争う偏差値の高校だからだろう。この時点では確か、純美子の希望する高校の偏差値はもう二段階ほど下だったはずだ。その差をただ一人で埋めて入学したのだ。

 決意を込めて顔を上げた純美子は真剣な眼差しで僕に訴える。


「ねぇ、ケンタ君……? スミも一緒の高校に行きたいよ……もっともっと仲良くなりたい!」

「わかった。僕だって同じ気持ちだもん。できることはなんでも協力する。一緒に行こうぜ!」


 今度は、この僕がついてるからな。

 ひとりぼっちでツラい思いなんてさせない。
 いつも一緒で、明るく、楽しく、高校受験までばっちりクリアしてやろうぜ。


「じゃあ、早速はじめますか!」
「おー!」


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】年収三百万円台のアラサー社畜と総資産三億円以上の仮想通貨「億り人」JKが湾岸タワーマンションで同棲したら

瀬々良木 清
ライト文芸
主人公・宮本剛は、都内で働くごく普通の営業系サラリーマン。いわゆる社畜。  タワーマンションの聖地・豊洲にあるオフィスへ通勤しながらも、自分の給料では絶対に買えない高級マンションたちを見上げながら、夢のない毎日を送っていた。  しかしある日、会社の近所で苦しそうにうずくまる女子高生・常磐理瀬と出会う。理瀬は女子高生ながら仮想通貨への投資で『億り人』となった天才少女だった。  剛の何百倍もの資産を持ち、しかし心はまだ未完成な女子高生である理瀬と、日に日に心が枯れてゆくと感じるアラサー社畜剛が織りなす、ちぐはぐなラブコメディ。

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

クラスメイトの王子様系女子をナンパから助けたら。

桜庭かなめ
恋愛
 高校2年生の白石洋平のクラスには、藤原千弦という女子生徒がいる。千弦は美人でスタイルが良く、凛々しく落ち着いた雰囲気もあるため「王子様」と言われて人気が高い。千弦とは教室で挨拶したり、バイト先で接客したりする程度の関わりだった。  とある日の放課後。バイトから帰る洋平は、駅前で男2人にナンパされている千弦を見つける。普段は落ち着いている千弦が脚を震わせていることに気付き、洋平は千弦をナンパから助けた。そのときに洋平に見せた笑顔は普段みんなに見せる美しいものではなく、とても可愛らしいものだった。  ナンパから助けたことをきっかけに、洋平は千弦との関わりが増えていく。  お礼にと放課後にアイスを食べたり、昼休みに一緒にお昼ご飯を食べたり、お互いの家に遊びに行ったり。クラスメイトの王子様系女子との温かくて甘い青春ラブコメディ!  ※特別編4が完結しました!(2026.2.22)  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、いいね、感想などお待ちしております。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

【完結】イケメンが邪魔して本命に告白できません

竹柏凪紗
青春
高校の入学式、芸能コースに通うアイドルでイケメンの如月風磨が普通科で目立たない最上碧衣の教室にやってきた。女子たちがキャーキャー騒ぐなか、風磨は碧衣の肩を抱き寄せ「お前、今日から俺の女な」と宣言する。その真意とウソつきたちによって複雑になっていく2人の結末とは──

処理中です...