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第296話 恋する遊び島(1) at 1995/10/28
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「おっ。意外と早く着いたぞ」
「うん。電車の中でのおしゃべりも楽しかったから……なんだかあっという間だったね」
ここ『八景島シーパラダイス』は、神奈川県の横浜市金沢区にある水族館と遊園地、そしてショッピングモールやホテル、マリーナなどから構成された複合型海洋レジャー施設だ。
神奈中バスで町田バスセンターへ。JR町田駅から横浜線で横浜駅へ。そこからJR根岸線へ乗り換え新杉田駅へ。そしてシーサイドラインへ乗り換えて八景島駅へ。一時間四〇分の道のりは、もうお互いの気持ちを知っている僕らにとっては、さほど苦にならないものだった。
天候は晴れ。最高気温は一九℃。
改札を出れば、頬を撫でる海風が心地いい。
僕ははやる気持ちを抑えきれず、たっ、と駆け出して二人分のチケットを購入する。
「では、本日はこの古ノ森健太めが、姫をエスコートさせていただきます――」
「……もう、姫ってあたしのことなの? こほん、ではよろしく頼むわね、あたしの騎士君!」
まだ少し照れている様子の純美子の手を、芝居がかった仕草でそっと握り――握り返してくれた!――僕らはアクアミュージアムへと向かった。
地上五階建ての白い屋根を冠した外観は、ピラミッドにも似ている。少し違うのは、対角線上にふたつに分割されていて、陽光を内部へと取り込むようなカタチになっている点だ。これは、半屋内型に設計された、四階部分の『アクアスタジアム』のためである。ここでは、イルカやペンギンなどの海の動物たちが活躍する大人気のショーが一日三回上演されているのだ。
第一回の開演までには、まだ少し時間がある。
それまで、一階と三階をゆっくり見学するとしよう。
「ウミウシって……ちょっと気持ち悪いって思ってたけど、意外とカラフルでかわいいのね!」
「なんでも、ここ、ウミウシの飼育数で日本一らしいんだよね」
よかった。子どものような無邪気なキラキラの大きな瞳で、水槽の中のいろとりどりのウミウシを眺めている純美子の表情を見て、ホッと胸を撫でおろす僕。『水族館なんて……』と幻滅されないかちょっぴり心配だったのだ。
「あ! ねえねえ! ケンタ君――!」
――ぴとっ。
で、でも、むしろいつもより距離感が近くて、ど、どきどきするっていうか……。
「ん? どうかした? あたしの顔に何かついてる?」
「い、いやいやいや! ……か、かわいいな、って思ってて。ウ、ウミウシじゃないよ!?」
「うふふふ……知ってる!」
いや、もう何このかわいい生き物。
悶え死にそう。
肩までのさらさらの黒髪を飾るのは、僕がプレゼントした銀細工の髪留め。月を模したラピスラズリの吸い込まれそうな蒼が良く似合う。思わず手を伸ばして触りそうになったくらいだ。
「い……いいよ? 撫でても?」
「う……うん」
……お見通しなんですねわかります。
女の子の髪をなでなでするなんて、四〇年生きてきても一度あったかどうか。い、いかんいかん、せめて今くらいは、自分が四〇歳のおっさんだってことを忘れないと。事案化しちゃう。
「ぽかぽかする、ケンタ君の手……」
「てっ、手のひらの! たっ、体温が! 人よりちょっぴり高いみたいなんだよね、僕っ!」
「……知ってるよ? だって、もう何度も手……つないだもん」
ヤバいヤバいヤバい!
死ぬ死ぬ死ぬ!
地味目で物静かな清楚系文学少女って、ホントはこんなにかわいくてえっちなこと言うの? あ、いや、別にえっちでもないか、ただの考え過ぎか。経験なさすぎだろ、古ノ森健太!
「うわ……すっごいどきどきしてるよ、僕……。な、なんかゴメン……」
「いーいよっ! 今日はー……もっと、もーっと、スミがどきどきさせちゃうんだから!」
「うん。電車の中でのおしゃべりも楽しかったから……なんだかあっという間だったね」
ここ『八景島シーパラダイス』は、神奈川県の横浜市金沢区にある水族館と遊園地、そしてショッピングモールやホテル、マリーナなどから構成された複合型海洋レジャー施設だ。
神奈中バスで町田バスセンターへ。JR町田駅から横浜線で横浜駅へ。そこからJR根岸線へ乗り換え新杉田駅へ。そしてシーサイドラインへ乗り換えて八景島駅へ。一時間四〇分の道のりは、もうお互いの気持ちを知っている僕らにとっては、さほど苦にならないものだった。
天候は晴れ。最高気温は一九℃。
改札を出れば、頬を撫でる海風が心地いい。
僕ははやる気持ちを抑えきれず、たっ、と駆け出して二人分のチケットを購入する。
「では、本日はこの古ノ森健太めが、姫をエスコートさせていただきます――」
「……もう、姫ってあたしのことなの? こほん、ではよろしく頼むわね、あたしの騎士君!」
まだ少し照れている様子の純美子の手を、芝居がかった仕草でそっと握り――握り返してくれた!――僕らはアクアミュージアムへと向かった。
地上五階建ての白い屋根を冠した外観は、ピラミッドにも似ている。少し違うのは、対角線上にふたつに分割されていて、陽光を内部へと取り込むようなカタチになっている点だ。これは、半屋内型に設計された、四階部分の『アクアスタジアム』のためである。ここでは、イルカやペンギンなどの海の動物たちが活躍する大人気のショーが一日三回上演されているのだ。
第一回の開演までには、まだ少し時間がある。
それまで、一階と三階をゆっくり見学するとしよう。
「ウミウシって……ちょっと気持ち悪いって思ってたけど、意外とカラフルでかわいいのね!」
「なんでも、ここ、ウミウシの飼育数で日本一らしいんだよね」
よかった。子どものような無邪気なキラキラの大きな瞳で、水槽の中のいろとりどりのウミウシを眺めている純美子の表情を見て、ホッと胸を撫でおろす僕。『水族館なんて……』と幻滅されないかちょっぴり心配だったのだ。
「あ! ねえねえ! ケンタ君――!」
――ぴとっ。
で、でも、むしろいつもより距離感が近くて、ど、どきどきするっていうか……。
「ん? どうかした? あたしの顔に何かついてる?」
「い、いやいやいや! ……か、かわいいな、って思ってて。ウ、ウミウシじゃないよ!?」
「うふふふ……知ってる!」
いや、もう何このかわいい生き物。
悶え死にそう。
肩までのさらさらの黒髪を飾るのは、僕がプレゼントした銀細工の髪留め。月を模したラピスラズリの吸い込まれそうな蒼が良く似合う。思わず手を伸ばして触りそうになったくらいだ。
「い……いいよ? 撫でても?」
「う……うん」
……お見通しなんですねわかります。
女の子の髪をなでなでするなんて、四〇年生きてきても一度あったかどうか。い、いかんいかん、せめて今くらいは、自分が四〇歳のおっさんだってことを忘れないと。事案化しちゃう。
「ぽかぽかする、ケンタ君の手……」
「てっ、手のひらの! たっ、体温が! 人よりちょっぴり高いみたいなんだよね、僕っ!」
「……知ってるよ? だって、もう何度も手……つないだもん」
ヤバいヤバいヤバい!
死ぬ死ぬ死ぬ!
地味目で物静かな清楚系文学少女って、ホントはこんなにかわいくてえっちなこと言うの? あ、いや、別にえっちでもないか、ただの考え過ぎか。経験なさすぎだろ、古ノ森健太!
「うわ……すっごいどきどきしてるよ、僕……。な、なんかゴメン……」
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