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第297話 恋する遊び島(2) at 1995/10/28
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「割と混んでるね……ちょっと後ろの方になっちゃったかも……。失敗したなー」
「大人気なんだねー。楽しみー!」
アクアミュージアムの四階に位置する『アクアスタジアム』は、半吹き抜け式のピラミッド型天井が特徴的かつ開放的な野外水槽だ。
ここで11:〇〇から開催される『海の動物たちショー』を目当てに集まってきた来場客は予想以上に多く、僕らがのんびり到着した頃には、水槽に近い前の方の席はあらかた埋まってしまっていた。扇状に広がる背もたれのないプラスチック製の座席の空きを探すと――あった。
「もうちょっと前にもいけそうだよ? どうする?」
「う……ううん。スミはここでいーよ?」
「そ、そう? じゃあ、ここでいっか」
僕らが座ったのは割と後ろの方の席だ。
この『アクアスタジアム』の収容人数は、立ち見も含めれば二千人にもなり、巨大水槽のサイズは、縦20メートル×横35メートル、深さは6メートルもある。その水量は、なんと三五〇〇トンにもおよぶというから驚きの迫力だ。
「お、お尻、ちょっとひんやりするね……」
「プラスチックのベンチだからね。でも大丈夫、ヒーター内蔵だから、じきあったかくなるよ」
「か、壁がなくって吹き抜けになってるから、ちょっと肌寒いね……」
「そうだ! はじまる前に、何かあったかい飲み物買ってこようか?」
「……もう! いらないもん。そうじゃなくって――」
「ん? ん? んんんんん!?」
思うように進まないやりとりに痺れを切らしたように、隣に座る純美子はふくれっ面をしながら、僕の着ていたオーバーサイズの――単に中身がスリム化しただけなんだけど――ネイビーブルーのピーコートのボタンを外すと、その中に潜り込むようにさらにカラダを寄せてくる。
「……ね? こうしてればあったかいもん」
「あー………………うん、あったかい」
「……どきどきしてる、ケンタ君」
「そ、そりゃするよ。大好きな女の子とのデートで、大好きな女の子が腕の中にいて……!」
「……あたしもだよ? ほら………………ね?」
ね、って。
ね、って。
見るでも聴くでもなく、こういう確認の仕方があるだなんて。
べ、勉強になるなぁ、って馬鹿。この手、もう一生洗えない……。
『いよいよこの後はじまりますのは、イルカやペンギンなどの海の動物たちが大活躍するショー! みなさま、ダイナミックなジャンプや優雅なパフォーマンスをお楽しみください!』
ショーのはじまりを告げるアナウンスが鳴り響く。
けれど、僕らの耳にはあまり聴こえていなかった。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「………………席、後ろの方で正解だった、ね」
「………………うん。でも、立ち見の人もいたから、結構見られちゃってたよ?」
「………………そ、そっか」
ショーが終わったこともなかなか気づかなかった僕ら。真っ赤になったまましばらく席を立たずにうつむいて、他の来場客たちが去るまで待っていた。
でも、それでも僕と純美子の指先はつながれたままで。
名残惜しくて、離れがたくって。
指切りするように小指をつないでいた。
「そ、そろそろ行こっか」
「う、うん。そうだね」
と言いつつも。
腕の中からそっと控えめな上目遣いで見上げてくる純美子の姿に、表情に胸がきゅんとする。
「えっと……も、もう少しいよっか」
「………………うん。………………いいよ」
「大人気なんだねー。楽しみー!」
アクアミュージアムの四階に位置する『アクアスタジアム』は、半吹き抜け式のピラミッド型天井が特徴的かつ開放的な野外水槽だ。
ここで11:〇〇から開催される『海の動物たちショー』を目当てに集まってきた来場客は予想以上に多く、僕らがのんびり到着した頃には、水槽に近い前の方の席はあらかた埋まってしまっていた。扇状に広がる背もたれのないプラスチック製の座席の空きを探すと――あった。
「もうちょっと前にもいけそうだよ? どうする?」
「う……ううん。スミはここでいーよ?」
「そ、そう? じゃあ、ここでいっか」
僕らが座ったのは割と後ろの方の席だ。
この『アクアスタジアム』の収容人数は、立ち見も含めれば二千人にもなり、巨大水槽のサイズは、縦20メートル×横35メートル、深さは6メートルもある。その水量は、なんと三五〇〇トンにもおよぶというから驚きの迫力だ。
「お、お尻、ちょっとひんやりするね……」
「プラスチックのベンチだからね。でも大丈夫、ヒーター内蔵だから、じきあったかくなるよ」
「か、壁がなくって吹き抜けになってるから、ちょっと肌寒いね……」
「そうだ! はじまる前に、何かあったかい飲み物買ってこようか?」
「……もう! いらないもん。そうじゃなくって――」
「ん? ん? んんんんん!?」
思うように進まないやりとりに痺れを切らしたように、隣に座る純美子はふくれっ面をしながら、僕の着ていたオーバーサイズの――単に中身がスリム化しただけなんだけど――ネイビーブルーのピーコートのボタンを外すと、その中に潜り込むようにさらにカラダを寄せてくる。
「……ね? こうしてればあったかいもん」
「あー………………うん、あったかい」
「……どきどきしてる、ケンタ君」
「そ、そりゃするよ。大好きな女の子とのデートで、大好きな女の子が腕の中にいて……!」
「……あたしもだよ? ほら………………ね?」
ね、って。
ね、って。
見るでも聴くでもなく、こういう確認の仕方があるだなんて。
べ、勉強になるなぁ、って馬鹿。この手、もう一生洗えない……。
『いよいよこの後はじまりますのは、イルカやペンギンなどの海の動物たちが大活躍するショー! みなさま、ダイナミックなジャンプや優雅なパフォーマンスをお楽しみください!』
ショーのはじまりを告げるアナウンスが鳴り響く。
けれど、僕らの耳にはあまり聴こえていなかった。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「………………席、後ろの方で正解だった、ね」
「………………うん。でも、立ち見の人もいたから、結構見られちゃってたよ?」
「………………そ、そっか」
ショーが終わったこともなかなか気づかなかった僕ら。真っ赤になったまましばらく席を立たずにうつむいて、他の来場客たちが去るまで待っていた。
でも、それでも僕と純美子の指先はつながれたままで。
名残惜しくて、離れがたくって。
指切りするように小指をつないでいた。
「そ、そろそろ行こっか」
「う、うん。そうだね」
と言いつつも。
腕の中からそっと控えめな上目遣いで見上げてくる純美子の姿に、表情に胸がきゅんとする。
「えっと……も、もう少しいよっか」
「………………うん。………………いいよ」
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