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第334話 球技大会・最終戦(8) at 1995/11/10
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かくして、
――ピッ! ピーッ! ピィーッ!!
無情にも試合終了のホイッスルはフィールドに鳴り響いたのだった。
「くそが! こんなん納得できねえだろうがぁ! あんな……あんなインチキ野郎と根暗に!」
よほど悔しいのか――いや、僕たちが優っていたなどとは認めたくないのだろう――タツヒコは狂ったように叫びながら乾いた地面を拳で何度も叩いている。そして、どこかよそよそしい態度のままハイタッチらしきものを交わした僕と小山田を、血走った眼で睨みつけた。
「この借りはぜってぇ返してもらうからなぁ!? 覚悟しておけよぅ! いひひ、ひひひっ!」
だが、
「……おい、タツヒコ。俺様はもう、てめぇが何仕掛けてこようが、相手になってやるつもりはねぇよ」
「うひ、うひひっ! なんだよぉ、ビビってんのか!? ダッチィイイイ!?」
「ああ、ビビってるね」
「は――はぁあああああ!?」
想像だにしなかった小山田のその迷いのない返答に、タツヒコは嘲ることもなじることもできず、ただあんぐりと口を開けたまま、すっとんきょうな声を上げた。そこへ小山田が告げる。
「いつまでもてめぇのペースに巻き込まれて、大事なものまでなくしちまうのが怖くてビビってるんだよ、俺様は。……てめぇはただの子どもだ。ガキだ。誰かに遊んでもらいたくて、誰かに構ってもらいたくて愚図ってる図体のでけぇただの赤ん坊だ。暴れたきゃ勝手にするがいいだろうぜ」
小山田は、声を荒げることもなく、淡々とそう告げる。
たちまちタツヒコの顔色が悪くなった。
「う……うひ、でもよぅ? 相手せざるを得ない状況にしちまえば――」
「そりゃ、誰かが相手するしかねぇな。ただ……相手するのはもう俺様じゃねぇ。梅センで手に負えなけりゃ、次はポリ公の世話んなるしかねぇな。それがてめぇの望みなんだろ? あぁ?」
「う……っ」
「なんだよ? 違うのか?」
ついに言葉に詰まるタツヒコ。
たたみかけるように小山田は言葉を繋いだ。
「おいおい。だったら、てめぇは何がしてえんだ? むしゃくしゃする、暴れたい、スカッとしたい……気持ちはわからねぇでもねぇ。だがよ? 物事には限度ってものがある。法律だかなんだか知らねぇが、てめぇはそいつを利用してなんでもできる気になってやがるんだろうが、俺様たちはてめぇのやったことをいつまでも忘れねぇ。法が許そうが、ずっとずっと忘れねぇ」
「……」
「てめぇがいつまでもガキみたいなことやってる限り、俺様たちはてめぇのしでかしたことをいつまでもいつまでも忘れねぇだろうな。そして、いつまでもいつまでも許すことがねぇんだ」
「……」
「それでも一向お構いなし、ってんならやりゃあいい。だが、もう俺様は降りさせてもらう」
そこでなぜか小山田は、僕の方をちらりと見て、反応を待っている――てめぇはなんか言うことあるか?――そう確かめているかのようだった。僕は満足げな笑みを浮かべて首を振る。
「そして――改めて言わせてもらうぜ」
小山田は改めて、目の前に座り込んだままのタツヒコへと一歩踏み出して、こう言った。
「たった一点差だろうが、勝ちは勝ち、だ! 二度と俺様のことをインチキ呼ばわりするんじゃねえ! あとな……? つ、ついでにこの野郎のことも『根暗』だなんて呼ぶんじゃねえぞ?」
え? 僕? と指さしながら小山田を見たが、一瞬でそらされてしまった。そして小山田は長々と溜息をついたかと思うと、腹立たし気に、ちょっぴり嬉しそうにこう言った。
「こいつはよ……? 妙に偉そうだし、しょっちゅうムカつくし、なんだか得体が知れなくて気持ち悪ぃとこもあるが、それでも俺様のライバルでダチ公なんだ。てめぇごときが甘く見るんじゃねえ!」
「ダッチ……!」
「な、なんだよ……。お、おい、いくぞ! 俺様たちの勝負はまだ終わってねえんだからな!」
――ピッ! ピーッ! ピィーッ!!
無情にも試合終了のホイッスルはフィールドに鳴り響いたのだった。
「くそが! こんなん納得できねえだろうがぁ! あんな……あんなインチキ野郎と根暗に!」
よほど悔しいのか――いや、僕たちが優っていたなどとは認めたくないのだろう――タツヒコは狂ったように叫びながら乾いた地面を拳で何度も叩いている。そして、どこかよそよそしい態度のままハイタッチらしきものを交わした僕と小山田を、血走った眼で睨みつけた。
「この借りはぜってぇ返してもらうからなぁ!? 覚悟しておけよぅ! いひひ、ひひひっ!」
だが、
「……おい、タツヒコ。俺様はもう、てめぇが何仕掛けてこようが、相手になってやるつもりはねぇよ」
「うひ、うひひっ! なんだよぉ、ビビってんのか!? ダッチィイイイ!?」
「ああ、ビビってるね」
「は――はぁあああああ!?」
想像だにしなかった小山田のその迷いのない返答に、タツヒコは嘲ることもなじることもできず、ただあんぐりと口を開けたまま、すっとんきょうな声を上げた。そこへ小山田が告げる。
「いつまでもてめぇのペースに巻き込まれて、大事なものまでなくしちまうのが怖くてビビってるんだよ、俺様は。……てめぇはただの子どもだ。ガキだ。誰かに遊んでもらいたくて、誰かに構ってもらいたくて愚図ってる図体のでけぇただの赤ん坊だ。暴れたきゃ勝手にするがいいだろうぜ」
小山田は、声を荒げることもなく、淡々とそう告げる。
たちまちタツヒコの顔色が悪くなった。
「う……うひ、でもよぅ? 相手せざるを得ない状況にしちまえば――」
「そりゃ、誰かが相手するしかねぇな。ただ……相手するのはもう俺様じゃねぇ。梅センで手に負えなけりゃ、次はポリ公の世話んなるしかねぇな。それがてめぇの望みなんだろ? あぁ?」
「う……っ」
「なんだよ? 違うのか?」
ついに言葉に詰まるタツヒコ。
たたみかけるように小山田は言葉を繋いだ。
「おいおい。だったら、てめぇは何がしてえんだ? むしゃくしゃする、暴れたい、スカッとしたい……気持ちはわからねぇでもねぇ。だがよ? 物事には限度ってものがある。法律だかなんだか知らねぇが、てめぇはそいつを利用してなんでもできる気になってやがるんだろうが、俺様たちはてめぇのやったことをいつまでも忘れねぇ。法が許そうが、ずっとずっと忘れねぇ」
「……」
「てめぇがいつまでもガキみたいなことやってる限り、俺様たちはてめぇのしでかしたことをいつまでもいつまでも忘れねぇだろうな。そして、いつまでもいつまでも許すことがねぇんだ」
「……」
「それでも一向お構いなし、ってんならやりゃあいい。だが、もう俺様は降りさせてもらう」
そこでなぜか小山田は、僕の方をちらりと見て、反応を待っている――てめぇはなんか言うことあるか?――そう確かめているかのようだった。僕は満足げな笑みを浮かべて首を振る。
「そして――改めて言わせてもらうぜ」
小山田は改めて、目の前に座り込んだままのタツヒコへと一歩踏み出して、こう言った。
「たった一点差だろうが、勝ちは勝ち、だ! 二度と俺様のことをインチキ呼ばわりするんじゃねえ! あとな……? つ、ついでにこの野郎のことも『根暗』だなんて呼ぶんじゃねえぞ?」
え? 僕? と指さしながら小山田を見たが、一瞬でそらされてしまった。そして小山田は長々と溜息をついたかと思うと、腹立たし気に、ちょっぴり嬉しそうにこう言った。
「こいつはよ……? 妙に偉そうだし、しょっちゅうムカつくし、なんだか得体が知れなくて気持ち悪ぃとこもあるが、それでも俺様のライバルでダチ公なんだ。てめぇごときが甘く見るんじゃねえ!」
「ダッチ……!」
「な、なんだよ……。お、おい、いくぞ! 俺様たちの勝負はまだ終わってねえんだからな!」
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