ラブ×リープ×ループ!

虚仮橋陣屋(こけばしじんや)

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第333話 球技大会・最終戦(7) at 1995/11/10

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「ケンタくぅうううううん! がんばってぇえええええ!」


 観客席から純美子の声援が聴こえてくる。
 僕はその声に反応して、ボールから目を離し、照れたように小さく手を振った。

 そして、できるかぎりゆっくりとしたスピードでドリブルを続ける。


(タツヒコはああ言っていたけど、他の連中は僕のプレーになんて注目してないはずだ……)


 なんたって、僕は自他ともに認める陰キャなのだ。
 こんな奴ごときが――そう頭から決めてかかっているに違いない。

 案の定、目の前のマーク要員は一定の距離を保っているだけで、今のところは静観している。

 そりゃそうだろう。

 観客席からの黄色い声援に浮かれ、大事なボールから目を離して手を振り返すわ、ドリブルはよちよちとたどたどしいわ、スピードも目に見えて速くはなかった。





 ――が、それは全部僕の演技だ。





「お、おいぃっ! いつまで泳がせてんだよぅ! 早く潰せ、そんな雑魚ぉ!」


 ――ちょっと遅かったな、タツヒコ!


 狼狽したような一喝が相手チームに浸透する前に、僕は一気にギアを数段上に切り替えた。



 ぐ――ん!



 いきなりトップスピードでのドリブルに切り替え、タツヒコの声に反応して視線をそらした敵のマーク要員の脇を一気にすり抜けて前線に深く入り込む。慌てて振り返ったがもう追いつけない。まわりの選手たちが一気に連鎖的に反応したが、やはりこれもワンテンポ遅れていた。


「く――そっ! 古ノ森ケンタァアアア!」

「う……っ!」


 物凄い形相で前線に残っていたはずのタツヒコが雄叫びを上げながら急接近してくる。どうやら一杯食わされたと知って、完全に怒らせてしまったらしい。僕は追いつかれまいと必死に前へ前へとボールを進める。見る間に僕を取り囲もうとする敵選手の数が増していく。


(ここで……賭けるしかない!)


 チームメイトたちの不甲斐なさにいらだちを募らせたのか、割って入るように僕の前にタツヒコが立ちはだかった。その目つきはナイフのように鋭く、ギラギラと気味悪く輝いている。


「やっぱりよぅ……一番厄介なのはお前だったようだなぁ! 古ノ森ぃいいい!!」

「ははっ。それはどうも」

「ここで潰してやるぅ!」



 タツヒコが一気に距離を詰めてきた!



 ペナルティ・エリア前での、正面同士のぶつかり合い――誰の目にもそう見えたのだろう。そこで僕は――。





 とん――くるり――しゅっ――とっ。





 踏み出しながら蹴り出したボールを軸にして、タツヒコに背を向けるようにして駆け続けながら一回転し、ボールを素早く引き戻すと――見たか、これぞ必殺『マルセイユ・ルーレット』也、だ!――目指すは相手ゴール。僕は大きく右足を振りかぶってシュート体勢に入る。




 そして!




「ダッチィイイイイイ! 今だぁあああああ! 決めろぉおおおおお!」


 どんっ!

 僕の蹴り出した強いボールは、ゆるい弧を描きながらしゅるしゅると逆サイドへ飛んでいく。


「ははっ! やりやがったな、ダチ公っ! あとは……この俺様に任せとけぇえええええ――!!」


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