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第338話 ケアレス・ウィスパー at 1995/11/13
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また新しい週がはじまる。
球技大会も先週で無事終わり、いつもの少し退屈な日常に戻る。
そのはずだった――のに。
「――だって」
「――うっそ」
「――マジ最悪」
朝の、我らが二年十一組の教室には、なぜだか少し妙な空気が漂っていた。
「おはよう、スミちゃん」
「あ。おはよう、ケンタ君」
純美子の返事は、いつもと変わらず明るい。思わず、ホッとする僕。一時間目の準備に余念のない純美子の邪魔をしたら悪いかな、という気持ちもなくはなかったけれど、僕は尋ねてみる。
「あ、あのさ……?」
「ん?」
僕は目立つことのないよう目玉だけをさかんに動かして、背後でひそめきあっている女子たちを示しながら純美子に囁くように言った。
「あれ……なんなの? なんか妙な感じなんだけど……?」
「うーん……」
「あ、言いにくいことだったらいいよ。女子だけの事情とかってのもあるんだろうし――」
「あ! ううん、そうじゃないよ、そうじゃないの」
「?」
そこで純美子は困ったような曖昧な笑みを浮かべながら、僕の耳元まで顔を近づけて言った。
「あたしもね? 気になったから聞いてみたんだけど……誰も教えてくれなかったの」
「……何も?」
「そ。なあんにも」
軽く肩をすくめるようにして、純美子は再び弱ったように微笑んだ。
まだ今もなお聴こえてくる囁き声の出元は、校内のウワサ話が大好物なイケ女グループだけじゃなかった。いや、むしろカノジョたちだったら、そもそも僕は不穏な空気なんて微塵も感じ取らなかったのだろう。
Bグループに位置するフツーの女子生徒も、もっぱらすみっこぐらしを好む地味地味した女子生徒も、決してクラスの全員ではないけれど、ひっきりなしに教室のどこかから、誰かと誰かの囁く声が聴こえてくる。注意深く観察してみたが、ハナシのネタは僕らではないらしい。
(カノジョたちの視線の先を追えば……ある程度絞り込めるかもしれないな……)
――と、考えてから、苦々しい笑い顔になる。
なぜだか僕は、またもや知らないうちに厄介事にみずから首を突っ込もうとしているらしい。
さて――と、僕が慎重に身構えた矢先だった。
「おはよう、みんな!」
教室の前のドアから真っ白な歯を見せて爽やかな挨拶したのは室生だ。
そして、その隣に立っていたのは――。
「……」
(ロコ……)
うつむき加減に木製タイル張りの教室の床に視線を落とし、少しぼんやりとしているようなロコの耳元で室生が何やら囁くと、急に頬を赤く染めたロコが、ぱしり、と平手で叩く。ロコが浮かべている笑顔は、第三者の僕から見ても実に楽しそうにみえた。
だが、同時にわかったこともある。
それは、二人が教室に入ってきたとたんに囁き声が、ぴたり、と止んだという揺るぎない事実。
球技大会も先週で無事終わり、いつもの少し退屈な日常に戻る。
そのはずだった――のに。
「――だって」
「――うっそ」
「――マジ最悪」
朝の、我らが二年十一組の教室には、なぜだか少し妙な空気が漂っていた。
「おはよう、スミちゃん」
「あ。おはよう、ケンタ君」
純美子の返事は、いつもと変わらず明るい。思わず、ホッとする僕。一時間目の準備に余念のない純美子の邪魔をしたら悪いかな、という気持ちもなくはなかったけれど、僕は尋ねてみる。
「あ、あのさ……?」
「ん?」
僕は目立つことのないよう目玉だけをさかんに動かして、背後でひそめきあっている女子たちを示しながら純美子に囁くように言った。
「あれ……なんなの? なんか妙な感じなんだけど……?」
「うーん……」
「あ、言いにくいことだったらいいよ。女子だけの事情とかってのもあるんだろうし――」
「あ! ううん、そうじゃないよ、そうじゃないの」
「?」
そこで純美子は困ったような曖昧な笑みを浮かべながら、僕の耳元まで顔を近づけて言った。
「あたしもね? 気になったから聞いてみたんだけど……誰も教えてくれなかったの」
「……何も?」
「そ。なあんにも」
軽く肩をすくめるようにして、純美子は再び弱ったように微笑んだ。
まだ今もなお聴こえてくる囁き声の出元は、校内のウワサ話が大好物なイケ女グループだけじゃなかった。いや、むしろカノジョたちだったら、そもそも僕は不穏な空気なんて微塵も感じ取らなかったのだろう。
Bグループに位置するフツーの女子生徒も、もっぱらすみっこぐらしを好む地味地味した女子生徒も、決してクラスの全員ではないけれど、ひっきりなしに教室のどこかから、誰かと誰かの囁く声が聴こえてくる。注意深く観察してみたが、ハナシのネタは僕らではないらしい。
(カノジョたちの視線の先を追えば……ある程度絞り込めるかもしれないな……)
――と、考えてから、苦々しい笑い顔になる。
なぜだか僕は、またもや知らないうちに厄介事にみずから首を突っ込もうとしているらしい。
さて――と、僕が慎重に身構えた矢先だった。
「おはよう、みんな!」
教室の前のドアから真っ白な歯を見せて爽やかな挨拶したのは室生だ。
そして、その隣に立っていたのは――。
「……」
(ロコ……)
うつむき加減に木製タイル張りの教室の床に視線を落とし、少しぼんやりとしているようなロコの耳元で室生が何やら囁くと、急に頬を赤く染めたロコが、ぱしり、と平手で叩く。ロコが浮かべている笑顔は、第三者の僕から見ても実に楽しそうにみえた。
だが、同時にわかったこともある。
それは、二人が教室に入ってきたとたんに囁き声が、ぴたり、と止んだという揺るぎない事実。
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