ラブ×リープ×ループ!

虚仮橋陣屋(こけばしじんや)

文字の大きさ
341 / 539

第339話 少女の視線は人を殺す at 1995/11/17

しおりを挟む
(くそっ……どうしたらいいんだ、これ……?)


 月曜日に僕が感じ取った違和感は、日に日にその輪郭の鮮明さ増し、金曜日ともなると、もはや実体を得たかのごとく明確な重さを教室中に放っていた。


「なあ、ロコ――?」

「ん? なに?」


 ロコの席のある、教室の前の方からとぎれとぎれの会話が聴こえてくる。室生はオーバーアクションで、昨日の晩、ウチで起こったハプニングについて話して聞かせているようだった。それを聞いているロコは、こらえきれずに噴き出し、くすくすと口元を押さえて笑っている。

 だが、教室のうしろの方、つまり僕の席のある方に行くにつれ、そんな二人を見つめてこそこそと囁き合っている女子たちがぽつりぽつりといるのだ。



 そんなはずは――と思いつつも、ふと脳裏をよぎる言葉。



(――充分に用心するといい。はじまってしまってからでは、元に戻すことは困難なのだから)


 僕にそう言ったのは、時巫女トキミコ・セツナ=コトセだった。

 なにか嫌なことが起こる――いいや、すでに起こっていることは、もうはっきりしている。けれど、ここでどうすればいいのかがわからない。


(どうして室生は気づいてないんだ……?)


 球技大会の三日目、激闘に終止符を打ったあの日の朝礼台で、室生は全校生徒の前で宣言した。





『僕は、ロコと付き合うことに決めたよ――』





 上級生も下級生からも絶大なる人気があった室生だ。あの堂々たるカミングアウトは、かなり衝撃的だっただろう。でも、だからといって、ここまでの反感を買うことになるとは予想していなかった。昔から『かわいさ余って憎さ百倍』とはいうが、あまりにやりすぎではないか。


「おいおーい! なーにいちゃいちゃしてんだよー?」

「いっ! いちゃいちゃなんてしてないって! そういうのやめろよ、キヨ!」


 荒山までハナシの輪に加わり、ロコの席のまわりが賑やかしくなってくる。荒山がしきりに二人の仲をイジってくるのを、珍しく真っ赤になってごまかそうとする室生。それを自分の席に座ったまま頬杖をつき、微笑ましそうににこにこと見つめているのはロコだ。


 ――そう。
 例の囁き声って、なぜか女子だけなんだよな。


「よーお? ダッチィー? ちょっとこっち来いよー?」

「ば、馬鹿! 俺様はカンケーねーだろっ! は、放せ、放せって!」


 室生といい荒山といい、ほんのたまたま、本当に偶然すぎるタイミングでそこを通りかかったというだけでイジりのターゲットになってしまった小山田――いや、ダッチであったなら、なにかウワサされていても不思議ではないのだろう。



 いくら『変わった』とはいえ、今までの全てが許されたワケじゃない。

 根本には『みんなを守りたかった』という『善』が根底に存在していたとはいえ、小山田自身はまぎれもない『悪』だった。それはどうやっても拭い切れない、隠しようのない事実だ。



 でも、それであれば、女子だけが囁く理由が説明できない。


(うーん、明日コトセにアドバイスもらうか……。この前の土曜日も、ロコは来なかったし)


 そう思い、一旦あきらめようとした瞬間だった。


「………………っ!」


 ついに無視できないレベルまで囁き声が大きくなったその時、それまで満面の笑顔を浮かべていたロコが、鋭く刺し貫くような視線を声の発信源めがけて投げたのだ。ひっ、と声がする。


(――なぜかロコちゃん、一度もコートに入れなくって……)

(――あ、あの……なんの根拠もないんです、けど……。もしかしたら、なんです、けど……)


 そう――僕にそっと教えてくれたのは、他でもない佐倉君だ。


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】年収三百万円台のアラサー社畜と総資産三億円以上の仮想通貨「億り人」JKが湾岸タワーマンションで同棲したら

瀬々良木 清
ライト文芸
主人公・宮本剛は、都内で働くごく普通の営業系サラリーマン。いわゆる社畜。  タワーマンションの聖地・豊洲にあるオフィスへ通勤しながらも、自分の給料では絶対に買えない高級マンションたちを見上げながら、夢のない毎日を送っていた。  しかしある日、会社の近所で苦しそうにうずくまる女子高生・常磐理瀬と出会う。理瀬は女子高生ながら仮想通貨への投資で『億り人』となった天才少女だった。  剛の何百倍もの資産を持ち、しかし心はまだ未完成な女子高生である理瀬と、日に日に心が枯れてゆくと感じるアラサー社畜剛が織りなす、ちぐはぐなラブコメディ。

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

クラスメイトの王子様系女子をナンパから助けたら。

桜庭かなめ
恋愛
 高校2年生の白石洋平のクラスには、藤原千弦という女子生徒がいる。千弦は美人でスタイルが良く、凛々しく落ち着いた雰囲気もあるため「王子様」と言われて人気が高い。千弦とは教室で挨拶したり、バイト先で接客したりする程度の関わりだった。  とある日の放課後。バイトから帰る洋平は、駅前で男2人にナンパされている千弦を見つける。普段は落ち着いている千弦が脚を震わせていることに気付き、洋平は千弦をナンパから助けた。そのときに洋平に見せた笑顔は普段みんなに見せる美しいものではなく、とても可愛らしいものだった。  ナンパから助けたことをきっかけに、洋平は千弦との関わりが増えていく。  お礼にと放課後にアイスを食べたり、昼休みに一緒にお昼ご飯を食べたり、お互いの家に遊びに行ったり。クラスメイトの王子様系女子との温かくて甘い青春ラブコメディ!  ※特別編4が完結しました!(2026.2.22)  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、いいね、感想などお待ちしております。

『専属メイド全員が重すぎる愛で迫ってくる!~大学生の僕、11人?の美女に24時間甘やかされ尽くす生活~』

まさき
青春
僕は、ちょっと普通じゃない日常を送ることになった――それは、専属メイドが全員僕のことを溺愛してくれる暮らしだ。 朝は髪を整えてくれるリナ、朝食で笑顔を見せてくれるミユ、どの瞬間も全力で僕を甘やかす。掃除、料理、悩み相談まで、僕のためだけに動くメイドたち。 「ご主人様の笑顔が見たいんです」 その一言で、僕の毎日はちょっとドキドキ、ちょっと幸せ。 全員が僕を独占したいと競い合う日常の中、僕はどうやってこの溺愛地獄(?)を生き抜けばいいのか――!? 甘々、至れり尽くせりの日常ラブコメ、開幕。 ​「作品への感想代わりの『いいね❤️』や『エール📣』、心よりお待ちしております。」 ​「【応援のお願い】『いいね❤️』や『エール📣』をいただけると、作者のモチベーションが爆上がりします!」 ​「最後までお読みいただきありがとうございます。温かい『いいね❤️』が更新の支えです。」

【完結】イケメンが邪魔して本命に告白できません

竹柏凪紗
青春
高校の入学式、芸能コースに通うアイドルでイケメンの如月風磨が普通科で目立たない最上碧衣の教室にやってきた。女子たちがキャーキャー騒ぐなか、風磨は碧衣の肩を抱き寄せ「お前、今日から俺の女な」と宣言する。その真意とウソつきたちによって複雑になっていく2人の結末とは──

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

処理中です...