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第436話 女の子たちのナイショのハナシ at 1996/1/26
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「ここが――こうじゃん? で――こうなって――こうすると――ってカンジ?」
「な、なるほど……! た、ためになります!」
「ね? ね? こう――でいいのカナ、ロコちゃん?」
「うんうん! いーじゃん、いーじゃん!」
放課後の僕ら『電算論理研究部』の部室のかたすみに、女子部員たちが寄り集まってこそこそとハナシをしている光景にも、少しは慣れてきた僕だったりする。お前らハムスターか。
すると、決まって落ち着かないのは男子たちで。
「……ね? ね? モリケン? あれってさ――?」
「そういうのは『不粋』っていうんだよ、シブチン。わかっていても気づかないフリをしとけ」
「ふ……む。突然の、ボイコット……でしょうか?」
「うーん……そういうんじゃないんだよ、ハカセ。ええと……どう説明したらいいんだ……?」
「古ノ森リーダー? ぼ、僕もあっち混ざっていいですかね? ね?」
「さすがのかえでちゃんでも、それはマズいような……」
例の、僕らの三学期の目標である『仕様書づくり』は、おかげで目下停滞中だったりする。
でもまあ、これはこれで、学生にとっての大事な思い出づくりなのだとあきらめるしかない。すっかり四〇男の僕の視点は、同級生というより先生寄りのものになってしまっていた。
しかし、これでもウチの女子部員たちはまともな方なのだ。
ひどいクラスになると、授業中であるにもかかわらず、片思いもしくは両想いのカレのためにマフラーを編む内職をしている女子生徒もいるのですよ、と荻島センセイが嘆いていたっけ。いまさらながら、バレンタインデーってこんなに盛り上がるんだなぁ、と再認識した僕である。
(にしても……なんだか不気味なんだよな)
ふと平和な光景を前にすると、ついついよぎる想い。
この前の追跡劇の後、僕は二年一組にこっそり偵察に行ってみたのだ。そこでタイミングよくつかまえた『暴走する草食獣的カノジョ』こと三溝さんにタツヒコのことを尋ねてみたのだ。
『え……? タツヒコ……ですか?』
『アイツ、授業中に暴れ出して、感化院に入れられた、って聞いたんだけど……?』
『か、感化院? ……ああ、あそこ、そういう呼び名なんですね。ですです』
実はこの時の僕は、三溝さんのセリフを耳にして、内心かなりホッとしていた。
なぜならば、あの『タツヒコ』もみんなの記憶から抹消されたのかもしれない、と思っていたからだ。しかし、これは断じて桃月の時と似たような同情などではなかった。
もし仮に、あの『タツヒコ』がみんなの記憶から消えてしまっていたとしたら、僕が守りたいと思い願う人たちはきっと、あの少年があまりにも危険な存在なのだということまでを、すっかり忘れてしまっているだろうからだ。そうなれば、僕の立場は圧倒的に不利になる、
そんなことは知りもしない三溝さんは、苦いものを含んだように唇を引き結んだ。
『もう、せっかく忘れかけてたところだったのに……。古ノ森君は嫌な人ですね』
『え……い、いや、ごめん……。で、まだ出てきてないよね?』
『うーん……そうなんじゃないですか? あたし、キョーミないので』
それだけではさすがに安心できる気持ちにはなれなかった僕は、億劫がる三溝さんに何度も頭を下げて、クラスの他の連中にも聞いてまわってもらった。しかし、答えは皆同じだった。
『もう、いいです? 気が済みました?』
『ああ……うん、ありがとう。助かったよ、君がいてくれて』
結局、二年一組の生徒たちは、タツヒコが退院していることを知らないようだったのである。
(担任の梅田センセイなら……いや、それなら荻島センセイ経由で聞いてみた方がいいかもな)
僕は、楽しそうにまもなくやってくるイベントの準備をしている女の子たちを眺めながらそう考えていたのだった。
「な、なるほど……! た、ためになります!」
「ね? ね? こう――でいいのカナ、ロコちゃん?」
「うんうん! いーじゃん、いーじゃん!」
放課後の僕ら『電算論理研究部』の部室のかたすみに、女子部員たちが寄り集まってこそこそとハナシをしている光景にも、少しは慣れてきた僕だったりする。お前らハムスターか。
すると、決まって落ち着かないのは男子たちで。
「……ね? ね? モリケン? あれってさ――?」
「そういうのは『不粋』っていうんだよ、シブチン。わかっていても気づかないフリをしとけ」
「ふ……む。突然の、ボイコット……でしょうか?」
「うーん……そういうんじゃないんだよ、ハカセ。ええと……どう説明したらいいんだ……?」
「古ノ森リーダー? ぼ、僕もあっち混ざっていいですかね? ね?」
「さすがのかえでちゃんでも、それはマズいような……」
例の、僕らの三学期の目標である『仕様書づくり』は、おかげで目下停滞中だったりする。
でもまあ、これはこれで、学生にとっての大事な思い出づくりなのだとあきらめるしかない。すっかり四〇男の僕の視点は、同級生というより先生寄りのものになってしまっていた。
しかし、これでもウチの女子部員たちはまともな方なのだ。
ひどいクラスになると、授業中であるにもかかわらず、片思いもしくは両想いのカレのためにマフラーを編む内職をしている女子生徒もいるのですよ、と荻島センセイが嘆いていたっけ。いまさらながら、バレンタインデーってこんなに盛り上がるんだなぁ、と再認識した僕である。
(にしても……なんだか不気味なんだよな)
ふと平和な光景を前にすると、ついついよぎる想い。
この前の追跡劇の後、僕は二年一組にこっそり偵察に行ってみたのだ。そこでタイミングよくつかまえた『暴走する草食獣的カノジョ』こと三溝さんにタツヒコのことを尋ねてみたのだ。
『え……? タツヒコ……ですか?』
『アイツ、授業中に暴れ出して、感化院に入れられた、って聞いたんだけど……?』
『か、感化院? ……ああ、あそこ、そういう呼び名なんですね。ですです』
実はこの時の僕は、三溝さんのセリフを耳にして、内心かなりホッとしていた。
なぜならば、あの『タツヒコ』もみんなの記憶から抹消されたのかもしれない、と思っていたからだ。しかし、これは断じて桃月の時と似たような同情などではなかった。
もし仮に、あの『タツヒコ』がみんなの記憶から消えてしまっていたとしたら、僕が守りたいと思い願う人たちはきっと、あの少年があまりにも危険な存在なのだということまでを、すっかり忘れてしまっているだろうからだ。そうなれば、僕の立場は圧倒的に不利になる、
そんなことは知りもしない三溝さんは、苦いものを含んだように唇を引き結んだ。
『もう、せっかく忘れかけてたところだったのに……。古ノ森君は嫌な人ですね』
『え……い、いや、ごめん……。で、まだ出てきてないよね?』
『うーん……そうなんじゃないですか? あたし、キョーミないので』
それだけではさすがに安心できる気持ちにはなれなかった僕は、億劫がる三溝さんに何度も頭を下げて、クラスの他の連中にも聞いてまわってもらった。しかし、答えは皆同じだった。
『もう、いいです? 気が済みました?』
『ああ……うん、ありがとう。助かったよ、君がいてくれて』
結局、二年一組の生徒たちは、タツヒコが退院していることを知らないようだったのである。
(担任の梅田センセイなら……いや、それなら荻島センセイ経由で聞いてみた方がいいかもな)
僕は、楽しそうにまもなくやってくるイベントの準備をしている女の子たちを眺めながらそう考えていたのだった。
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