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第479話 ホワイト・サイレント・ナイト(4) at 1996/2/18
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(雪の中に身を隠すチカラを持っているヤツが、寒い、だって!? どういうことだ――!?)
彼――大月大輔の発したセリフに、僕は違和感を覚えた。
何もかも白一色で統一されたその姿。ぴったりと肌に張りついたようなロングスリーブシャツとスリムなジーンズ。スタンドカラージャケットもそうだ。ゴム手袋をはめたような独特の光沢とぬめりのある手指も、何もかもが白く、その細い筋肉質のカラダを際立たせていた。
逆に言えば、カラダの熱を留めるような仕組みは何ひとつなかった。
防寒具が暖かいのは、風や寒さを通さない生地であるということも重要だが、もっとも大切なのは、空気の層を作り、そこに温めた空気を保持する仕組みがあるかどうかだ。
だが、彼のようにすべてがしつらえたように細身の体型にぴっちりとフィットしてしまうと、肝心な空気の層を保持することができない。内部を暖めても、直接外気に熱が逃げてしまう。
(もしかして……アイツは、雪の外に出た方が寒さを感じる、ってことなのか? だから――)
もしここにハカセがいたのなら、呆れてこたえてもくれないだろう。
それでもなお、それが現実で、ここにある真実だ。
(チャンスなら何度もあったのに、全身をさらしたのは一度きりだ。なぜなら……寒いから!)
僕は不思議なほどその辿りついた結論に確信をもっていた。
どのみち、これ以上の時間稼ぎも、遅延行為もできそうになかったからでもある。
「……やってみるしかない、か」
なので僕は――ゆっくりと――地面の上に降り立った。
『ん? ようやく策はないとあきらめたのか? それとも……なにかまだ企んでいるのかい?』
「……どっちにしても、君に教える必要はないよね。わかってるくせに、わざわざ聞くなよ」
『ははは。それもそうだ。僕も、この僕も、これから何をするのか話すつもりはないからね』
余裕たっぷりのセリフに少しうんざりしながら、僕はひとつ長く息を吐き、ガードレールの上の雪を払いのけその上に腰掛けると、一番下のバーに足をかけた。それからビニール袋の中に手をさし入れ、さっきのと同じ柄のステンレスの保温ボトルを取り出した。蓋を開ける。
ほわり――温かな湯気が立ち昇った。
「さっきさ……君も見てたんだろ? ロコとさ、間接キスしちゃったよ。コップの、ここでね」
『……っ』
「あいつ、昔から甘い飲み物が好きでさ? で、僕が飲んでるのも欲しがるから、いっつもさ」
『……黙れ』
「小さい頃はさ? そういうのなんて気にしないから、ああ、これってフツーなんだな、って思ってたけどさ? さすがに中学生ともなると、そういうの、ついつい、気になっちゃうよね」
『黙れと言っている!』
「あいつさ? ウチの学校の、人気ナンバーワン美少女なんだぜ? でもさ? 僕にとってはそんなのカンケーなくって。だって、僕の前ではいまだにガサツで男勝りで、ナマイキでさ?」
『それ以上……しゃべるな……!』
「でもね……僕は、やっぱりあいつがスキなんだ。そして、やっぱりあいつも僕のことを――」
「やめろぉおおおおおおおおおお!」
――ざん!
直接空気をふるわせる大月大輔の悲痛な叫びが聞こえたその瞬間、僕の目の前に憤怒の青白い炎を瞳に宿した彼の研ぎ澄まされた今夜の三日月のような細いカラダが立ちふさがっていた。
「……やっぱり出てきたね、大月大輔――」
そして――僕は続けてこう告げる。
「ガードレール上の、僕のカラダまでは手が届かないもんな。それに、君の、その君の大事な愛しきヒロコを侮辱するヤツは直接ぶちのめしたいもんな。けどね……? それが君のミスだ」
次の瞬間――。
僕は保温ボトルの中身を、大月大輔めがけて一気にぶちまけた。
彼――大月大輔の発したセリフに、僕は違和感を覚えた。
何もかも白一色で統一されたその姿。ぴったりと肌に張りついたようなロングスリーブシャツとスリムなジーンズ。スタンドカラージャケットもそうだ。ゴム手袋をはめたような独特の光沢とぬめりのある手指も、何もかもが白く、その細い筋肉質のカラダを際立たせていた。
逆に言えば、カラダの熱を留めるような仕組みは何ひとつなかった。
防寒具が暖かいのは、風や寒さを通さない生地であるということも重要だが、もっとも大切なのは、空気の層を作り、そこに温めた空気を保持する仕組みがあるかどうかだ。
だが、彼のようにすべてがしつらえたように細身の体型にぴっちりとフィットしてしまうと、肝心な空気の層を保持することができない。内部を暖めても、直接外気に熱が逃げてしまう。
(もしかして……アイツは、雪の外に出た方が寒さを感じる、ってことなのか? だから――)
もしここにハカセがいたのなら、呆れてこたえてもくれないだろう。
それでもなお、それが現実で、ここにある真実だ。
(チャンスなら何度もあったのに、全身をさらしたのは一度きりだ。なぜなら……寒いから!)
僕は不思議なほどその辿りついた結論に確信をもっていた。
どのみち、これ以上の時間稼ぎも、遅延行為もできそうになかったからでもある。
「……やってみるしかない、か」
なので僕は――ゆっくりと――地面の上に降り立った。
『ん? ようやく策はないとあきらめたのか? それとも……なにかまだ企んでいるのかい?』
「……どっちにしても、君に教える必要はないよね。わかってるくせに、わざわざ聞くなよ」
『ははは。それもそうだ。僕も、この僕も、これから何をするのか話すつもりはないからね』
余裕たっぷりのセリフに少しうんざりしながら、僕はひとつ長く息を吐き、ガードレールの上の雪を払いのけその上に腰掛けると、一番下のバーに足をかけた。それからビニール袋の中に手をさし入れ、さっきのと同じ柄のステンレスの保温ボトルを取り出した。蓋を開ける。
ほわり――温かな湯気が立ち昇った。
「さっきさ……君も見てたんだろ? ロコとさ、間接キスしちゃったよ。コップの、ここでね」
『……っ』
「あいつ、昔から甘い飲み物が好きでさ? で、僕が飲んでるのも欲しがるから、いっつもさ」
『……黙れ』
「小さい頃はさ? そういうのなんて気にしないから、ああ、これってフツーなんだな、って思ってたけどさ? さすがに中学生ともなると、そういうの、ついつい、気になっちゃうよね」
『黙れと言っている!』
「あいつさ? ウチの学校の、人気ナンバーワン美少女なんだぜ? でもさ? 僕にとってはそんなのカンケーなくって。だって、僕の前ではいまだにガサツで男勝りで、ナマイキでさ?」
『それ以上……しゃべるな……!』
「でもね……僕は、やっぱりあいつがスキなんだ。そして、やっぱりあいつも僕のことを――」
「やめろぉおおおおおおおおおお!」
――ざん!
直接空気をふるわせる大月大輔の悲痛な叫びが聞こえたその瞬間、僕の目の前に憤怒の青白い炎を瞳に宿した彼の研ぎ澄まされた今夜の三日月のような細いカラダが立ちふさがっていた。
「……やっぱり出てきたね、大月大輔――」
そして――僕は続けてこう告げる。
「ガードレール上の、僕のカラダまでは手が届かないもんな。それに、君の、その君の大事な愛しきヒロコを侮辱するヤツは直接ぶちのめしたいもんな。けどね……? それが君のミスだ」
次の瞬間――。
僕は保温ボトルの中身を、大月大輔めがけて一気にぶちまけた。
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