【本編完結】落ちた先の異世界で番と言われてもわかりません

ミミナガ

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本編

伝えたいこと(後半sideジーク)

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 クリスくんを背負った状態で魔力を体全体に覆う。固有スキルの共有なんて聞いたこともないが、できなければ逃げられない。感覚的なものではあるができそうだと思ったのでやる価値はある。
 地下室の扉が再び開く音がした。そのまま〘認識阻害〙を展開する。思った以上に体の負荷が大きい。階段を下ってきた足音は2人分。1人は先ほどのヒョウ獣人、もう1人は獣人だということはわかるが何の獣人だ?クリーム色の耳が異様に大きい。犬でも猫でも狐でもないな。とても仕立ての良い服を着ているが小太りの中年であまりにも獣耳が似合わない。そして顔が怒りに満ちている。

「おい、誰もいないぞ。どういうことだ?」
「なっ!?さっきまでいたぞ!?」

 ヒョウ獣人が慌てて檻の鍵を開け、中に入ってきた隙を狙ってするりと檻から抜け出した。

「本当に2人落ち人おちびとを捕まえていたんだ!上の奴らも見てるから!」
「実際におらんではないか。適当なことを言うんじゃない。」
「誰かが逃がしたに違いねぇ!」

 言い争う声を置き去りにして階段を上ると、ここは朽ち果てた小屋の中だったということがわかった。小さな部屋に壊れた家具と割れた窓、床も所々腐っている。そこには見張りであろう数人の獣人が待機していた。慎重に動いて体に当たらないように通り抜け、小屋の扉を開けて一気に走り出した。
 獣人たちは突然扉が開いて驚いたのか「なんだ!?」「突風か!?」と騒いでいる。俺はとにかく走った。体中が音を立てて軋むように痛い。鉄の味がすると思ったら鼻血も出てきたようだ。
 とにかく走って辺りを観察する。日が傾きかけているが夜じゃなくてよかった。遠くに村のシンボルの一本杉が見える。なるほど、目印とはとてもありがたいものだ。
 走って走って、魔力が尽きるまで走った。固有スキルの共有で体が痛くて思うように動かない。村まではあと2キロほどあるだろう。

「クリスくんもう喋っていいよ。あの背の高い木が見えるね?あそこまで行けば村があるからそこで助けを求めるんだ。」
「お⋯お兄ちゃんは?」
「俺は少し休憩してから追いかけるよ。君が自分で走るんだ。」
「できないよ!怖いよ!」
「できるよ。君は檻の中でも泣かなかっただろ?とても勇気のある証拠だ。さぁ立って!」

 クリスくんの背中を押すと彼は走り出した。
 少しでも魔力と体力が回復するように楽な体勢になる。薬草もポーションもないので回復は自力でしか頼れない。魔法鞄マジックバッグが奪われたのが痛かったな。
 ここからどうするか。落ち人おちびとを狙った誘拐で、しかも組織的なものを感じる。個人でどうこうできるものではない。ギルドに戻って報告するべきだが馬車はもう既に出ているだろう。馬車で3時間の道を足でとなると今のこの状態では厳しいな。魔法手紙マジックレターなら速度は遅いが自分が動けない以上それしか方法はない。しかし魔法手紙マジックレターは途中で人に盗られたり動物に獲られたりすることもあるので確実ではない。などと考えていると突然目の前にヒョウ獣人が現れた。

「見つけたぞ雑魚チビが!」

 髪の毛を鷲掴みにされて地面に叩きつけられる。もう追いつかれたのか!

「なんで⋯早すぎる。」
「血の匂いだよ。そして逃げるなら村方面だろうと思ったからな。どうやって檻から出たのかは知らねーが舐めたマネしやがって。」

 鼻血か!〘認識阻害〙は衣服など俺に接している物は対象になるが、落とした場合はその対象から外れる。走っている途中で出てきた鼻血が地面に落ちてしまったのだろう。

「ガキは逃がしたか。だがもうどうでもいいか。」

 ヒョウ獣人は俺を仰向けに倒して馬乗りになり、上着を鋭い爪で引き裂いた。服と一緒に胸から腹にかけて爪で裂かれ、激しい痛みに襲われる。

「安心しな。ポーションは持ってるから奴隷商人に引き渡す前に傷は治してやるよ。」

 ニヤリと加虐的な笑みを浮かべた顔が近付いてきたと思ったらヒョウ獣人は俺の首筋に牙を立てた。恐ろしく鋭い犬歯が肉にぶつりと穴を開けた。

「そのお綺麗ですました顔をぐちゃぐちゃにしてやりたかったんだよ。」

 そう言って傷から出た血を俺の体にぬるりと塗りつけた。
 全身に怖気が走る。

「離せ!」
「お前一閃いっせんつがいなんだって?今ここでお前を犯してやったらあいつはどう思うだろうなぁ?」

 こいつ何考えてんだ!!
 片手を押さえられているがもう片方は動く。素早くベルトにくくりつけている小さな麻袋を掴み、息を止めてヒョウ獣人の目の前で中身をぶち撒けた。麻袋の中身はササメ草の粉末だ。俺が誘拐されたときに使われたときと同じ草を長期保存できるように粉末状にしたもので、呼吸により体内に入れなければ効力は出ない。
 俺は獣人に比べて非力だ。魔力もいつまでも全力で使えるわけではない。それを以前こいつに襲われたときに嫌でも自覚させられた。前回は何もできなかったので対策を立てるのは当然のことだ。
 息を止めてササメ草が効くまで待つ。

「くそっ!」

 ヒョウ獣人は俺の首を掴んで絞めようとしたが、ササメ草の効き目の方が早かったようだ。俺の上でぐったりと倒れて動かなくなった。
 俺はほんのちょっとだけ回復した魔力で風を起こし、その辺りに舞っている粉末を吹き飛ばした。再び魔力は空っぽである。
 息を整えてヒョウ獣人の下から這い出す。ササメ草の効き目は短時間だ。起きてこられると今度こそ抵抗はできない。震える手で何とかヒョウ獣人のズボンのベルトを外し、両手を拘束する。そしてブーツの左右の紐をくくりつけて足を固定する。
 完全に安心はできないが最悪の展開は回避できるだろう。すると途端に先ほどの恐怖が蘇ってきた。噛まれた首筋も、撫でられた胸元も気持ち悪くて仕方がない。今すぐ浄化魔法をかけたいのに欠片も魔力が残っていない。ポーションもないので傷の手当てができず、血が足りなくて目が霞んでくる。
 もしかして俺ここで死ぬのか?
 冒険者をやっている以上、死は身近にある。昨日挨拶を交わした人が今日もいるとは限らない。今まで親しい人がいなかったのでわかっているようで実感していなかった。
 思い出すのはジークとの最後の会話。ジークは俺をつがいだと言った。俺はあのとき驚きすぎて言葉が出てこなかった。そして自分で自分をつがいとしてでしか価値は無いのかと勝手に落ち込んだ。
 違うだろ。
 どう思っているのかをジークに伝えていない。
 現世での後悔が全く生かされていない。現世で俺は自分のことを「THUMUつむの兄」としか価値は無いと思い、家族に気持ちを伝えていなかった。
 獣人にとってのつがいが未だにどんな存在かわからないけれど、強制的に好意を持たされるようなものだろう。でも、つがいだとか関係なくなるくらい俺を好きになってもらう努力はするべきだった。
 ああ、思考が鈍ってくる⋯

「イオ!!!」

 ジークの声がする。幻聴か?

「起きろ!ポーションを飲んでくれ!」

 上半身を持ち上げられる感覚がする。
 これは夢?

「ジーク、ヒョウ獣人クズヤロウは木にくくりつけた。イオくんの容体は?」
「血を流しすぎている。とりあえずポーションを飲ませないと。」

 いや、違う夢じゃない。

「⋯ジーク⋯クリスくんは⋯?」
「イオ!起きたか!落ち人おちびとの少年は保護した。ラーフが付いているから安心しろ。」

 力を振り絞って一刻も早く使えなければ。

「⋯あっちの方向、まっすぐ行くと誘拐犯たちがいる小屋⋯ゴホッ」
「わかった!ロロ頼む。」
「了解!」

 ロロさんが走り去る音がした。

「イオ、とにかくポーションを⋯」
「⋯ジーク、好きだ。」
「え⋯?」
「俺は、ジークのことが好きなんだ。」

 言いたいことは何とか全部言えたとホッと体の力が抜ける。すると口に柔らかい物が押し付けられる感触がしたと思ったら、口内に水分が流れ込んできた。この味はポーションだ。何とか飲み込むと痛みが嘘のように消えていく。
 血を流しすぎたのか頭のフラつきが取れないが、目を開くとジークの顔が目の前にあった。泣きそうで笑いそうな複雑な表情をしたジークから目を離せない。金色の瞳がキラキラしていて綺麗だなと考えているとジークの顔が近付きキスをされた。さっきのポーションは口移しだったのか。え?ファーストキスが口移し?いやでも医療行為みたいなものだし今のキスがファーストキスか?などとどうでも良いことを考えているうちに意識がプツリと途絶えた。

***********************************

(sideジーク)

 騎士団から借りてきた馬は流石と言うべきか、俺たちの無茶な移動に最後まで付いてきてくれた。動物用ポーションを持っていてよかった。
 農家に馬を置かせてもらい、そこから走って移動する。ラーフによる探索で落ち人おちびとの少年を保護し、少年に走って来た方向を聞き出し全速力で向かう。
 イオを見つけたときは心臓が止まるかと思った。顔も体も血に塗れ、ビリビリに破けた服の間から鋭い爪で裂かれた傷跡と首筋に噛み跡が見えた。すぐに意識を確認するが目の焦点が合っていない。それでもイオは力を振り絞って保護した落ち人おちびとの少年と安否と誘拐犯たちの情報を俺たちに伝えた。
 手足を拘束されて意識を失っていたヒョウ獣人はロロがすでに木に縛り付けている。
 もうあいつ殺してもいいかな。

 ロロに指示を出し、とにかくポーションを飲ませないとという思考で頭が一杯になっている中で突然のイオからの告白。頭が真っ白になり気が付いたら口移しでポーションを飲ませていた。嬉しくて嬉しくて泣きそうで言葉が出ない。夢中でイオにキスをした。気が付いたらイオは意識を失っていた。
 しまった、やりすぎた。血をかなり失ったからか、顔色が真っ白だ。ポーションは傷を防ぐ効果はあるが、血を増やすことはできない。

「ジーク、少年はひとまず農家に預けてきました。状況説明を。」

 ラーフが追いついてきた。

「今誘拐犯の元にロロが行っている。イオの怪我はそこのヒョウ獣人クソヤロウだな。ササメ草の残り香がするからすぐ目を覚ますだろう。」

 ズタズタに裂かれたイオの上着をサッと脱がせ、魔法鞄マジックバッグから予備のシャツを出してイオに着せる。やっぱり俺のじゃデカいな。イオと体型の変わらないロロがいたら出してもらうのに。いやダメだ。俺以外の男の服を着せたくない。
 イオに浄化魔法をかけてから野営用毛布を体に巻き付ける。ベッドで休ませてやりたいが、もう少しやることがある。しっかりとイオを抱いてラーフと一緒にロロが向かった先へ進む。
 朽ち果てた小屋の前には既にロロによって制圧され、縛られている獣人たちが並んで転がっていた。

「このフェネック獣人、団長ダンチョーが言ってた奴じゃない?」

 怒り心頭で唸っているのは小太りなおっさんフェネック。特徴は合ってるな。うるさかったからと言ってロロに猿ぐつわを噛ませられている。

「ねーねー尋問は俺がしていーの?」
「いや、国が動いているから勝手にはしない方がいいだろう。ラーフ報告は?」
「移動中に済んでます。馬車も農家まで来るよう手配済みです。」
「ロロ、こいつらの馬車に全員詰め込んどけ。追加の馬車が来たらギルドに戻るぞ。」

 誘拐した落ち人おちびとを運ぶ目的だったであろう馬車には都合よく外から鍵を掛けられるようになっていた。
 どこの冒険者ギルドにも人を隔離する部屋がある。依頼で捕らえた犯罪者を自警団に引き渡すまで一時的に収容したり、大暴れした冒険者の反省部屋として使用されている。もちろん魔法や物理による攻撃にも耐えられるように作られている。ワグナーが戻るまでこいつらはそこにまとめておけばいいだろう。

「あれ?ヒョウ獣人クズヤロウはー?」
「置いていって良いんじゃないか?」
「良いわけないでしょう。回収して然るべき処罰を受けさせるべきです。」
「あいつは2度イオを傷付けた。極刑でも足りないくらいだ。」
「気持ちはわかりますが耐えて下さい。」

 イオを抱き直して気持ちを鎮める。
 いい匂いだ。
 やっと手に入れた。
 俺の唯一。

***********************************

※前話で大慌てのジークはイオに「つがいだ」とは言いましたが「好きだ」とは言っていませんでした。うっかりさん。

※この世界ではいわゆる「転移魔法」はありません。なので移動は全て馬か自力です。
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