【本編完結】落ちた先の異世界で番と言われてもわかりません

ミミナガ

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本編

黒髪黒目の冒険者

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 町に戻って数日経つと周りの人たちの俺に接する態度が変わっていった。
 というのも殺人蜂キラービー討伐方法を俺名義でギルドから発表されたからだ。手に入りやすい素材を使って危険が少なく、蜂蜜と魔石までまとめて採取できる画期的な方法だとギルドに認められた。
 ちなみにナナバモドキに関しては魔力認識の魔法が難しいことと、ナナバモドキの希少価値が下がって値崩れを起こすことが懸念されて発表はされなかった。
 殺人蜂キラービー討伐方法が発表されてから人から話しかけられることが多くなった。それはいつものような脅しではなく「面白い方法だな坊主、やるなぁ~」とか「オレ蜂蜜が大好物なんだよ。この方法使ってみるな!」などと好意的なものばかりだった。
 慣れない対応に少し戸惑ってしまったが、悪い気分ではなかった。
 ただ、中には「ジークさんたちに手伝ってもらったんだろ?さも自分だけの功績かのように振る舞うなんて卑しいやつだな」とわざと聞こえるように話す人もいた。

 SランクパーティメンバーとCランク冒険者が話しているだけで目立つらしく、臨時パーティの件は瞬く間に広まっていった。でも俺はそれを隠そうとは思わなかった。一緒に依頼を受けると決めたからには周りからの反応も受け入れるべきだと思ったからだ。
 変わったことといえばもう一つ、ジークの行動についてだ。ギルドで会うと必ず声をかけてくるのはもちろんのこと、頭を撫でたり後ろから急に抱きついたりとやけにスキンシップが多くなった。尻尾をブンブンと振っている姿は大型犬のようで可愛い。
 いや、自分より遥かにデカい男に言う言葉ではないが。オオカミ獣人なのに人懐こい笑顔で耳付きの頭をグリグリと押し付けられると犬にしか見えない。つい耳と尻尾を触りたくなるが我慢我慢。

********************************

 いつものソロでの活動もしつつ、何度か一緒の依頼をした。彼らと依頼をするときは基本討伐関係だ。
 そこで俺も討伐の練習をさせてもらうことにした。初めて魔獣を討伐したのはスピカさんの新人教育で討伐練習をしたときだった。そしてたまに逃げ切れないときにやむなく討伐をしたことはある。しかし固有スキル〘認識阻害〙が発生してからは一度も魔獣と対峙していない。
 今まで討伐を避けてきたのは素材採取だけでも生活できたことも大きい。あとは日本で平和に過ごしてきた自分という存在を示す最後の砦が、動物に近い魔獣を討伐することにより崩れてしまう気がしたからだ。
 でもジークたちに出会い、この世界に来て初めて楽しいという気持ちを教えてもらった。そこで「ああ、俺はこの世界で生きていくんだな」と心がストンと地に着いた。

 他にも討伐依頼を受けることにした理由はランクアップ試験を受けることにしたからだ。ジークたちと行動するにあたり、やはりCランクのままでは周りもそうだが自分自身も納得ができない。
 Bランクになるための条件は
 ・素材採取20種類以上
 ・Bランクの討伐依頼を10件達成
 ・10種類、50匹以上の魔獣を討伐

 上記内容をクリア後、ギルド職員が討伐依頼に同行してBランクアップの合否が決まる。普通に活動していたらBランクになることは難しくない。だから5年経ってもCランクの俺は人から舐められていたのだ。
 素材採取は既にクリアしているので討伐依頼を中心に動くことにした。

 俺は筋力が少ないので魔法で魔獣の体力を削ってから一撃でトドメを刺すやり方が良いとアドバイスを受けたので、短剣を新調して使い方をジークに教わった。
 手伝ってもらったなどと言われたくないので自分の記録になる討伐依頼はソロのときに受けるようにしている。ちなみに依頼は自分のランクの1つ上下を受ける事ができる。
それでもこそこそ陰口を叩かれることはあるが、意外にも直接言いに来る人はいない。それどころか最近絡まれることがない。
 不思議に思ってはいても、考えてもわからないことは気にしないに限る。

****************************

 最近は懐が非常に潤っているので色々な物を新調した。特に魔法鞄マジックバッグは奮発して容量が大きく、時間停止機能が付いた物にした。ジークたちと行動して時間停止機能の便利さにすっかり虜になってしまった。なければないで問題はなかったはずなのに、知ってしまえばもう戻れなかった。
 その新しい魔法鞄マジックバッグと一緒に野営に必要な道具を買い揃えた。借りてばかりのだったのでこれで自分の道具で野営ができるようになったぞ。さっそく今回の合同依頼で買ったばかりの野営セットを使うことにした。
 テントは自分1人が寝られるくらいの小さくて狭い物だがその分機能性を重視し、防水、防風、強化の魔法がかかっている。防音がないのは外の音が聞こえないと危険が察知できないからだ。ワンタッチタイプで設置も片付けも簡単だ。
 さっそく皆のテントの隣に立てて、中で寝転んでみた。ジークたちの広いテントも心地良いが、この狭さも落ち着く。寝袋も体感温度が一定に保たれる優れものだ。身体に浄化魔法をかけて寝袋の上に寝転んでみる。どこもかしこも新品の匂いでいっぱいだ。

「ぐぅっ、はしゃいでいるイオが可愛い。でももうテントで一緒に寝れないなんて⋯!! でも可愛いっ!」

 テントに夢中になっていたのでジークが嘆いている声は俺には届かなかった。

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 こうして野営に必要な道具も揃ったので、今度は1人の野営に挑戦することにした。
 といっても、通常任務でのソロ野営は見張りがいないのでよっぽど気配に敏感だったり、強さに自信のある人しかしない。俺が目を付けたのはある農家の「月下美人げっかびじん」収穫の手伝いの依頼だった。月下美人は1年に1度、夜にだけ花を咲かせる植物で、その花は薬にも使われる高級素材だ。
 月下美人は宿泊施設のない村に畑があるので、冒険者は野営道具が必須という条件が付く。村の中や道中は魔獣も出ない地域で、取る物が無いので野盗も来ないという平和的な所だ。村の真ん中にとてつもなく大きな一本杉が植えられていて、どこにいても村の位置がわかるようになっている。
 収穫作業は地味な上、ランクも低い依頼なので受ける人が少ないとギルマスが嘆いていたから野営道具が揃ったらやってみようと思っていた。最初はジークも行くと言っていたが、ギルマスに別の依頼を強制受理されていた。
 
 2日に一度、村行きの貸し馬車があるのでそれに乗って村へ向かい、2日後の馬車に乗って帰るという手順になっている。
 ここは魔法の世界ではあるのだが、いわゆる「転移魔法」は存在しない。移動はもっぱら馬か馬車か自分の足だ。
 収穫は滞りなく進んだ。月下美人は夜に咲くので昼夜逆転してしまったが、2日くらい体調にも影響はない。素早く丁寧に収穫していたことが認められて、依頼者に糸の原料となる「綿帽子わたぼうし」収穫の時期になったらそのときも来てくれと言われた。

 帰りの馬車は夕方だったので待つ間は仮眠を取ったり、近場で薬草採取をしてから帰路についた。
 達成依頼金としてはあまり高いものではないが、食料の差し入れなどがあり親切な人ばかりだったのでまた依頼を受けようかな。

 ギルドに着いたのが少し遅い時間だったので受付は空いていた。スピカさんに依頼達成報告と初めて1人で野営をした感想を聞かれたので世間話をしているとギルドの入口の方がざわつき始めた。すると隣の受付にいたお姉さんが席を立ち、入口に向かって走り出した。

「ちょっとそこのあなた!討伐した魔獣の解体は隣の建物なのでここに持ち込まないで下さい!ああ!床に血が⋯!!」

 騒ぎの元となった人は背の高い若い男の冒険者だった。肩に担いでいるのは剣歯虎サーベルタイガーという牙の生えた虎だ。

「ええ?ごめんね。俺まだ小さい魔法鞄マジックバッグしか持ってなくてさ~。すぐあっちに行くね。」

 そう言ってさっと床に浄化魔法をかけていった。それだけで非常に魔力が豊富なんだと感じることができた。

「あの彼はイオが留守のときに他のギルドから移動してきたBランク冒険者だよ。落ち人おちびとだってさ。」
「ああ、確かに黒髪黒目でしたもんね。」

 この世界の人々は多様な髪と目の色を持っていて、黒髪の人も黒目の人も珍しくはないが黒髪黒目は落ち人おちびとにしかいないと言われている。
 俺の髪と目は明るい茶色なのでひと目で落ち人おちびとだと知られたことは一度もない。

「それにしてもBランクで剣歯虎サーベルタイガー討伐ってすごいですね。」
「前のギルド周辺には魔獣が少ないからこっちに移ってきたと言うだけはあるね。」

 高い上背、引き締まった筋肉、目を引く容姿、豊富な魔力。落ち人おちびととは彼みたいな人のことを言うんだろうな。
 
*******************************

 スピカさんに挨拶してギルドを出て、ジークに帰ってきたら必ず訪ねてくれと言われていたので彼らの泊まっている宿に向かう。
 この町1番の高級旅館が彼らの宿泊場だ。何度か入らせてもらったが1部屋がとんでもなく広く、共有スペースと個別の部屋が設けられている。旅館の受付で名を告げ、話は通っていたようで部屋の前まで案内される。ノックをしようと扉に手を伸ばした瞬間にドアが開き、部屋からジークが飛び出してきて抱きつかれた。

「おかえりイオ!依頼お疲れさん!」
「イタタタ!力が!力が強い!!」

 俺の足が浮いちゃってるよ!
 グリグリと頭を押し付けられていたらラーフさんが後ろからジークの頭を思い切り叩いた。

「落ち着きなさいこの駄犬が!」
「⋯すまない。つい力が入ってしまった。」

 耳が!垂れてる!
 大丈夫ですよと言いながら皆で部屋に入ると共有スペースでご飯を食べていたようで、ロロさんが肉を頬張っていた。今更だけど草食動物の獣人でも肉や魚は食べるんだな~。

「イオくんおかえり~ご飯食べた?一緒に食べよー。」
「まだ食べていないので頂きます。」
「イオ、これが美味いぞ。これも食え。」

 ジークさんの給仕により皿いっぱいに食事が盛られた。

********************************

 着々とランクアップへの道は進んでいた。あと1種類かつ3頭の魔獣討伐でギルド職員による試験を受ける資格が得られる。
 今日はジークたちと角摸摸具和ホーンモモンガの討伐をした。動きが素早く、木と木の間を滑空するので動きを止めることに苦戦した。終わったころには俺の魔力はほとんどなくなっていた。
 そろそろ帰ろうかと話しているところでふと森がざわめき始めた。複数の魔獣の気配と大きな魔力の流れを感じたと思ったら突然大きな火柱が上がった。
 急いで現場に向かうと襟巻猿マフラーモンキーの大群の中心に剣で戦いながら魔法を放つ冒険者の姿があった。襟巻猿マフラーモンキーは黒毛の体に襟巻のような真っ白な毛を蓄えている大型犬サイズの猿だ。気性が荒く、鋭い牙と爪を持っているのでとても危険な魔獣だ。群れで行動するのだが、この数は異常だと思うほどの大群だった。

「おい!手助けはいるか!?」

 ジークが声をかける。他の冒険者が依頼中、パーティメンバーではない冒険者が手を出すのはご法度なので必ず許可を得る必要がある。

「頼む!!思ったより数が多い!」

 そう言ったと同時に全員で動く。俺は魔力切れギリギリなので足手まといにならないように弓を射るラーフさんの傍で群れからはぐれた襟巻猿マフラーモンキーを討伐する。魔法がなくても戦う方法を教えてもらっていたのでなんとか討伐できている。ロロさんは足を狙って動ける襟巻猿マフラーモンキーの数を減らしている。
 ジークは冒険者に近付き、背中を合わせて戦い始めた。襟巻猿マフラーモンキーの狙いが彼に集中していたため同じところにいる方が手っ取り早かったからだ。
 そう時間はかからずに全ての襟巻猿マフラーモンキーは緑色の魔石となって地面に転がっていた。

「本当に助かった。ありがとう。」

 小走りにこちらに向かってきた冒険者はあの黒髪黒目の落ち人おちびとの青年だった。

「随分と群れが大きかったようですがなぜでしょうか⋯」
「あ、それは俺が襟巻猿マフラーモンキーの群れのボス同士が戦っているところに出くわしてしまって⋯倍の討伐数が稼げると思ってしまったんです。」
「そのまま討伐を進めるのは無謀としか言えませんね。自分の力を過信し過ぎると死にますよ。」
「ああ、気を付ける。助言ありがとう。俺はハヤト。よろしくな。」

 ハヤトさんはとても爽やかな笑顔でラーフさんの厳しい言葉を素直に受け入れていた。

「なかなか良い動きをしていたな。ランクは?」
「Bランクだよ。お兄さんめっちゃ強かったけどAランク?」
「俺はSランクだ。」
「マジっすか!?すみません!俺2年前に田舎の冒険者ギルドに拾ってもらった落ち人おちびとでして、常識に疎くて⋯お会いできて光栄です。」

 ジークがSランクだと聞いても臆することなく握手を求めてきた。ジークは"握手"の文化は落ち人おちびとにしかないぞと言いながら手を差し出していた。
 Bランクだと言っていたがAランクだと言われても疑わないだろうというほどハヤトさんは強かった。ジークと背中合わせで戦っているときは初対面だと思えないほど息が合っているように見えた。

「やっぱり落ち人おちびとだったんだねー。イオくんと一緒だね。」

 一緒とは?共通点は落ち人おちびとということだけですけど。

「ええ!落ち人おちびとの冒険者と会うのは初めてだ。君はどこの国から?俺は日本っていう国で⋯」

 ハヤトさんが俺の顔を見て動きが止まった。大きな目で凝視されている。え?なに?

「君⋯もしかしてTSUMUつむの兄貴か?」

 なんで⋯
 どうして⋯この人はのことを知っているのだろう?

********************************

イオが冒険者たちに絡まれなくなった理由は後日わかります。
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