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オメガの鑑
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「ああ、やられた。」
「授業中だと防ぎようがないな。てか他のクラスも授業中なのにどうやったんだ?」
少し前からボクの私物が無くなることがあった。最初は消しゴムやペンなど小さい物だったので気のせいかと思ったけれど、授業ノートが無くなったことでこれは故意によるものだと判断。無くなるタイミングは放課後の時間帯だったので物を全て持ち帰ることで防いでいたのだが、今回は体育の授業のため教室を離れたタイミングで下敷きを盗られた。雅がボクに似ていると黒いコーギーのイラストの下敷きをくれて気に入っていたからさすがに頭にきた。
「ねぇ拓司、防犯カメラの設置はダメだったんだよね。」
「ああ、犯人以外の生徒も映るから肖像権の問題で許可が下りなかった。」
名家の子息子女も多く通っているからこれは仕方がない。でもこの窃盗事件、実は心当たりはあったりする。
*****************************
「こんなこともできないなんて、オメガとしてどうなの?って感じだよねー。」
クスクスと笑いながらボクにあえて聞こえるように会話しているのは同じオメガクラスの京橋咲音くんだ。クラスに5人いる男子オメガの内の1人で、休み時間になるたびに他クラスの男子生徒が彼を囲んで楽しくお喋りをしている。
今は家庭科の授業が終わった休み時間なのだが、ボクは授業中に課題を仕上げられなかったので休み時間中に終わらせるためにせっせと続きをしている。課題内容はボタン付けとワンポイントのアップリケを付けること。裁縫は苦手なので縫い目がガタガタだ。
その四苦八苦しているボクに先ほどの京橋くんからの「オメガとしてどうなの」発言だ。
「サキは小さいころからオメガ教育を受けてきたんだろ?オメガの鑑だね。」
「京橋家の一員として当然のことだよ。」
「料理も裁縫も完璧だしね。理想のオメガだよ。」
「少しやれば誰だってできるものだよ。」
「サキ、今日の習い事は華道?」
「華道は明日。今日は茶道だよ。やっと家元に手習いの許可が下りたんだ。」
京橋くんは毎日周りの男子生徒と話しながら自己アピールを欠かさない。隣の雅が「なにが理想のオメガだ。考えが古臭いよ。」とボクと同じく不格好になった裁縫の課題を諦めるように机に置いた。
「どんなことも小さいころから続けることは大変なことだよと思うよ」
「そうかもしれないけどさー。マウント取られるとムカつく!」
「マウントだったんだ。」
「自分は完璧なオメガだっていう自慢してるじゃん。」
「ふーん。」
完璧なオメガかぁ。理想はあってもいいけど人に強要するものじゃないよなぁ。確かに京橋くんは勉強ができて、習い事も沢山していて、とても可愛いのでいつでも周りに人が集まっている。
そしてなぜかいつもボクに当たりがキツい。周りの生徒と一緒になってちくちくとイヤミを言われる。証拠はないが物を取られると嫌がらせの心当たりと言えばこの人たちだけなんだよな~。別にあまり気にしていないけれど嫌われる理由が思い当たらない。まぁ、人が人を嫌いになる理由なんて大なり小なり存在する。全ての人に好かれるということはあり得ない。
だから自分のことを好きだと言ってくれる人を全力で大切にすれば良いとボクは知っている。だから拓司から「静哉くんに何とかしてもらうか?」と言われたがそれは遠慮した。物が無くなることは困るが、ボクを嫌っている人に静哉くんの労力を割いてほしくなかったからだ。
でもボクもこのままの状態でいるつもりはないので、拓司に動いてもらうことにした。「俺の労力は使ってもいいのかよー」と言っていたがボクの護衛なんだから当たり前でしょ?お小遣いという名のお給料をもらってることは知ってるんだからね。
「ところで雅、昼休みは屋上?」
「ううん、今日は裏庭。先輩が4時間目が体育だから購買のプリンを買ってくれるらしくて。」
「あの数量限定で競争率が恐ろしく高いプリンを?」
「うん、体育館から直接行けるから買ってきてくれるんだって。楽しみー。」
治安の悪い先輩こと宮永虎次先輩は着々と雅を餌付けしていっているようだ。
最初は泣き叫んでいた雅だが、今では昼休みに自分から先輩のところに行っている。
「それでね、このまえ先輩の家に行ったんだけど、猫だらけの猫屋敷だった。」
「もう家に行ったの?」
「猫カフェみたいで楽しかったからまた連れてってもらうんだー。」
「先輩の家ってご実家?」
「うん、すごいお屋敷だよ。自宅に日本庭園がある家なんて初めて見た。それで先輩のお兄さんとかに"お家の人の分も"ってお菓子の詰め合わせをいっぱいもらっちゃった。」
「お菓子メーカーの家だからねぇ。」
めっちゃ外堀埋められてるー。
まぁ、雅が嫌がってなければいいや。
*****************************
とりあえず情報収集からだね。ふむふむ、京橋咲音は不動産関係の社長の三男。長男はアルファで、すでに京橋グループに就職。ベータの次男は静哉くんと一華ちゃんと同じ大学の4年生。学部は違うから顔見知りかどうかはわからない。
京橋くんといつも一緒にいるのは安藤、馬場、篠原の3人。面倒だから取り巻ABCと呼ぼう。彼らは京橋グループの子会社の社員を親に持つ全員Dクラスのベータだ。
しばらくは表面上何もしていないように見せながら過ごしていたら、ついに動きがあった。靴箱に「今日の放課後体育倉庫裏に来い」というメッセージが書かれたメモが入っていたのだ。ボクはそれを無視した。
いや、だってその日は静哉くんとパンケーキを食べに行く約束をしていたからね。ボクの優先順位は静哉くん。1番も2番もない。その後、特に動きはなかったから少し油断していた。
天気の良い休日の昼間に雅からメッセージが届いた。スマホのアプリを開くと椅子にロープでグルグル巻きに固定されて口にテープを貼られ、怯えた顔をした雅の写真と「◯◯の工事現場に1人で来い」という一文だった。
****************************
お菓子メーカー重役双子おじ様の苗字を「飯永」→「宮永」に変更しました。
理由は雅の苗字の「飯塚」と"飯"の字が被ってややこしくなってしまったからです。
その場限りのモブ社員のつもりだったので名付けが適当すぎました。
「授業中だと防ぎようがないな。てか他のクラスも授業中なのにどうやったんだ?」
少し前からボクの私物が無くなることがあった。最初は消しゴムやペンなど小さい物だったので気のせいかと思ったけれど、授業ノートが無くなったことでこれは故意によるものだと判断。無くなるタイミングは放課後の時間帯だったので物を全て持ち帰ることで防いでいたのだが、今回は体育の授業のため教室を離れたタイミングで下敷きを盗られた。雅がボクに似ていると黒いコーギーのイラストの下敷きをくれて気に入っていたからさすがに頭にきた。
「ねぇ拓司、防犯カメラの設置はダメだったんだよね。」
「ああ、犯人以外の生徒も映るから肖像権の問題で許可が下りなかった。」
名家の子息子女も多く通っているからこれは仕方がない。でもこの窃盗事件、実は心当たりはあったりする。
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「こんなこともできないなんて、オメガとしてどうなの?って感じだよねー。」
クスクスと笑いながらボクにあえて聞こえるように会話しているのは同じオメガクラスの京橋咲音くんだ。クラスに5人いる男子オメガの内の1人で、休み時間になるたびに他クラスの男子生徒が彼を囲んで楽しくお喋りをしている。
今は家庭科の授業が終わった休み時間なのだが、ボクは授業中に課題を仕上げられなかったので休み時間中に終わらせるためにせっせと続きをしている。課題内容はボタン付けとワンポイントのアップリケを付けること。裁縫は苦手なので縫い目がガタガタだ。
その四苦八苦しているボクに先ほどの京橋くんからの「オメガとしてどうなの」発言だ。
「サキは小さいころからオメガ教育を受けてきたんだろ?オメガの鑑だね。」
「京橋家の一員として当然のことだよ。」
「料理も裁縫も完璧だしね。理想のオメガだよ。」
「少しやれば誰だってできるものだよ。」
「サキ、今日の習い事は華道?」
「華道は明日。今日は茶道だよ。やっと家元に手習いの許可が下りたんだ。」
京橋くんは毎日周りの男子生徒と話しながら自己アピールを欠かさない。隣の雅が「なにが理想のオメガだ。考えが古臭いよ。」とボクと同じく不格好になった裁縫の課題を諦めるように机に置いた。
「どんなことも小さいころから続けることは大変なことだよと思うよ」
「そうかもしれないけどさー。マウント取られるとムカつく!」
「マウントだったんだ。」
「自分は完璧なオメガだっていう自慢してるじゃん。」
「ふーん。」
完璧なオメガかぁ。理想はあってもいいけど人に強要するものじゃないよなぁ。確かに京橋くんは勉強ができて、習い事も沢山していて、とても可愛いのでいつでも周りに人が集まっている。
そしてなぜかいつもボクに当たりがキツい。周りの生徒と一緒になってちくちくとイヤミを言われる。証拠はないが物を取られると嫌がらせの心当たりと言えばこの人たちだけなんだよな~。別にあまり気にしていないけれど嫌われる理由が思い当たらない。まぁ、人が人を嫌いになる理由なんて大なり小なり存在する。全ての人に好かれるということはあり得ない。
だから自分のことを好きだと言ってくれる人を全力で大切にすれば良いとボクは知っている。だから拓司から「静哉くんに何とかしてもらうか?」と言われたがそれは遠慮した。物が無くなることは困るが、ボクを嫌っている人に静哉くんの労力を割いてほしくなかったからだ。
でもボクもこのままの状態でいるつもりはないので、拓司に動いてもらうことにした。「俺の労力は使ってもいいのかよー」と言っていたがボクの護衛なんだから当たり前でしょ?お小遣いという名のお給料をもらってることは知ってるんだからね。
「ところで雅、昼休みは屋上?」
「ううん、今日は裏庭。先輩が4時間目が体育だから購買のプリンを買ってくれるらしくて。」
「あの数量限定で競争率が恐ろしく高いプリンを?」
「うん、体育館から直接行けるから買ってきてくれるんだって。楽しみー。」
治安の悪い先輩こと宮永虎次先輩は着々と雅を餌付けしていっているようだ。
最初は泣き叫んでいた雅だが、今では昼休みに自分から先輩のところに行っている。
「それでね、このまえ先輩の家に行ったんだけど、猫だらけの猫屋敷だった。」
「もう家に行ったの?」
「猫カフェみたいで楽しかったからまた連れてってもらうんだー。」
「先輩の家ってご実家?」
「うん、すごいお屋敷だよ。自宅に日本庭園がある家なんて初めて見た。それで先輩のお兄さんとかに"お家の人の分も"ってお菓子の詰め合わせをいっぱいもらっちゃった。」
「お菓子メーカーの家だからねぇ。」
めっちゃ外堀埋められてるー。
まぁ、雅が嫌がってなければいいや。
*****************************
とりあえず情報収集からだね。ふむふむ、京橋咲音は不動産関係の社長の三男。長男はアルファで、すでに京橋グループに就職。ベータの次男は静哉くんと一華ちゃんと同じ大学の4年生。学部は違うから顔見知りかどうかはわからない。
京橋くんといつも一緒にいるのは安藤、馬場、篠原の3人。面倒だから取り巻ABCと呼ぼう。彼らは京橋グループの子会社の社員を親に持つ全員Dクラスのベータだ。
しばらくは表面上何もしていないように見せながら過ごしていたら、ついに動きがあった。靴箱に「今日の放課後体育倉庫裏に来い」というメッセージが書かれたメモが入っていたのだ。ボクはそれを無視した。
いや、だってその日は静哉くんとパンケーキを食べに行く約束をしていたからね。ボクの優先順位は静哉くん。1番も2番もない。その後、特に動きはなかったから少し油断していた。
天気の良い休日の昼間に雅からメッセージが届いた。スマホのアプリを開くと椅子にロープでグルグル巻きに固定されて口にテープを貼られ、怯えた顔をした雅の写真と「◯◯の工事現場に1人で来い」という一文だった。
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お菓子メーカー重役双子おじ様の苗字を「飯永」→「宮永」に変更しました。
理由は雅の苗字の「飯塚」と"飯"の字が被ってややこしくなってしまったからです。
その場限りのモブ社員のつもりだったので名付けが適当すぎました。
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