私の邪悪な魔法使いの友人2

ロキ

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シーズン2 私の邪悪な魔法使いの友人の弟子

第三章 17)光の瞬く強さ

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 ようやくプラーヌスのお出ましだった。それで部屋の空気が一瞬にして変わった。
 本当にそれはもう驚くほどの激変であった。
 沈みかけていたアリューシアの表情がパッと明るくなる。プラーヌスが約束を守ってくれたので、ホッとしたのだろう。
 ニヤニヤ笑っていたカルファルも緊張した表情をした。オロオロとしていたシュショテも、きりっとした顔でプラーヌスを見上げる。
 そして私の気分もガラリと変わる。

 「シャグラン、無駄に大きな部屋だ。魔法の指導など、机が置けるくらいの広さで充分だぞ。別にここで戦いの訓練をするわけでもない。君はまだ魔法について何もわかっていないな」

 プラーヌスは黒いローブの裾をはためかせながら、こちらに近づいてくる。

 「そ、そうなのかい? じゃあ、明日から別の部屋にしよう」

 魔法の指導だというので、何かを燃やしたり壊したりするものだと私は思い込んでいたのだ。小ぢんまりとした部屋よりも、天井の高い場所のところがいいと思い、ここにしたのである。

 「それと机と椅子も用意しておく必要があるだろうね。時間がない。じゃあ、さっそく始めるか」

 プラーヌスはカルファルのほうにちらりと視線を向けたが、しかしてすぐに視線を逸らした。
 彼に出て行けと申し渡すのかと思いきや、何も言わずに淡々と何かの準備を始める。
 どうやらプラーヌスは、彼の存在を無することにしたようだ。

 「えーと、君、ガルディアンを呼び出せ。当然、契約しているだろ?」

 プラーヌスは手の平よりも少し大きいサイズの水晶玉を床に置き、手に持っていた石盤に何か書き始める。
 以前にも見たことがある。これは彼が魔界とコミュニケーションを取るときのスタイルだ。
 当然のことかもしれないが、プラーヌスもそれなりに本気で、アリューシアの指導をしてあげようとしているようだ。私はそれが少し嬉しくなった。

 「は、はい!」必要以上に大きな声で返事して、アリューシアも床に置いた水晶玉の前で作業を始めた。
 これは本当に机が必要のようだ。アリューシアは床にぺたりと座り、石盤を手に取って、そこに何か書き始めた。せっかくのきれいなドレスの裾が床に広がる。

 「『黒い兎』で設定してくれ。この水晶玉で君のガルディアンを見たい。それにこの方法ならば宝石は必要ない。この塔の力で魔族と交信する」

 「あ、はい」

 黒い兎とは何か暗号のようなものなのだろう、アリューシアがその設定を終えたからなのか、プラーヌスの水晶玉がゆっくりと点滅を始めた。

 「来た。これが君のガルディアンか。驚いたね、あまりにレベルが低過ぎて」

 プラーヌスはアリューシアを心の底から蔑むように見た。

 「そ、そうですか・・・」

 アリューシアだって多少はプラーヌスの性格は知っているはずで、厳しい言葉を浴びせかけられるのは覚悟していたようである。
 しかしその予想を越えたのだろうか、彼女はひどく気落ちしたような表情をした。

 「昨日、君が書いたという魔法のコードも読んだ。あれも酷かったけど、このガルディアンも酷いものだ。コードを書くセンスはないから、実践向きなタイプの魔法使いかと思ったけど、違ったね。シュショテ!」

 プラーヌスがあの少年を呼んだ。
 部屋の隅っこでオドオドとしていたシュショテであったが、プラーヌスが部屋に入ってきてから、そろりそろりとこちらに近づいてきていた。
 シュショテも彼からの呼び掛けに「はい!」と大声で返事する。

 「君のガルディアンを見せてやれ」

 「は、はい!」

 シュショテも自前の水晶玉と石盤を持って、アリューシアがやっていたような作業に打ち込み始める。
 その間、プラーヌスは本物の教師のような口調で話し始めた。

 「魔法使いの価値を決める指標は、いくつかある。魔法のコードを自分で書けることは、重要な能力だろう。それが出来れば、独自のコードを発明することも可能だ。そういう魔法使いは貴重。しかしそれは本当に特別なことだ。上級レベルの魔法使いでも、自分でコードを書くことにこだわらない者は多い」

 シュショテのガルディアンも、水晶玉に映ったようだ。
 それを見て、プラーヌスは満足げな表情になる。ほらね、凄いだろ? 

 「とにかく強力な魔法を使うことが出来る魔法使いが尊ばれる。それを決めるのが、ガルディアン契約をした魔族のレベルだ。魔法使いになったからには、出来るだけレベルの高い魔族を見つけ、契約を取り結ぶ必要がある」

 無駄にだだ広い部屋の中に、強烈な光が瞬き始めていた。
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