7 / 58
1廃墟
#7
しおりを挟む
消滅を始めた異形を背にワカとクロエが対峙していた。
「……大事な話ってなんだよワカちゃん。もう異形も倒したし第1話完!じゃないのか?」
「そうもいかないんですよクロエさん。たすけりょうごまえんえんです」
「え?」
「……聞こえませんでしたか?助け料50000円ですっ!!」
「はぁ!?ふざけんな!!金取るの!?」
クロエはワカの意外な要求に声が裏返っしてしまう。
「はい、先ほどの働きに対する正当な対価を要求します!」
「……ワカちゃん、その金額はどういう計算なんだ?」
「えっとですね、まずクロエさんの手取りが20万円として日割りで約6700円、時給換算で約830円……」
「おい待て!計算おかしくないか!!?」
「そして私はこの戦闘において、約5分近くも動き回りました。つまり私の労働時間は約300秒弱ですから、1秒あたり約170円の労働報酬を請求します!!」
「やめろ!!その計算絶対間違ってるだろ!!!」
クロエの抗議にワカはハァとため息をつくと
「……仕方ありませんね、上で助けてくれたお礼に相殺しますよ。助け料0円です。さっきは助けてくれてありがとうございます」
と一方的に話を纏めた。
「最初からそう言っとけよ……何なんだ一体」
と、スーツのポケットから何かの塊をゴソゴソと取り出すワカ。直径約7cm 方喰(かたばみ)の葉ような形に山吹色の波紋の模様が入った物体……異形の「核」だ。
「はい、これ」と「核」を差し出すワカ
クロエが「!?ワカちゃん、それ!!」と驚きの声を上げる。
「さっき拾ったんです、無傷の「核」は大変貴重で専門的なことはともかく「病院」に持って行けば高額で買い取ってくれるって聞きました……そこでクロエさんにお願いがあります。これを無償でお譲りするのでしばらくの間泊めて欲しいのです」
「はぁ!?いきなりなに言ってんの!?」
「掃除に洗濯……家事は出来ませんけど……わたし頑張ります♪」
「出来ねえのかよ!」
笑顔で答えるワカにツッコミを入れたクロエは面倒そうに
暫く考え込むと
「うん……いいぜ」
と了解の返事をした。
「案外すんなりとOKするんですね、もっとこう……居住許可証を見せろ~ぐへへ、って感じのこといわれるかと思ってました」
と意外そうな表情を浮かべるワカ。
「だってどうせ断っても無駄なんだろう?それに……」
「それに?」
と言葉を濁すクロエ
「いや、なんでもない……とにかく上に戻るぜ」
こうして二人は地下30mの地下シェルターから地上へと戻っていった。
ヨウヤくアエた…コのヒトノわワタしノ…… アノトキかラズットミテイタ……
「ん?何か言ったか?」
「いえ何も」
「そっか」呟くクロエ 、来たときと同じ破れたシャッターをくぐると、外は夕方になっていた。
何処ともしれない場所で少女のような物体が身じろぎした。
物体と呼ぶのは人としてあまりに身体が壊れすぎていたからだ。肉が削げ骨の覗くスラッとした手足はおかしな方向にねじ曲がり、割けてはいたが均整の取れた下腹からはビチャビチヤと黒い液体を滴らせた少女のような物体は首を巡らせ呻き声をあげた。
ふんふん、それでそれで?」
地上に戻った二人は、公園に無断駐車しておいたクロエの猟用バンに乗り込むと市街地を離れ廃都市の南東、台地の上に広がる「病院」へ向かって走らせた。
運転はクロエが行い、助手席でワカは車窓の景色を眺めている。
季節は春、道路脇の昔の観光地跡にはあちこち桜が咲いている。
「ところでワカちゃん。何であんな所にいたの?」
「ヒミツです。それにしてもクロエさんはしつこいですね、その質問はもう7度目です、そんなにしつこいと嫌われますよ、わたしに」
「……もしかして……家出……とか?」
「ノーコメントです!」
道すがら聞いた話にによると、ワカの年齢は12才、フルネームはアンザガワ ワカ、漢字で書くと安座川に古今和歌集とかの和歌……らしい。変な名前……とクロエは思ったが口には出さなかった。
年の割に博学で会話は弾んで少し打ち解けられた気がするがこの質問になると決まってこの調子だった。終いには「しつこいですね、その質問意味あります?」と冷たい視線で睨まれてしまった。年下の子に嫌われると少しへこむ……
「ところでクロエさん」
「ん?」
「先刻の意味不明な行動は何だったんです?何故脱いだんですか?もしかして読者サービスのつもりですか?投稿小説は文字媒体なので絵が見えませんよ?」
ワカの疑問に答えるクロエ。
「ちげーよ、タンクがあっただろ?あれに一発撃ち込んで異形ごとまとめてドカンと吹っ飛ばそうと思ったんだ」
「……」
クロエのかなり無理のあるプランに呆れてワカが辛辣なコメントを寄越そうとした時……
舗装のヒビ割れた道路の前方、K大への出入口のひとつAゲートのいつみても不自然に小綺麗な建物が見えてきた。
K医科大学病院、通称「K大」
このT市を中心に周辺地域の奇病患者の対応、並びに発生した異形の研究、駆除を担う国立法人だ。
20年前の「奇病の大流行」以降、このT市の行政機関としての役割も担っており、その地上20階、地下7階建ての円柱形の本棟を中心に大庄様々な関連施設が、廃墟となった旧T市市街地の南東に面した台地の上に立ち並んでいる。
広義にはこの台地にあるK大周辺の街全域を含めてK大と言えた。
ゲートの守衛所にはいつものように「スーツ」を着た若い男二人が歩哨に立っていた。
クロエがウィンドウをおろして通行許可証を見せると
「お疲れ様です、ノラモトさん」
と若い男の一人シゲルが言った。クロエはこの男のフルネームを知らない。
「ありがと」
クロエは営業スマイルで答えた。シゲルの顔にも愛想笑いのようなものが浮かんだ。
「同乗者の方は誰です?どうしてそんな古いスーツを……?」
「同乗者の方は誰です?どうしてそんな古いスーツを……?」
シゲルの双子の兄シゲオがすかさず訊いた。
「ちょっと事情があってね」
「ちょっと事情があってね」
クロエは答えながら、さりげなく隣のシートに座るワカを見た。ワカは黙って窓の外を見つめている。
「ああ……」クロエは肩をすくめた。
「まあ色々あんだよ色々」
「そうですか」
シゲオはまだ何か言いたそうだったがそれを制してシゲルが
端末から通行許可をピッと出した。
「お気をつけて」
「あはは……ども~」
二人を乗せたバンはゆっくりと動き出した。
「……大事な話ってなんだよワカちゃん。もう異形も倒したし第1話完!じゃないのか?」
「そうもいかないんですよクロエさん。たすけりょうごまえんえんです」
「え?」
「……聞こえませんでしたか?助け料50000円ですっ!!」
「はぁ!?ふざけんな!!金取るの!?」
クロエはワカの意外な要求に声が裏返っしてしまう。
「はい、先ほどの働きに対する正当な対価を要求します!」
「……ワカちゃん、その金額はどういう計算なんだ?」
「えっとですね、まずクロエさんの手取りが20万円として日割りで約6700円、時給換算で約830円……」
「おい待て!計算おかしくないか!!?」
「そして私はこの戦闘において、約5分近くも動き回りました。つまり私の労働時間は約300秒弱ですから、1秒あたり約170円の労働報酬を請求します!!」
「やめろ!!その計算絶対間違ってるだろ!!!」
クロエの抗議にワカはハァとため息をつくと
「……仕方ありませんね、上で助けてくれたお礼に相殺しますよ。助け料0円です。さっきは助けてくれてありがとうございます」
と一方的に話を纏めた。
「最初からそう言っとけよ……何なんだ一体」
と、スーツのポケットから何かの塊をゴソゴソと取り出すワカ。直径約7cm 方喰(かたばみ)の葉ような形に山吹色の波紋の模様が入った物体……異形の「核」だ。
「はい、これ」と「核」を差し出すワカ
クロエが「!?ワカちゃん、それ!!」と驚きの声を上げる。
「さっき拾ったんです、無傷の「核」は大変貴重で専門的なことはともかく「病院」に持って行けば高額で買い取ってくれるって聞きました……そこでクロエさんにお願いがあります。これを無償でお譲りするのでしばらくの間泊めて欲しいのです」
「はぁ!?いきなりなに言ってんの!?」
「掃除に洗濯……家事は出来ませんけど……わたし頑張ります♪」
「出来ねえのかよ!」
笑顔で答えるワカにツッコミを入れたクロエは面倒そうに
暫く考え込むと
「うん……いいぜ」
と了解の返事をした。
「案外すんなりとOKするんですね、もっとこう……居住許可証を見せろ~ぐへへ、って感じのこといわれるかと思ってました」
と意外そうな表情を浮かべるワカ。
「だってどうせ断っても無駄なんだろう?それに……」
「それに?」
と言葉を濁すクロエ
「いや、なんでもない……とにかく上に戻るぜ」
こうして二人は地下30mの地下シェルターから地上へと戻っていった。
ヨウヤくアエた…コのヒトノわワタしノ…… アノトキかラズットミテイタ……
「ん?何か言ったか?」
「いえ何も」
「そっか」呟くクロエ 、来たときと同じ破れたシャッターをくぐると、外は夕方になっていた。
何処ともしれない場所で少女のような物体が身じろぎした。
物体と呼ぶのは人としてあまりに身体が壊れすぎていたからだ。肉が削げ骨の覗くスラッとした手足はおかしな方向にねじ曲がり、割けてはいたが均整の取れた下腹からはビチャビチヤと黒い液体を滴らせた少女のような物体は首を巡らせ呻き声をあげた。
ふんふん、それでそれで?」
地上に戻った二人は、公園に無断駐車しておいたクロエの猟用バンに乗り込むと市街地を離れ廃都市の南東、台地の上に広がる「病院」へ向かって走らせた。
運転はクロエが行い、助手席でワカは車窓の景色を眺めている。
季節は春、道路脇の昔の観光地跡にはあちこち桜が咲いている。
「ところでワカちゃん。何であんな所にいたの?」
「ヒミツです。それにしてもクロエさんはしつこいですね、その質問はもう7度目です、そんなにしつこいと嫌われますよ、わたしに」
「……もしかして……家出……とか?」
「ノーコメントです!」
道すがら聞いた話にによると、ワカの年齢は12才、フルネームはアンザガワ ワカ、漢字で書くと安座川に古今和歌集とかの和歌……らしい。変な名前……とクロエは思ったが口には出さなかった。
年の割に博学で会話は弾んで少し打ち解けられた気がするがこの質問になると決まってこの調子だった。終いには「しつこいですね、その質問意味あります?」と冷たい視線で睨まれてしまった。年下の子に嫌われると少しへこむ……
「ところでクロエさん」
「ん?」
「先刻の意味不明な行動は何だったんです?何故脱いだんですか?もしかして読者サービスのつもりですか?投稿小説は文字媒体なので絵が見えませんよ?」
ワカの疑問に答えるクロエ。
「ちげーよ、タンクがあっただろ?あれに一発撃ち込んで異形ごとまとめてドカンと吹っ飛ばそうと思ったんだ」
「……」
クロエのかなり無理のあるプランに呆れてワカが辛辣なコメントを寄越そうとした時……
舗装のヒビ割れた道路の前方、K大への出入口のひとつAゲートのいつみても不自然に小綺麗な建物が見えてきた。
K医科大学病院、通称「K大」
このT市を中心に周辺地域の奇病患者の対応、並びに発生した異形の研究、駆除を担う国立法人だ。
20年前の「奇病の大流行」以降、このT市の行政機関としての役割も担っており、その地上20階、地下7階建ての円柱形の本棟を中心に大庄様々な関連施設が、廃墟となった旧T市市街地の南東に面した台地の上に立ち並んでいる。
広義にはこの台地にあるK大周辺の街全域を含めてK大と言えた。
ゲートの守衛所にはいつものように「スーツ」を着た若い男二人が歩哨に立っていた。
クロエがウィンドウをおろして通行許可証を見せると
「お疲れ様です、ノラモトさん」
と若い男の一人シゲルが言った。クロエはこの男のフルネームを知らない。
「ありがと」
クロエは営業スマイルで答えた。シゲルの顔にも愛想笑いのようなものが浮かんだ。
「同乗者の方は誰です?どうしてそんな古いスーツを……?」
「同乗者の方は誰です?どうしてそんな古いスーツを……?」
シゲルの双子の兄シゲオがすかさず訊いた。
「ちょっと事情があってね」
「ちょっと事情があってね」
クロエは答えながら、さりげなく隣のシートに座るワカを見た。ワカは黙って窓の外を見つめている。
「ああ……」クロエは肩をすくめた。
「まあ色々あんだよ色々」
「そうですか」
シゲオはまだ何か言いたそうだったがそれを制してシゲルが
端末から通行許可をピッと出した。
「お気をつけて」
「あはは……ども~」
二人を乗せたバンはゆっくりと動き出した。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
義姉妹百合恋愛
沢谷 暖日
青春
姫川瑞樹はある日、母親を交通事故でなくした。
「再婚するから」
そう言った父親が1ヶ月後連れてきたのは、新しい母親と、美人で可愛らしい義理の妹、楓だった。
次の日から、唐突に楓が急に積極的になる。
それもそのはず、楓にとっての瑞樹は幼稚園の頃の初恋相手だったのだ。
※他サイトにも掲載しております
せんせいとおばさん
悠生ゆう
恋愛
創作百合
樹梨は小学校の教師をしている。今年になりはじめてクラス担任を持つことになった。毎日張り詰めている中、クラスの児童の流里が怪我をした。母親に連絡をしたところ、引き取りに現れたのは流里の叔母のすみ枝だった。樹梨は、飄々としたすみ枝に惹かれていく。
※学校の先生のお仕事の実情は知りませんので、間違っている部分がっあたらすみません。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
春に狂(くる)う
転生新語
恋愛
先輩と後輩、というだけの関係。後輩の少女の体を、私はホテルで時間を掛けて味わう。
小説家になろう、カクヨムに投稿しています。
小説家になろう→https://ncode.syosetu.com/n5251id/
カクヨム→https://kakuyomu.jp/works/16817330654752443761
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる