灰墟になった地方都市でペストコントロールやってます 世界に必要な3つのこと (仮)

@taka29

文字の大きさ
34 / 58
4 デイオフ

#2β

しおりを挟む
T大裏門を警備している職員は荒くれ者が多い。発足当初は兎も角、現在では専門知識の多い所謂『院テリヤクザ』と呼ばれている集団や条約軍の帰還兵ばかりなのだ。
(またあの嬢ちゃん来てらァ。上からはあの子供は顔パスにしろって指示を受けてるんだよな……)
その日の彼女は同い年(友人か?)くらいの女の子と最新モデルのe-バイク、所謂電気自転車を引いて現れたのだった。

そして例のごとく警備員に挨拶しようと近づいてくるのだが突然、ガシャン!けたたましい音を立て彼女は2040年最新モデルの自転車を倒してしまった。その警備員はまだキャリアが浅い為、彼女の正体をよく知らなかった。

(うぐぅ!)
咄嗟に駆け寄った警備員を突然の目眩が襲った。警備員の顔目掛けてオソレが袖口から謎の赤い霧を吹き付けたのだ。赤い霧は神経ガスの一種だった。彼の意識が混濁し始める。
(……か……身体が全く動かねぇぞ……!おいアンタら何をする気…….)
そこで男の意識は完全に喪失した。

「無用心、無用心♪」
オソレが楽しそうに笑う。
「もし一緒に来なかったら、わたしにも使うつもりだった?その赤い煙」と、ワカが愚痴ると
「勿論ですわ!」とオソレは本当に楽しそうに応じる。
そして、だって……、と言葉を紡ぎかけ、気を取り直した
のか、さて……それじゃあ、始めましょうか、と何事も無かったかのようにそう告げるのだった。
オソレと倒れた男を交互に一瞥してからワカも「そうですね」と応じた。

二人とも表情を変えず淡々と作業を済ませていく。
T大の市民は一人に一つID番号が割り振られていて公共施設の利用や電子決済にも使えて結構便利なんですがこれが問題なんですわ。
「問題、とは?」ワカが訊ねると、「よく考えてみてください」とオソレ。
「あなた戸籍謄本はお持ちかしら? 」……ああなるほど。そういうこと。
「そう、T市の住民登録をしていない俗物は当然住民票もありませんし、納税も年金も医療保険も加入できないわけです。そしてID認証出来ない物体が平時にゲートを通過するとどうなると思いまして?」……そりゃあ鳴りますね、警報。
「警報だけではありません!おじいちゃんにバレてしまいますわ~」

(…んごご)
その時、意識を失っていた警備員が目を覚まそうとしていた。するとオソレがすかさず懐から取り出した鯨のマークが刻まれた金属製のカードを警備員の腕輪端末に翳す。軽い電子音と共に腕輪が警備員の腕から外れる。
これを着けろ……と?ワカが不思議そうな顔をすると。
「コレを着けないと、警備室へ連れていかれますわよ。そのあとは、わかりますでしょう?」
確かに、と納得しオソレから渡されたそれを、ワカはしぶしぶ腕に装着する。

「これは【WATCH】という機械ですわ、急に説明したくなったので移動がてら少し話をさせていただきますけど……」
それは腕時計型の情報端末で、使用目的は主に2つありますの。1つが先ほど言った身分証明とウォレット機能。もう1つが、これ、GPSによる位置特定機能ですわ。(なぜ、そんな機能を?)ええ、実は駆除作業中に行方不明になった職員を見つけるのに役に立つのですわ。
でも、まさか……、ワカが何か言いかけたところで、オソレは遮るように言葉を重ねる。
「えぇ、お察しの通り、今回みたいに、誰かが人為的に特定の職員を拉致して、監禁したりすれば、居場所が一発でわかってしまうんです。職員が行方不明になれば、自動的に捜索班が結成されますから。しかし逆に言えば……」
そこで、一旦言葉を区切るオソレ。
「登録情報を初期化してしまえば捜査対象から外れてしまうんですよ。……それに、この手合いの仕事に慣れている輩共にとって都合が良いことも沢山ありますからね。例えば……」

オソレはワカを連れ、ゲート脇、洗浄棟の通路を更衣室へ進んでいく。
途中ですれ違う人々の視線がちらちらとワカに注がれていることに気付きながらもオソレは気にせず歩を進める。
(もしかしてT大って警備態勢ガバガバの無能組織では?)
ある意味正解を言い当てたワカの問いに応じることなく
唐突に目を細めて無言で振り向いたオソレはワカの手を握りしめる。
「……ほら、着きましたわ」
そこには白地に黒い文字で味気なくロッカールーム、と表札がかかっていた。
「ところであなた……新型『スーツ』は初めてですか?」
オソレはそう言って微笑み、ドアノブに白い指をかけた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

義姉妹百合恋愛

沢谷 暖日
青春
姫川瑞樹はある日、母親を交通事故でなくした。 「再婚するから」 そう言った父親が1ヶ月後連れてきたのは、新しい母親と、美人で可愛らしい義理の妹、楓だった。 次の日から、唐突に楓が急に積極的になる。 それもそのはず、楓にとっての瑞樹は幼稚園の頃の初恋相手だったのだ。 ※他サイトにも掲載しております

せんせいとおばさん

悠生ゆう
恋愛
創作百合 樹梨は小学校の教師をしている。今年になりはじめてクラス担任を持つことになった。毎日張り詰めている中、クラスの児童の流里が怪我をした。母親に連絡をしたところ、引き取りに現れたのは流里の叔母のすみ枝だった。樹梨は、飄々としたすみ枝に惹かれていく。 ※学校の先生のお仕事の実情は知りませんので、間違っている部分がっあたらすみません。

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

春に狂(くる)う

転生新語
恋愛
 先輩と後輩、というだけの関係。後輩の少女の体を、私はホテルで時間を掛けて味わう。  小説家になろう、カクヨムに投稿しています。  小説家になろう→https://ncode.syosetu.com/n5251id/  カクヨム→https://kakuyomu.jp/works/16817330654752443761

処理中です...