異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

FOX4

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PHASE-1828【ぶっ刺すよね】

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「気づかいは結構。雑な使用方法で構いませんよ。力を発揮することなく屋敷で埃をかぶることこそ愚の骨頂。戦場にて苛烈に使用してもらったほうが輝くというもの」

「流石は氏族筆頭。懐が深いですね。壊したらすみませんと前もって伝えておきます」

「難敵との戦いとなれば損耗も激しいでしょうからね。その時はその時と諦めましょう。諦めた結果、この世界から驚異がなくなれば家宝も役目を務めることが出来て本望でしょう。以前、譲り渡すとも言いましたし」

「本当に懐が深い。可能な限り大事に使用します。そして戦いが終わった後はちゃんと返しますよ。家宝として返すのではなく――魔王を倒すことで付加価値を高め、国宝として扱われるようにしてあげますよ」

「ほう!」
 二メートルを超える長身痩躯が、目を閉じているかのような細目をくわりと見開く。
 コクリコの発言内容が大層に気に入ったご様子。
 大言壮語とは受け取らず、本当に成し遂げてくれると信じているようでコクリコに対して笑みを湛え、

「国宝としての返却に期待します」
 そう言ってくれる。

「ところで――ルーシャンナルはどうしています?」

「そう言えば今はどうしてるんでしょうね」
 周囲を見渡し、

「バリタン伯」
 見つけて呼べば小走りで近寄ってくれる。

「どうされました」

「ルーシャンナルさん――エルフの百人隊長がどうしているか聞いていますか?」

「それならば王都と要塞を往復し活躍しております。当然ながら今回も参加しておりますよ」
 デミタスに操られていたことを落ち度として意気消沈。
 その後は少しでもその償いをする為、俺に協力を約束してくれた。
 しばらく会ってなかったし、それ以降、様々な事が立て続けに起こったから動向を追えてなかったけど、バリタン伯の話では要塞では弓術の指導を行い、王都でも王都兵やギルドメンバーに同様の指導を行っていたという。
 あとゴブリンの言葉も話せるから翁と一緒にゴブリン騎獣隊の指導も行ってくれていた。
 心の友が責任者を務めていた要塞後方の拠点に翁と騎獣隊はいたけど、ルーシャンナルさんはいなかったことを問えば、その時は王都で指導をしていたそうで、兎に角、自分の失態を払拭するかのように身を粉にして励んでくれているという。
 
 ――今ここにいるなら挨拶しとかないとな。
 カトゼンカ氏も同行するとのことで、バリタン伯が教えてくれた俺もよく利用している練兵場へと赴く。
 現在、練兵場は出立組の待機場の一つとして使用されいるとのことだった。
 
 移動中、ミルモンとカトゼンカ氏が初対面の挨拶を交わしているのを眺めつつ到着すれば、

「あ、いた」
 おっと、

「これはルミナングスさん。お久しぶりです」

「勇者殿も息災で何よりです」
 まさかのシャルナパパもいるなんてね。
 相も変わらず青年を思わせる顔立ちだ。
 白皙はくせきの肌と金糸のような長い髪。濃い碧眼。
 これで五千歳を超えてんだからな。やっぱりエルフって人間から見ると不老の存在だ。

 でもって、

「なにを自分の上司の後ろに隠れてんですか……」

「まったく。まだ引きずっているのか……」
 俺と目が合った途端、ルーシャンナルさんは体を縮ませてルミナングスさんの背後に隠れる。

 呆れるルミナングスさんとは違い、

「百人隊の隊長がとるべき行動ではないな」
 二メートルを超えるカトゼンカ氏がむんずと首根っこを掴めば、上司の背中に隠れる大の大人を力任せに引っ張り出す。
 痩躯で力はなさそうに見えるけど、そこは氏族筆頭であり弓に精通しているエルフ族。
 弦を引くよりも容易いとばかりだった。

「ルーシャンナルさんもお久しぶりですね。カトゼンカ氏も挨拶をしたいということでしたから一緒に来ましたよ」

「あ、それは……。こちらから挨拶に行けず申し訳ありませんでした」

「なにがこちらから挨拶に行けず――だ。後ろめたさから会いたくなかっただけだろう」
 カトゼンカ氏の火の玉ストレート。
 幻視の拳に殴られたかとばかりに顔が勢いよく横を向く。

「「まったく……」」
 この動作にルミナングスさんとカトゼンカ氏は声を揃えて呆れてしまう。

「王都で励んでいるとのことだったが、ここでのやり取りを目にしただけで勇者殿との関係性が全て伝わってくるぞ。コソコソと情けなく行動していたようだな」
 と、継いだのはルミナングスさん。
 申し訳なさそうにペコペコである。

「でも、王都と要塞を往復して皆のために活躍しているのは聞いていますよ。兵だけでなく内のギルドメンバーにも弓術の指南をしてくれていたようですね。有り難うございます」
 ここでフォローをいれておく俺氏。

「恩人である勇者殿のために私はやる事をやっているだけでして……」

「そのやる事のお陰で指導された者達のスキルが上がってるんですからね。戦いとなれば敵を倒し、自分と味方の生存率を高めてくれます。とても重要なことです」
 深々と頭を下げれば、

「おやめください」
 あたふたしてくる。
 おもしれえなオイ。
 いじりたくもあるが生真面目な方なのでやり過ぎると追い込んでしまうかもしれないからやめておこう。

「勇者殿もこう言ってくれている。もう少し前向きに捉えることが出来るようにならないとな。部下が称賛を受けると嬉しいものなんだぞ」

「まったくだ。卿の実力は本物である。だから自信を持て」
 上役の二人に言われれば嬉しかったようで、長い耳がピクピクと動いていた。

「そうですよ。実力が本物だからこそ操って利用するに選ばれたんでしょうからね」

「「「ええ……」」」
 俺、ルミナングスさんとカトゼンカ氏……。
 三人揃ってコクリコの余計な発言で脱力に見舞われる……。
 ねえ、それいる。
 今それいるの?
 とんでもねえ鋭利な言葉でぶっ刺してきたな……。
 カトゼンカ氏の火の玉ストレートが猫パンチに思えるほどだよ。

 最近は場の空気が読めるようになっていたけども、こういった歯に衣着せぬ言い様は流石はコクリコというところでもある。
 でも鋭すぎるって……。
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