異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

FOX4

文字の大きさ
27 / 1,900
攻略、リド砦

PHASE-27【帰還】

しおりを挟む
 ふぅぅぅぅぅぅ……。
 気合いを入れつつ、

「べ、別に俺は、嫌なこととかをベル達に押しつけるつもりはないぞ」
 ――…………返事がない、ただの無視のようだ……。
 勇気を出して口を開いた結果が無視ですよ。俺のギヤマンハートが粉々になりそうだ……。
 異性からの無視がこれほど堪えるとは、おもいもよらなんだ……。抉られるぜ……。
 相手にしてもらう為には、同じことをしないといけないって事か。
 同じ舞台に立つ。
 つまりは――――、命を奪う……。
 相手が人ではなく亜人で、非道を行っているからって、殺めるってのはな……。
 怒りに任せて動けば後悔しか残らないだろう。もちろん使命感で動いても命を奪えば後悔だ。
 かといって、汚れ役ばかりを周りに任せるのは、第三者目線だと卑怯者がする事だよな。
 冷静に襲われた時のことを振り返れば、俺は刀なんだから、時代劇なんかでよくある、峰打ちで対応すればよかったんじゃないだろうか。
 ふぅ、この世界に馴染むには、まだまだ時間がかかるな。
 ――……結局、運転中ベルは、一切口を利いてくれなかった……。

「おお!? 勇者殿!!」
 馬ではなく、見たこともない乗り物から出てきたもんだから、壁上から恐る恐るこちらを窺う、鎧のお偉いさん。
 俺たちと分かれば、急いで壁上から下り、門を開かせる。

「首尾は?」
 と、聞いてきたので、

「砦は破壊しました。占拠はしなかったですが――――」
 ゲッコーさんとベルが言っていた、砦を現状では維持できない兵力しかない王都では、占拠は無理だということを伝えた。
 得心がいったのか、大きく首肯で返してくる。
 納得してもらったところで、トラックから女性たちを降ろせば、門前に止めていたトラックの前に、住人の方々が走り寄って来る。
 囚われていた人達の関係者のようだ。
 羽織っているものをかけてあげている人もいる。
 続いて、俺たちに対して歓声が上がった。
 砦を攻略しただけでなく、人質となっていた女性たちが戻ってきたことに対して、歓声で俺たちに礼を述べているようだ。

「喜ばしいところ申し訳ないのですが、女性だけですか?」

「そうですが」

「そう……ですか……」
 残念そうな声を漏らした将軍。
 連れ去られたのは女性だけでなく、子供もだそうだ。
 といっても、砦にはいなかった。ゲッコーさんが探索でミスをするわけはないだろう。
 女性たちを救い出した当人は、別の所に運ばれている可能性があると発言。
 子供は兵としても育てることが可能だから、前線の砦に留めるよりも、後方で教育をするのかもしれないとの事だ。
 行きは一人だった従者が、帰ってきたら二人になっているから、将軍は怪訝な表情だったけど、今回の攻略において、値千金の人物だと俺が伝えれば、それだけでゲッコーさんへの警戒が解かれる。

「第一は囚われていた女性たちから情報を得ることだな」
 ゲッコーさんの発言に、ベルとナブル将軍が頷く。
 子供たちの情報を得るとしても、現状、女性たちは憔悴している。まずは心身の回復が優先だろう。
 セラピスト的な専門家が必要だ。
 これは戦場をよく知り、人の心を理解してくれるゲッコーさんに任せたいところ。
 本来ならゲッコーさんの部下たちを召喚するというのもいいだろう。
 やりこみまくって、実働部隊最大定員である百人を全てS 級兵士で埋めた俺だ。
 様々な役職が存在するから、医療班からセラピストを召喚するってのもありかもしれない。
 だがしかし、ゲッコーさんは信用できるが、それ以外はとなると、俺では制御できないかもしれない。
 ゲーム内容の一部には、自分たちの国を持つという設定もある。
 この世界は混乱している。だからこそ、この世界を得ようと考える者たちが、S級の中から現れる可能性だってある。
 その時、ゲッコーさんはどう動くのか。召喚が自在に出来るとはいえ、キャラクターを完全に支配しているわけではない。ベルが俺に切っ先を向けたのがいい証拠だし、未だに忠誠心ゼロだし……。口を利いてくれないし…………。
 召喚に選ぶキャラは厳選しないといけないな。寝首をかかれては元の世界にも帰れないし、何よりこの世界の魔王より脅威になる存在を呼び寄せてしまうかもしれない。

「どうした?」

「いえ、考え事が多くて、頭が追っついてないんですよ」
 貴男の部下を使うべきかどうかでね。
 ――――薄暮の中、西の城門前では炊煙があがる。救出され、無事を喜ぶように、住民が集まってのパーティーである。
 うっすいスープとカチカチのパンが一つ。それが一人一人に配られた。でも、これでも十分に贅沢なのだそうだ。
 その中心にいる俺たち。
 感謝もされるが、子供を奪われた親御さんからは助けて欲しいと懇願される。
 今までは諦めていたけども、俺たちの存在が救出を可能とすると、今回の事で分かったからか、泣いて頼んでくる。
 こういう事が起きると理解していたゲッコーさんから、パーティー前に先んじて言われていたのが、軽はずみで約束はしないこと――、だった。
 希望を持たせて未達成となれば、大きな絶望を与え。下手したら恨まれる対象になってしまうからだそうだ。
 なので――――、

「可能な限り善処します」
 って、政治家みたいな逃げ方をしてしまった。
 それでも、希望を与えてくれると思っている俺からの発言が嬉しかったようで、笑みを見せてくれた。

「――――これは本腰入れて子供の行方も調べないと」
 親御さん達の背中を見送りながらの独白。

「言葉は良薬にも毒薬にもなる。口に出した以上は良薬にしないとな」
 しっかりとそれを耳にしていたゲッコーさん。目の前では安請け合いはしなかったけども、口にしたからには、親御さん達を裏切るなって事だろう。

「霊薬にしてやりますよ」

「言うね~」
 パーティーもお開きになり、壁上の中に設けられた詰所へと戻る道すがら、ゲッコーさんと言葉を交わす。
しおりを挟む
感想 588

あなたにおすすめの小説

【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。  なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!  冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。  ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。  そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

処理中です...