異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

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ギルドを立ち上げてみよう

PHASE-28【厳選】

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 ――――王様、就寝には、城や屋敷を使用していい。という内容の連絡を近衛兵から聞かされたけど、ゲッコーさんは何かあった時に素早く展開できるよう、王都最前の城壁で過ごすと提案。
 確かにと、俺はそれに従う。
 どうせ城に行っても、よくやってくれた! と、おっさん達が群がってくるからね。
 今後の魔王軍の動きに警戒が必要だから、まだ城には行けない。と、適当な理由を作って、ナブル将軍から口頭で、お偉いさん達に伝えてもらいたいと頼んだ。
 ――――情報を得るには、女性たちの心身の回復待ちか~。それがよい方向にいっても、問題は多い。
 子供たちの捜索、救出に、この国の国力を増大させないといけないし。

「山積ってこういう状況なんだな」
 ゲッコーさんもここを訪れてすぐに、兵の佇まいを目にしただけで、練度が新兵以下と評価。
 さらに、城壁修復の進捗も鈍い。
 いつ攻めてくるか分からない魔王軍の侵攻に恐れをなして、まともに動こうとしていないからな。

「富国強兵。万国対峙だな」

「ハハ……。俺の世界だとその政策は、歴史の教科書で、明治時代に出てきますよ」
 この詰んだ世界だと、ゲッコーさんが口にした考えが適切なのかもしれないな。
 とにかく、精神が弱り切ってる人達の意識改革が最優先事項だな。
 その為にも俺たちだけでなく、そこにいるだけで心の支えになる存在が必須だ。
 ゲーム内のデータからだけでなく、この終わりかけた世界の中で頑張っている人々からも選んでいかないと。
 ゲームデータだって、無限じゃないからな。
 この大陸から、人材を集めることも考えないと。

「となると、ギルドか」

「いい考えだな」
 独白のつもりだったが、耳朶にしたゲッコーさんからは妙案との評価をいただく。
 現状の兵士では心許ない。ならば、独立した組織を創設するのもいいと、乗り気である。
 だがデメリットもあるとの事だ。俺でも分かる。王都内で、権力が二分される可能性が生まれる。
 いくら俺を勇者としてこの世界の行く末を託したとしても、新たな権力の誕生となれば、王、臣下たちはいい顔をしないだろうな。
 いや、王様は俺に託そうとしたからそこまで問題はないだろうが、マントをもらった時、何人かがいい顔をしなかったからな。
 そいつらとの軋轢が生まれるのは面倒だな。
 まあこっちからしたら、詰んでる国なので脅威とは思わないけども、目的は魔王討伐であって、異世界で建国シミュレーションをしたいわけじゃない。

「国を乗っ取るという意思がないことを態度でしめして、最高でも、国の中に国を建国するまでだな」

「とういうことは、俺は爵位持ちに!」

「頼りないのが爵位を? 領主として到底、人を導けるとは思えないな」
 詰所に入ってきたと思ったら、さっきまで口も聞いてくれなかったのに、開口一番で俺に難癖ですか、ベルさん。
 口を開いてくれるだけ、さっきよりは機嫌がよくなってるのかな。

「ギルドだが――――」
 と、ここで緩衝材代わりとばかりに、ゲッコーさんが割って入り、話題を戻す。

「なんです?」

「誰がギルドを取り仕切るかだ」
 ――……俺には無理だ。
 中学の時は、学級委員長を決める時、全力で机に突っ伏して気配を消してたもんだ。そんな俺が組織をまとめるなんて無理すぎる。
 傀儡リーダーのポジションでお願いします。
 となると――――、
 眼前の二人が妥当かな。
 でもベルは厳しいからな~。用兵は出来ても、ギルドを運営するとなると、また違う才能が必要だろうな。
 そつなくこなせて、ゲーム内では指導者でもあるゲッコーさんがいいかもしれない。
 だがしかし、そうなったら前線に立ってもらうことが難しくなる。
 ゲッコーさんは後方よりも、俺と一緒に前にいてもらいたい。
 王都から選抜したいが、王都の人材がどんな状態なのか、この短時間で理解も出来ないし、王たちの手前、ヘッドハンティングは避けたい。
 出来る事なら、持ちつ持たれつな関係でいたい。面倒事に発展すれば、内部からの妨害で、魔王討伐なんて出来ないからな。
 ――――俺って意外と思慮深いな~。
 ベルに聞かれれば、臆病の二文字が返ってくると思うから、口には出すまいよ。
 ――――ギルドの運営権限を託せる人物は、俺の力で召喚する人物の中から厳選すると伝えたら、すんなりと受け入れてくれた。
 自分たちがするっては言わなかったな。
 前線に立たないといけないと理解してくれているんだろう。そういう忖度、助かります。
  ――――就寝ということで、話はお開き。
 俺はベッドで横になり、プレイギアを眺める。
 一応プライベート空間を作るために、間仕切りカーテンによって各自の空間を作る。
 主にベルのためだけども、城壁防衛の兵士たちは、俺がカーテンが欲しいと伝えれば、喜んで準備してくれた。
 英雄となっている俺たちと接することが、兵士たちにとってステータスになっているようだった。
 悪い気はしない。
 ――――ゆったりとしたプライベート空間の中で選択したストレージデータは、三国志-群雄割拠-って作品だ。
 戦略シミュレーションの国盗り天下統一ゲーム。
 この作品から有能な英雄を召喚しようと考えている。
 でも熟考が大事だ。俺に対する忠誠心が問題だ。
 ベルみたいにゼロなんてのを召喚したら、魔王に代わって自分が天下を収める! とか言い出しそうな気がしてならない。
 この国の衰退レベルは、後漢末期に似ているからな。曹操なんかを召喚した日には、覇を唱えて、俺の危惧が現実味を帯びてしまう。
 あれだな、君主系は選択外だな。呂布にかんしては、絶対回避まったなしだ。
 俺が欲するのは天下を窺うのではなく、俺に代わってギルドを運営してくれる人物で、人材を選抜するのに秀でた人物だ。

「そうなると――――」
 独白してから決める。
 というか、この人しか考えられないな。俺の中だと。
 よし! 明日、実行だ!
 心の中でそう発して、眠りにつく――――。
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