38 / 1,861
ギルドを立ち上げてみよう
PHASE-38【奪う】
しおりを挟む
そんな子供たちも自分たちに出来る事をと、回収できそうなサイズの利器を手にして荷車に運んでいる。
「怪我をしないようにな」
伝えると、元気な返事だ。
「ふっ」
俺が笑顔で子供たちと接していれば、なぜかベルが鼻で笑った。
あれか? マッチポンプな行動での英雄様を小馬鹿にしてるんだろうな。こっちは死体を運ぶので一杯一杯なのにさ。
俺に対する当たりが強かったのもある――――。
「皆。お姉ちゃんにも手伝ってもらおうか」
「な!?」
ほほう。美しい無敵の女傑も、子供は苦手なのか、近づかれるとあたふたとしている。
その姿についつい笑いをこぼしてしまうと、睨まれてしまった。
でも、今回の俺はそんなことでは引き下がらない。
「お姉ちゃん怖いね~」
周囲の子供たちに伝えるように言えば、「おこってるの?」と、無垢なる存在に語りかけられると、更にあたふたとし始める。
だが、これ以上やると、本気で怒られそうだからやめておく。
引き際を知る男として生きていきたい。
――――にしても、俺なんかより子供たちの方が、よっぽど胆力があるね。
死体が手にする利器を平気で取り上げるんだもの。俺は未だに抵抗があるのに。
中世時代のようなこの世界で生きる子供たちはたくましい。
そんなたくましい子供が二人、大きな斧を運ぼうとすれば、
「私がやるから」
と、先ほどから俺の周囲で手伝いをしてくれる少女が言った。
背格好からして、中学校の一年生くらいかな。小さな子供たちのまとめ役みたいだ。
栗毛の三つ編み。将来は美人になるであろう、可愛い子だ。
着ている服はあちこち穴が空いているのか、別の布で縫ったアップリケ。綺麗なドレスを着せてあげたい容姿である。
衣服なんかも全体に流通できるように、努力しないとな――。
「死ね!」
考え事をしていれば、戦いの終わった現状に似つかわしくない発言が、耳朶に届いた。
「!?」
女の子と死体を供養しようとしていると、倒れたオークの方から声が聞こえた。
瞬時に目を向けたけど、そこにあるのは動かない死体だ。
凝視すれば、死体が蠢く。そして、盛り上がったと思えば、下からゴブリンが跳び上がってきた。
こいつ、人語を喋っていると驚いたけど、それよりも手にした剣の切っ先が、俺の側にいる女の子に対して向けられていることで、焦燥感に駆られた。
――……砦の時には抜けなかった刀を抜く。躊躇する思考に至らなかった…………。
「ギャッ……」
断末魔をあげたのは……、ゴブリン。
力なく前のめりに倒れ込む。
鞘から抜いた刀でとる姿勢は、自然と、普段から構えている上段であった。考えるよりも先に、体が勝手に構える。
竹刀のような軽さはない……。C-4を起爆させた時の重さとはまた違う感覚。
上段から振り下ろせば、刀の自重も相まって、加速された一振りは絶大だったようで、子供ほどの大きさのゴブリンを容易に倒せた。
柄から伝わってくる感覚。
刀身が肉に食い込んでいく感覚。
その中で硬い物に触れる感覚。
おそらくそれは骨なんだろうと、考える自分がいる。
――……見下ろせば、前のめりに倒れたゴブリンが痙攣し、鮮血が円を描くように広がっていき、程なくして、ゴブリンは動かなくなった……。
俺の一振りにて屠った……。
俺が、命を奪ってしまった…………。
「ありがとうございます!」
女の子の母親だったのだろうか、襲われそうになったところを目にしていたのか、急ぎ女の子を抱きかかえるようにして、俺に感謝の言葉を言い続けていた。
でも、よく聞き取れない。段々と声が遠のいていくような感じである…………。
「主?」
――……!?
「主!」
「はい!」
「ふむふむ――」
はたと意識が戻った時には、先生が俺の周りを見回していた。
怪我を負っていないかと、心配しているようである。
――――時間は黄昏時。俺の影が大地に長く伸びている。
俺が殺めたゴブリンは、俺が惚けている間に運ばれたようだ。
ともすれば、斬ったことは俺の中の勘違い……。
「お見事でした。少女の命を見事に救われましたな」
先生のこの言葉で、俺は命を奪ったという事を再認識させられた……。
「怪我をしないようにな」
伝えると、元気な返事だ。
「ふっ」
俺が笑顔で子供たちと接していれば、なぜかベルが鼻で笑った。
あれか? マッチポンプな行動での英雄様を小馬鹿にしてるんだろうな。こっちは死体を運ぶので一杯一杯なのにさ。
俺に対する当たりが強かったのもある――――。
「皆。お姉ちゃんにも手伝ってもらおうか」
「な!?」
ほほう。美しい無敵の女傑も、子供は苦手なのか、近づかれるとあたふたとしている。
その姿についつい笑いをこぼしてしまうと、睨まれてしまった。
でも、今回の俺はそんなことでは引き下がらない。
「お姉ちゃん怖いね~」
周囲の子供たちに伝えるように言えば、「おこってるの?」と、無垢なる存在に語りかけられると、更にあたふたとし始める。
だが、これ以上やると、本気で怒られそうだからやめておく。
引き際を知る男として生きていきたい。
――――にしても、俺なんかより子供たちの方が、よっぽど胆力があるね。
死体が手にする利器を平気で取り上げるんだもの。俺は未だに抵抗があるのに。
中世時代のようなこの世界で生きる子供たちはたくましい。
そんなたくましい子供が二人、大きな斧を運ぼうとすれば、
「私がやるから」
と、先ほどから俺の周囲で手伝いをしてくれる少女が言った。
背格好からして、中学校の一年生くらいかな。小さな子供たちのまとめ役みたいだ。
栗毛の三つ編み。将来は美人になるであろう、可愛い子だ。
着ている服はあちこち穴が空いているのか、別の布で縫ったアップリケ。綺麗なドレスを着せてあげたい容姿である。
衣服なんかも全体に流通できるように、努力しないとな――。
「死ね!」
考え事をしていれば、戦いの終わった現状に似つかわしくない発言が、耳朶に届いた。
「!?」
女の子と死体を供養しようとしていると、倒れたオークの方から声が聞こえた。
瞬時に目を向けたけど、そこにあるのは動かない死体だ。
凝視すれば、死体が蠢く。そして、盛り上がったと思えば、下からゴブリンが跳び上がってきた。
こいつ、人語を喋っていると驚いたけど、それよりも手にした剣の切っ先が、俺の側にいる女の子に対して向けられていることで、焦燥感に駆られた。
――……砦の時には抜けなかった刀を抜く。躊躇する思考に至らなかった…………。
「ギャッ……」
断末魔をあげたのは……、ゴブリン。
力なく前のめりに倒れ込む。
鞘から抜いた刀でとる姿勢は、自然と、普段から構えている上段であった。考えるよりも先に、体が勝手に構える。
竹刀のような軽さはない……。C-4を起爆させた時の重さとはまた違う感覚。
上段から振り下ろせば、刀の自重も相まって、加速された一振りは絶大だったようで、子供ほどの大きさのゴブリンを容易に倒せた。
柄から伝わってくる感覚。
刀身が肉に食い込んでいく感覚。
その中で硬い物に触れる感覚。
おそらくそれは骨なんだろうと、考える自分がいる。
――……見下ろせば、前のめりに倒れたゴブリンが痙攣し、鮮血が円を描くように広がっていき、程なくして、ゴブリンは動かなくなった……。
俺の一振りにて屠った……。
俺が、命を奪ってしまった…………。
「ありがとうございます!」
女の子の母親だったのだろうか、襲われそうになったところを目にしていたのか、急ぎ女の子を抱きかかえるようにして、俺に感謝の言葉を言い続けていた。
でも、よく聞き取れない。段々と声が遠のいていくような感じである…………。
「主?」
――……!?
「主!」
「はい!」
「ふむふむ――」
はたと意識が戻った時には、先生が俺の周りを見回していた。
怪我を負っていないかと、心配しているようである。
――――時間は黄昏時。俺の影が大地に長く伸びている。
俺が殺めたゴブリンは、俺が惚けている間に運ばれたようだ。
ともすれば、斬ったことは俺の中の勘違い……。
「お見事でした。少女の命を見事に救われましたな」
先生のこの言葉で、俺は命を奪ったという事を再認識させられた……。
1
あなたにおすすめの小説
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
最強の異世界やりすぎ旅行記
萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。
そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。
「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」
バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!?
最強が無双する異世界ファンタジー開幕!
夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~
青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。
彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。
ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。
彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。
これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。
※カクヨムにも投稿しています
貧弱の英雄
カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。
貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。
自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる――
※修正要請のコメントは対処後に削除します。
冷遇された聖女の結末
菜花
恋愛
異世界を救う聖女だと冷遇された毛利ラナ。けれど魔力慣らしの旅に出た途端に豹変する同行者達。彼らは同行者の一人のセレスティアを称えラナを貶める。知り合いもいない世界で心がすり減っていくラナ。彼女の迎える結末は――。
本編にプラスしていくつかのifルートがある長編。
カクヨムにも同じ作品を投稿しています。
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
異世界へ行って帰って来た
バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。
そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。
はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる