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出立
PHASE-82【子供の火遊びは、本当に危険】
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「この馬鹿!」
ゴツンと拳骨一発を見舞ってやる。
「痛い! 何をするんですか!」
「それは俺たちがお前に言いたい台詞だ!」
まくし立てる。
ここにはオーク達がいるっていうのに。
「遠くから獣のような声が上がったぞ」
ゲッコーさんは耳がいいですね。
十中八九オークだろう。
きりがないから戦いたくない。
なので――、ここは逃げを選択。
付いてくるちびっ子は、なぜ戦わないで逃げるのかと言っているが、戦わなくてすむなら戦わねえよ。
コイツといると、エンカウントが増えそうで嫌だな。
やはり、付いてきていいと言ったのは失敗だったな……。
――……ああもう!
森から抜け出したところで、
「ぷぎぃぃぃぃぃぃぃ」
って、元気なオークが咆哮する。
数は十体ほど。
「朝っぱらから元気なことだな。魔王軍は夜のイメージが強いんだよ! こんな健康マニアがランニングするよな時間帯に行動してんじゃねえ!」
大声で怒鳴れば、オーク達がたじろいだ。
今までの戦闘だと、朝や昼間の戦いが主だったから、俺の言い分は、八つ当たりなんだよな。
「よく通る声になったな」
ゲッコーさんからのお褒めと、
「耳がキンキンします。どんな声量ですか」
と、新参が生意気なことを言う。
地道に王都の隅っこで頑張った、猿叫の成果が出たようだ。
勢い任せに刀を抜くけども、殺めるというスイッチの切り替えは大変だ。
小説やアニメでも、異世界に行くってのはよくあるが、大抵の主人公は、異世界に行ってすぐに、モンスターの命を奪っているが、よくできるよな。
どうやって割り切ってるんだろうな。
見てる時は面白いとか、主人公の立ち位置を自分に置き換えて愉悦に浸ったりもしたもんだ。
でも、俺が同じ状況に立たされてからは、主人公たちに対して、もともとサイコパスの素質があったんじゃないのかと、邪念まで抱いてしまう……。
「オラ来いよ!」
自分から攻めずに、相手に攻めてもらって、正当防衛の既成事実を作ろうとするのが俺だ。
だが、オーク達は中々に攻めてこない。
俺たちの事が魔王軍では知れ渡っているからか、十体程度では勝てないと理解しているのだろう。
しかたないか……。
「はあぁぁぁぁぁ!!」
スイッチを入れるために大声を発する。
テンションを上げて興奮状態になるのが、一番切り替えに適している。
抜いた刀を振り上げる。後は斬りかかるだけ――――。
「受けてみるがいい!」
――……こっちが気合いを入れるのに苦労している中で、十三歳の女の子が躊躇なくファイヤーボールをオークに見舞った。
触れれば爆発。
室内で使用された時はテレビが壊されたくらいだったけど、当たればこれほどか。
初期魔法のような名前と思って悪かったよ。
分厚い体に体毛。加えて鎧を装備したオークが、一撃で吹き飛んだ。
「まだまだ行きますよ!」
魔法はやはり珍しいのか、オーク達が浮き足立っている間にリキャストタイムを終えて、ばかすか唱えるコクリコ。
あっという間にオークが半数になれば、俺たちの存在に加えて、危険な少女の火遊びに、脇目も振らずに散り散りになって逃げ出した。
必死になって追いかけてきた時とはえらい違いだ。流石に数が少ないと不安の方が勝るみたいだな――――。
「未だに躊躇が見えるな」
「悪い……」
今回のベルの声音は、責めているというものじゃない。
「指揮官クラスを仕留めたのだ。その時のような使命感を思い出して戦えばいい」
優しく言ってくれる。
以前までとは違う。俺もそれ相応の覚悟を見せたからだろう。
仲間たちのためにも、俺ももっと戦う意志を固めないとな。
その為には力だ。圧倒する力を身につけないと。
ゴツンと拳骨一発を見舞ってやる。
「痛い! 何をするんですか!」
「それは俺たちがお前に言いたい台詞だ!」
まくし立てる。
ここにはオーク達がいるっていうのに。
「遠くから獣のような声が上がったぞ」
ゲッコーさんは耳がいいですね。
十中八九オークだろう。
きりがないから戦いたくない。
なので――、ここは逃げを選択。
付いてくるちびっ子は、なぜ戦わないで逃げるのかと言っているが、戦わなくてすむなら戦わねえよ。
コイツといると、エンカウントが増えそうで嫌だな。
やはり、付いてきていいと言ったのは失敗だったな……。
――……ああもう!
森から抜け出したところで、
「ぷぎぃぃぃぃぃぃぃ」
って、元気なオークが咆哮する。
数は十体ほど。
「朝っぱらから元気なことだな。魔王軍は夜のイメージが強いんだよ! こんな健康マニアがランニングするよな時間帯に行動してんじゃねえ!」
大声で怒鳴れば、オーク達がたじろいだ。
今までの戦闘だと、朝や昼間の戦いが主だったから、俺の言い分は、八つ当たりなんだよな。
「よく通る声になったな」
ゲッコーさんからのお褒めと、
「耳がキンキンします。どんな声量ですか」
と、新参が生意気なことを言う。
地道に王都の隅っこで頑張った、猿叫の成果が出たようだ。
勢い任せに刀を抜くけども、殺めるというスイッチの切り替えは大変だ。
小説やアニメでも、異世界に行くってのはよくあるが、大抵の主人公は、異世界に行ってすぐに、モンスターの命を奪っているが、よくできるよな。
どうやって割り切ってるんだろうな。
見てる時は面白いとか、主人公の立ち位置を自分に置き換えて愉悦に浸ったりもしたもんだ。
でも、俺が同じ状況に立たされてからは、主人公たちに対して、もともとサイコパスの素質があったんじゃないのかと、邪念まで抱いてしまう……。
「オラ来いよ!」
自分から攻めずに、相手に攻めてもらって、正当防衛の既成事実を作ろうとするのが俺だ。
だが、オーク達は中々に攻めてこない。
俺たちの事が魔王軍では知れ渡っているからか、十体程度では勝てないと理解しているのだろう。
しかたないか……。
「はあぁぁぁぁぁ!!」
スイッチを入れるために大声を発する。
テンションを上げて興奮状態になるのが、一番切り替えに適している。
抜いた刀を振り上げる。後は斬りかかるだけ――――。
「受けてみるがいい!」
――……こっちが気合いを入れるのに苦労している中で、十三歳の女の子が躊躇なくファイヤーボールをオークに見舞った。
触れれば爆発。
室内で使用された時はテレビが壊されたくらいだったけど、当たればこれほどか。
初期魔法のような名前と思って悪かったよ。
分厚い体に体毛。加えて鎧を装備したオークが、一撃で吹き飛んだ。
「まだまだ行きますよ!」
魔法はやはり珍しいのか、オーク達が浮き足立っている間にリキャストタイムを終えて、ばかすか唱えるコクリコ。
あっという間にオークが半数になれば、俺たちの存在に加えて、危険な少女の火遊びに、脇目も振らずに散り散りになって逃げ出した。
必死になって追いかけてきた時とはえらい違いだ。流石に数が少ないと不安の方が勝るみたいだな――――。
「未だに躊躇が見えるな」
「悪い……」
今回のベルの声音は、責めているというものじゃない。
「指揮官クラスを仕留めたのだ。その時のような使命感を思い出して戦えばいい」
優しく言ってくれる。
以前までとは違う。俺もそれ相応の覚悟を見せたからだろう。
仲間たちのためにも、俺ももっと戦う意志を固めないとな。
その為には力だ。圧倒する力を身につけないと。
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