異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

FOX4

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王族の湯治場クレトス

PHASE-192【ぎゅぅぅぅぅぅぅってされたい……】

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「あっさりと受け入れましたが、本当にいいんですか?」

「ええ、もちろんです」
 宿から出てワックさんに会い、ギルドに入会してほしいとお願いすれば、二つ返事で快く受け入れてくれた。
 
 瘴気が晴れて、人々の行動拠点が広がったことはいい事で、クレトスにいても世界のためにはならないからと、王都にて自分の才能を発揮させていただきたいと、ワックさんから頭を下げてきたくらいだった。
 喜ばしいことである。

 まあ、喜びを得る前に、俺とゲッコーさんは仕切りの修繕に励んだわけだが……。
 勇者パワーで怒られはしなかったが、終始、半眼だった宿主に平謝りだった男二人。
 
 村は戦い慣れした人達がいるとはいえ、ワックさんがいなくなれば、クレトスの人々は不安になるだろう。
 念のために、王都よりギルドメンバーの派遣に加えて、王族の湯治場ということもあるので、王都兵を正式に派遣してもらうように、王様に頼んでみよう。

「何より勇者殿の力に興味がありますから」
 俺が召喚したティーガー1がたいそう気に入ったらしい。
 ずっと触っていたからな。

 鉄の塊がなぜに高機動で動くのかが知りたいようだ。
 ティーガー1は別に高機動ではないけどね。
 足の速いのはまだあるし。

 それらを見せてあげてもいいが、あまりオーバーテクノロジーを見せるのはよくない気がする。
 名前が名前だからね。
 生産しそうで怖い……。

 帰り道で使用するハンヴィーを見せてあげるから、それで我慢してもらいたいところだ。

 でもって、王都についたらバリバリと頑張ってもらおう。
 まずは私事で悪いけど、火龍の鱗で装備を作ってもらわないと。
 
 で、だ――――。
 
 ワックさんが王都に来るとなると、必然的に――――、

「チッ」
 思わず舌打ちが出てしまった。

「眠たいのか?」

「うん……」

「私のせいだ。すまなかった」

「いいよ」
 現在ベルに抱っこされたゴロ太はおねむのようだ。
 目をくしくしとさせて可愛いじゃないか。

 どうやら、昨晩はベルと一緒に寝たもよう。

 ベルは、ぬいぐるみみたいな子グマと寝るのがよほど嬉しかったのか、ぎゅぅぅぅぅってされてたゴロ太は寝不足みたいだ。

 男前な声で愛らしい、そんなギャップにベルは心を射抜かれたのか、全くもって放そうとしない。
 なんと緩んだ顔か! あれが帝国軍中佐の顔なのかい?
 けしからん!

「これから王都に戻る間は私が抱いていてやるから、ゆっくりしてくれ」

「ありがとう。お姉ちゃんのおっぱいは温かくて柔らかくて、まるでふわふわの雲にのっているみたいだよ」

「そうか、気に入ってもらえて何よりだ」
 ベルよ、目を閉じて今の台詞を脳内で再生してくれ。

 ゴロ太は声だけなら完全に犯罪の臭いがプンプンしやがる。
 とにもかくにも声がまったくもって可愛くないんですよ。
 
 それでもベルは全く気にせずにゴロ太を抱っこして幸せそうだ。
 くそ! 心の底から羨ましい!

「何を見ている」
 とまあ、俺に対しては目つきもきついし、当たりもきつい。
 まったく、ゴロ太が前を洗うのは許しても、俺が覗くのは許されないなんて……。
 やっぱり俺も、愛玩生物に生まれ変わればよかったよ!
 愛玩ならボコボコにされずにすんだんでしょ。愛玩なら!
 
 ――……俺はちゃんと見てないのに、ベル達にボコボコ。
 かたやゲッコーさんは、ばっちりと見たのに、右ストレート一発だけ。
 思い返せば、やはり納得がいかないな!

「帰りますよエロ」

「だから、お前のは見てないって俺もゲッコーさんも言っただろうが。まな板」
 納得いかない事からのストレスをコクリコにぶつてやると、

「なんですとぉぉぉぉぉぉお!」
 下山する道すがら、コクリコとはステゴロでの戦いを激しく繰り広げることになった。
 もちろん戦いの結果は、俺のボロ負け……。
 
 昨夜同様に、またも顔が腫れ上がってしまった……。

 ツルペタ、まな板、三大北壁、バーティカルボディ!
 心の中で強気に罵倒する。
 
 もちろん殴られるのはこりごりだから、口には決して出さないチキンハートな俺……。

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