異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

FOX4

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増やそう経験

PHASE-303【薬草集め】

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「いでででで……」

「馬鹿やるからでしょ!」

「うるさいよ! アレは事故だ」

「事故で済まさない。過失だから。まったくトールはどうしようもないスケベだね」

「ああもう! うるさい゛!?」
 口を大きく開けば傷口が開いて痛みに襲われる。
 昨日の今日だからな。未だに体中が痛い……。特に顔が痛い……。

「シャルナ……」

「弱々しく頼み込んでも回復してあげない」
 さっきからずっとこうだよ! 回復魔法が使えるって話だけども、全くもって使ってくれない。
 タチアナやクオンに頼みたいけど、ゴブリン退治が終われば、近くの村から直接依頼を受けたそうで、王都に戻ることなく、三人で近隣の村へとクエストに出たそうだ。
 
 現在、王都で回復魔法が使えるのは、シャルナとごく一部のヒーラーなどの魔道師だけ。
 でもシャルナは俺には使ってくれない。俺がベルに対していやらしい行動をしたから。
 別にそんなことしてないのに。ベルがいいって言ったからDLCを使っただけなのに。
 そもそもコイツがマントさえベルに投げ渡さなければ!
 他の面子に頼みたいが多忙だったために、諦めざるを得なかったし……。
 なので、この痛みを取り除くために、エルフであるシャルナと一緒に行動している。
 ――――森の中を――――、
 
 現在、王都付近の森の中で薬草なんかの素材集め。
 俺はその薬草で傷を癒やそうと考えている。
 緑に囲まれた森をエルフと二人。
 
 木漏れ日が揺れるよい天気である。深呼吸をするだけで体の中が浄化されくらいに空気が綺麗だ。
 原生林に囲まれた中、下生えを踏みながら素材を探す。

「あ、それ」

「え? このひょろいキノコか?」

「そう、それと数種の薬草を混ぜればポーションが出来るわけ」
 今回はクエストではないが、ギルドや王都の人々のためにポーション生成に必要な材料を求めての行動だ。
 無論、シャルナの行動目的がだ。俺は単純に俺を治したい。

 でもって俺をボコボコにしたベルは、今ごろゴロ太やコボルト達と楽しくお店の計画を話し合って――――と、いうわけにはいかない。
 ベルが昨日、怒りにまかせて暴れまくったことで、先生のエンレージが大爆発。
 あんなにも怒った先生は初めて見た。
 おかげでその時だけは傷の痛みを忘れられたね。
 
 理由はベルがギルドのマジョリティーを締める野郎達をほぼと言っていいくらいに戦闘不能に追い込んだことだ。
 これによって王都で活動できる野郎メンバー達がクエストや作業を出来なくなってしまった。
 回復魔法を使える面子が多忙なのは、傷ついた野郎達を回復させるため。

 正直、戦力となるのは俺より野郎達だからね。そっちを優先してもらっている。
 まったく。こんなコメディーじみたオチがあるとは思いもしなかったよ。
 野郎達が一人の女のせいで活動できない状況ってオチだ。
 ――――笑えないコメディーだよ。
 
 チート持ちがやることは、常人の枠外。
 そんな笑えないコメディーの結果、野郎達が受けていたクエストに穴が空いたので、それを補填するためにベルは一人で様々なクエストをこなしている状況。
 
 先生が烈火の如くお怒りだったから、ベルは素直に従っていた。
 ある意味、先生が最強の存在かもしれないな。

 こういう経緯があって、素材集めをやることになったわけだが……。
 やってみたいとも思っていたけど、こんなにも早く採取を経験できるとは考えていなかった……。
 軋む体でやるってのも想定外だ……。

 まあ、こういうのもいいよな。バトルが無い、薬草採取をまったりとやるの。
 というか、こういうのだけでいいんだけどな。

「このひょろひょろキノコと混ぜて、本当にポーションが出来るのか?」
 半信半疑でエノキみたいなのを数本引っこ抜く。
 全体の色は黒い。

「毒とかないよな?」

「それはムロ茸っていって、煎じて飲むだけでも癒やし効果があって体にいいんだよ」

「このひょろひょろの黒いのがか?」
 訝しい表情になっているであろう俺に、大げさな首肯で返してくるシャルナ。
 癒やし効果があるとか言っているが、飲んだら永遠の眠りにつきそうな色味なんだよな。
 まあ、トリュフも黒いし大丈夫なのかな? 食べたことないけど。

「結構あるぞムロ茸」

「それと、そこの豚の蹄もね」

「ぶ、豚?」

「それ、そこの薬草」
 ――ああ、確かに豚の蹄のように二つに分かれた形状だな。
 というか、正式名称なんだろうか? せめてハートって名付ければいいのに。ロマンチックなネーミングに出来なかったのかね?
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