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増やそう経験

PHASE-316【いざ酒蔵へ】

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 俺とシャルナもギルドハウス一階で一段落した後、東門へと移動開始。
 ギルドハウスは西門。真逆の移動なので結構な距離である。
 王都もインフラが整い始め、住民も駅馬車を利用して移動する事も可能になっている。

 シャルナと共に二頭立ての馬車に乗り込む。
 農耕馬を利用した駅馬車は、ゆっくりな足並みだが、農耕馬の力強さもあって、四頭立てサイズの馬車を二頭で引くことが可能との事。
 なので、乗り合いする人数も結構いる。

 俺の場合、ハウス近くの馬小屋にいけばダイフクがいるので頼ってもいいんだが、乗り合いで狭くなる馬車の中というのを想定してあえて馬車に乗り込む。
 結果、俺が思っていたように、シャルナと密着するような距離で座れるというイベントも発生したのです。
 ――腕が柔らかかった――――。



「到着――――」
 初めて来た東門。
 転生したのが西門付近で、そこでの活動が主。東への移動は、王都中央に位置する王城までが最長だったからな。
 北門と南門には行ったことはあるけど。
 
 北門はカイルたち現ギルドメンバーや流民の皆さんを出迎えた場所。
 南門と西門城壁に沿って、ホブゴブリンの軍勢と戦った。
 
 初めての東門。初めてといっても風景は他の門と変わらない。
 変わらないという事はいい事でもある。
 それだけ復興の進捗がいいからだ。
 きっと他の門と同じで、攻められていた時は城壁も家屋もボロボロだっただろう。
 今では真新しい石材や煉瓦、木板に土壁と、様々な修復によって穴は防がれ、屋根と壁は雨風を十分に防げるだけの状態に戻っている。

 壁上には、王都外周の木壁での巨大熊の侵入の反省を活かして、立哨がしっかりと、内と外に目を光らせており、住人は安心して街を歩ける。

 旅商人たちの街商も大通りに沿って並んでいる。
 西門同様に東門もこんなに盛んなら、北と南も同様に栄えていることだろう。

 東門には、西のギルドハウスと違い、大きな宿屋がある。
 内のハウスの半分ほどの規模だけど、歴史を感じる立派な宿屋である。
 東門から訪れた人々が宿屋のドアへ吸い込まれていくように入って行く。
 夜になれば、一階は楽しい声で騒がしくなるんだろう。
 喧騒の起爆剤となるのが、酒なんだろうな。
 その酒をこの東門の近くで造っているというわけだ。



「ここか――――」
 東門より大通りを外れてちょっと歩けば、建物の数が減り、住宅街から抜け出した所には、数軒の木造建築。
 茶褐色の木造はしっかりとした造りで、黒み有る色は重厚さを感じさせるものが遠見からでも伝わってくる。
 それらの建物をぐるっと囲うように、二メートル程の高さがある木製の柵。

「ここへは何用で?」
 と、道に沿って進めば、木柵と一体化した門があり、そこには王都兵二名が門番をしていた。

「ご苦労さんだね。ゲッコーさん――――蔵元に会いに来たんだ」

「ではここに署名を」
 出入りをしっかりとチェック。
 酒造りってのは余所に技術を盗まれる事もあるそうなので、慎重な応対があるようだ。
 巨大熊の件もあるから特になんだろう。
 でも俺――、

「勇者だよ。トールです」
 お茶目な悪ふざけを発してみれば、何とも困った表情になってしまう。

「分かっているのですが、規則なので……」
 何とも弱々しい返し。
 すかさずシャルナが気にしなくていいと、門番をフォロー。
 馬鹿の悪戯に付き合わなくていいとまで言う始末だ。
 馬鹿は余計だとおもうの。

 開かれる門をくぐる。
 各建物の前には立哨。

 ゲッコーさんの元で酒造りはされているが、酒は国において財を得る手段の一つでもあり、こうやって国自体が酒蔵一帯の護衛もしてくれるわけだ。
 加えてポーション作りも第三セクターでやっているから、警備はかなり厳重になっているんだろうな。

 壁上の立哨同様に、皆、眼光が鋭い精鋭である。
 以前までの弱腰の弱卒とはかけ離れた、頼りになる存在だ。

 立哨と共に目立つのは、全身を白い服にて身を包んだ存在が走り回っている。
 人間、ドワーフ、新しく王都の住人になったコボルトの姿もあった。

 手には桶やたらいを持ち、服だけでなく、同色の手ぬぐいを頭と口に巻いて建物から建物へと移動している。
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