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増やそう経験
PHASE-333【なぜに皆して上を脱ぐ……】
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王様や貴族たちの明るい笑みを湛える姿を目にすれば、先生やゲッコーさんの言っていた、俺に負けは許されないっていう発言が胃をキリキリとさせてくるね……。
まあベルにはボコボコに負けてるけども。仲間内なのでもちろんノーカンなのだが。
「あらましは荀彧殿から今聞いた」
俺がおっさん達にハグやら握手をされている間に、話を進めてくれている先生。
助かりますと会釈をすれば、俺の方に体を向けて、先生も会釈を返してくれる。
先生の姿勢が真っ直ぐに伸びたところで王様が口を開く。
「しかしダイヒレンを記念硬貨のシンボルと考えるとは、トールの発想は他者の想像の枠外であるな。流石は天からの使者である」
「しかり。ですが正鵠は射ております」
「旅人。冒険者に兵達が使用するシュールコーはダイヒレンの素材が多くを占めています。生活に溶け込んだ親しみのある存在でしょう」
王様に続くのはナブル将軍、ダンブル子爵。
でっかいGが生活に溶け込んだってのもどうかと思うが……。
心の友の発言で真っ先に俺の頭内を占めたのは、生活に溶け込む前に害虫駆除会社に連絡ってものだ。
肯定的な心の友の発言に、先の二名も鷹揚に頷いて賛同を示している。
残った皆さんもいいのではと、同調の頷きを見せてくれる。
やはり後押しとなったのは、紅髪の美姫に加え、新たに白髪の美鬼の称号を得たベルの存在だろう。
最強の存在がダイヒレンの亡骸を目にして叫び声を上げ取り乱した。
この事は王都全体に知れ渡っているようだ。
もちろん修練場の一件もしっかりとこの王城に轟いていた。
屈強なるギルドの猛者達が、たった一人になすすべも無く壊滅に近い状態に陥り、それにより一日の間、ギルドが麻痺した状態になった事が話題に上がれば、胆力の戻った大貴族の方々も大層に肝を冷やしているようで、両腕をさすりながらぶるりと震えていた。
ベルの話をしている大貴族様の中には、ベル様と様をつける人もいる。
畏敬の念を強く抱いているようだ――――。
「トールの案に異論も出なかった事であるし。このまま記念硬貨のシンボルはダイヒレンとし、貨幣流通の再開を祝して乾杯だ」
「「「「乾杯」」」」
王様が音頭をとり、言葉尻の切れがいい乾杯の輪唱が貴族達によって続く。
ビアマグタイプの白磁の容器になみなみと注がれた酒をグイグイと飲んでいく。
酒宴の場所は謁見の間から移動し、長テーブルが用意されたガボゼと呼ばれる東屋にて開かれる。
石畳と、整えられた芝生。白亜のガボゼの周囲は川から流れる水を利用しただだっ広い池。
王侯貴族が家族なんかと、ゆったりとした時間を過ごすために用意された空間だ。
金持ちになった気分である。
外ということもあってか、開放的になったようで、王様だけでなく貴族の皆様も上半身裸になってから酒を楽しむ。
やはり皆よく鍛え抜かれている。
ナイスカットとついつい口から出そうになったくらいに逞しい。
ハグや握手に加えて、鍛えられた上半身を目にして、打たれ弱そうな貴族のイメージが完全に崩壊してしまった。
上半身裸で色黒の筋肉が隆起した体で、ガブガブと酒を飲む姿は荒々しくもあるが、貴族としての教養があるからか、下品ではない。
飲んで、ゲハハハ――――! と、下品な笑いと共に、口内に残った物を飛ばすなんて事はない。
豪快でありつつ節度もある。
【気品あふれる山賊たちの酒宴】と、命名したい光景である。
「さあさあトール殿も」
心の友であるダンブル子爵はまだまだ鍛えが足りないが、それでも普通の人に比べられば鍛えられているな。
短期間でよくもまあと言いたい。塔の最上階まで登ってきた時は、それだけで死にかけていたのに。
俺の前にも白磁のビアマグが置かれれば、濃い紫の液体が揺らめいている。
色からしてワインだろう。
グイグイとはいけないので、ちびちびと舐めるように飲む。
うむ、独特の渋みのあるワインは、十六の俺にはまだ早いかな。
そもそもが、こんなでっかいビアマグに入れて飲む物じゃないと思うの。
「美味すぎる!!」
俺の横では、ここで合流してきた蔵元こと伝説の兵士が、誰よりも早くワインの味を堪能し、さっきからずっと喜んでいる光景。
親の声より聞いた台詞を耳朶に入れながら、俺もワインを更に一口。
渋みがあるが、不思議と嫌な渋さではなくスッキリとしている。
なので一口目は抵抗があったのだが、自然と二口、三口と進み、口内がさわやかさに染め上げられていく。
まあベルにはボコボコに負けてるけども。仲間内なのでもちろんノーカンなのだが。
「あらましは荀彧殿から今聞いた」
俺がおっさん達にハグやら握手をされている間に、話を進めてくれている先生。
助かりますと会釈をすれば、俺の方に体を向けて、先生も会釈を返してくれる。
先生の姿勢が真っ直ぐに伸びたところで王様が口を開く。
「しかしダイヒレンを記念硬貨のシンボルと考えるとは、トールの発想は他者の想像の枠外であるな。流石は天からの使者である」
「しかり。ですが正鵠は射ております」
「旅人。冒険者に兵達が使用するシュールコーはダイヒレンの素材が多くを占めています。生活に溶け込んだ親しみのある存在でしょう」
王様に続くのはナブル将軍、ダンブル子爵。
でっかいGが生活に溶け込んだってのもどうかと思うが……。
心の友の発言で真っ先に俺の頭内を占めたのは、生活に溶け込む前に害虫駆除会社に連絡ってものだ。
肯定的な心の友の発言に、先の二名も鷹揚に頷いて賛同を示している。
残った皆さんもいいのではと、同調の頷きを見せてくれる。
やはり後押しとなったのは、紅髪の美姫に加え、新たに白髪の美鬼の称号を得たベルの存在だろう。
最強の存在がダイヒレンの亡骸を目にして叫び声を上げ取り乱した。
この事は王都全体に知れ渡っているようだ。
もちろん修練場の一件もしっかりとこの王城に轟いていた。
屈強なるギルドの猛者達が、たった一人になすすべも無く壊滅に近い状態に陥り、それにより一日の間、ギルドが麻痺した状態になった事が話題に上がれば、胆力の戻った大貴族の方々も大層に肝を冷やしているようで、両腕をさすりながらぶるりと震えていた。
ベルの話をしている大貴族様の中には、ベル様と様をつける人もいる。
畏敬の念を強く抱いているようだ――――。
「トールの案に異論も出なかった事であるし。このまま記念硬貨のシンボルはダイヒレンとし、貨幣流通の再開を祝して乾杯だ」
「「「「乾杯」」」」
王様が音頭をとり、言葉尻の切れがいい乾杯の輪唱が貴族達によって続く。
ビアマグタイプの白磁の容器になみなみと注がれた酒をグイグイと飲んでいく。
酒宴の場所は謁見の間から移動し、長テーブルが用意されたガボゼと呼ばれる東屋にて開かれる。
石畳と、整えられた芝生。白亜のガボゼの周囲は川から流れる水を利用しただだっ広い池。
王侯貴族が家族なんかと、ゆったりとした時間を過ごすために用意された空間だ。
金持ちになった気分である。
外ということもあってか、開放的になったようで、王様だけでなく貴族の皆様も上半身裸になってから酒を楽しむ。
やはり皆よく鍛え抜かれている。
ナイスカットとついつい口から出そうになったくらいに逞しい。
ハグや握手に加えて、鍛えられた上半身を目にして、打たれ弱そうな貴族のイメージが完全に崩壊してしまった。
上半身裸で色黒の筋肉が隆起した体で、ガブガブと酒を飲む姿は荒々しくもあるが、貴族としての教養があるからか、下品ではない。
飲んで、ゲハハハ――――! と、下品な笑いと共に、口内に残った物を飛ばすなんて事はない。
豪快でありつつ節度もある。
【気品あふれる山賊たちの酒宴】と、命名したい光景である。
「さあさあトール殿も」
心の友であるダンブル子爵はまだまだ鍛えが足りないが、それでも普通の人に比べられば鍛えられているな。
短期間でよくもまあと言いたい。塔の最上階まで登ってきた時は、それだけで死にかけていたのに。
俺の前にも白磁のビアマグが置かれれば、濃い紫の液体が揺らめいている。
色からしてワインだろう。
グイグイとはいけないので、ちびちびと舐めるように飲む。
うむ、独特の渋みのあるワインは、十六の俺にはまだ早いかな。
そもそもが、こんなでっかいビアマグに入れて飲む物じゃないと思うの。
「美味すぎる!!」
俺の横では、ここで合流してきた蔵元こと伝説の兵士が、誰よりも早くワインの味を堪能し、さっきからずっと喜んでいる光景。
親の声より聞いた台詞を耳朶に入れながら、俺もワインを更に一口。
渋みがあるが、不思議と嫌な渋さではなくスッキリとしている。
なので一口目は抵抗があったのだが、自然と二口、三口と進み、口内がさわやかさに染め上げられていく。
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