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極東
PHASE-456【ワンドにこだわる意味が分からない】
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俺とコクリコが口角泡を飛ばすとばかりの中で、クスリと鈴を転がすような笑い声をもらしたのはベル。
柔和な表情に見とれてしまう。
「ど、どうしたんだ?」
動悸が高くなっているからか、上擦った声になってしまった。
「いや、随分と余裕があると思ってな」
「余裕なんかあるわけないだろう。いっぱい、いっぱいだよ。ベル達がいるから少しは平静でいられるんだ」
「そうなのか」
おっと、照れていらっしゃる。今の発言はポイントが高かったようだ。
「ベル達の足を引っ張らないように頑張るさ」
ここで好感度を更に上げたいと思う俺。
「励めよ」
「おう!」
――……元気に返事はしてみたが、ベルの喜ぶ姿から分かるのは、やはり上官と部下との関係性が強いような気がしてならない。
せっかく照れた表情が見られたのに、直ぐに凛としたものに変わってしまった。
まあ好感度は上がっているからな。そこは維持しよう。いつもこの辺で俺は調子に乗って痛い目に遭うからな。
「足は引っ張らないように」
「お前は調子に乗るなよな!」
再び始まるコクリコとの言葉のどつき合い。
「あ、あの……」
申し訳なさそうに、俺たちの中に割って入ってきたのはランシェル。
「どうした? 話なら聞くぞ」
俺の事を騙していた後ろめたさがあるようだが、俺は気にしないとばかりに軽い口調で返す。
正直、騙して精気を奪い、意のままにするって事に荷担していたというより、実は男だった。という衝撃の方が大きかったからな。
「私も連れて行ってくださいませんか」
「お、なぜに?」
「少しでもお役に立って罪滅ぼしをしたいのです。足手まといにはなりません。それに主であるリズベッド様を救い出したいのです」
「リズベッド。主って事だから」
「はい。我らが魔王様です。トール様、お願いします。私も一行に加えてください」
移動中の食事などの生活面のお世話もしてくれるらしい。
回廊での戦闘で見せたランシェルの動きは見事なものだった。俺と戦った時は本気ではなかっただろうし、戦いの場では活躍してくれるだろう。
力仕事もお任せくださいと付け加えてきた。
そら男だからな。とは、口には出さない俺は紳士。
「などと言いつつ、後ろから私達を……」
空気の読めないコクリコがはっきりと言ってしまう。
こういう時の空気を読まない力ってのは欠点でもあるが、長所でもあるよな。
「その心配はないさ」
主を救いたいという気持ちは本物だし、それを自分たちでは出来ないから、俺たちにお願いしているわけだし。
「この命にかけて虚言は述べません。私はシャルナ様同様に回復魔法も使えますので、お役に立つと思います」
回復魔法はありがたいね。
でも、ゼノに仕置きという暴力を受けて、なぜ回復魔法を使用しなかったのか? と、聞きたかったが、普通にメイドをしているだけの存在がそんなの使えば、俺たちに怪しまれるからだよな。と、問う前に勝手に理解して、咀嚼して嚥下。
「なん……だと…………」
回復魔法が使えると知ったところで、ノービスさんが自分の立ち位置が揺らぐのではと戦々恐々。
回復魔法が使える時点で、俺のパーティーでの優位性はランシェルの方が上になってしまうよね。
恐る恐る攻撃魔法が使用出来るのかと聞いてみれば、ランシェルは使えないと返していた。それを聞いて安堵しているが、ファイヤーボールクラスなら、ゲッコーさんのグレポンとかでいいし。シャルナもいるし。お前のパーティーでのレゾンデートルは、魔闘家――――というより、武道家として頑張っていくしか存在できないと思うんだが。
「爪系の武器でも侯爵に頼んで準備してもらうか?」
「私が手にするのはワンドのみです」
なんなのそのこだわり。
メイドさんとの戦闘では、ワンドから魔法は出さないで、そのワンドで剣を捌いたり、メイドさんを突いていたよな。
もやは打撃武器として使用しているよね。
「爪が駄目なら、強度のある棍棒か、メイスみたいなのを用意してもらうか?」
「トール。私はロードウィザードですよ。そんな物を使うわけないでしょう」
鼻で笑ってきやがる。
お前の戦闘スタイルを目にした人なら、俺の考えが正しいと首肯してくれるぞ。
ウィザードと自負したいなら、それっぽい戦いをメインにしろ。
後衛にいろ! 常に後衛に布陣しろ!
香港映画みたいに動きがど派手すぎて、前衛というイメージしかないんだよ。
柔和な表情に見とれてしまう。
「ど、どうしたんだ?」
動悸が高くなっているからか、上擦った声になってしまった。
「いや、随分と余裕があると思ってな」
「余裕なんかあるわけないだろう。いっぱい、いっぱいだよ。ベル達がいるから少しは平静でいられるんだ」
「そうなのか」
おっと、照れていらっしゃる。今の発言はポイントが高かったようだ。
「ベル達の足を引っ張らないように頑張るさ」
ここで好感度を更に上げたいと思う俺。
「励めよ」
「おう!」
――……元気に返事はしてみたが、ベルの喜ぶ姿から分かるのは、やはり上官と部下との関係性が強いような気がしてならない。
せっかく照れた表情が見られたのに、直ぐに凛としたものに変わってしまった。
まあ好感度は上がっているからな。そこは維持しよう。いつもこの辺で俺は調子に乗って痛い目に遭うからな。
「足は引っ張らないように」
「お前は調子に乗るなよな!」
再び始まるコクリコとの言葉のどつき合い。
「あ、あの……」
申し訳なさそうに、俺たちの中に割って入ってきたのはランシェル。
「どうした? 話なら聞くぞ」
俺の事を騙していた後ろめたさがあるようだが、俺は気にしないとばかりに軽い口調で返す。
正直、騙して精気を奪い、意のままにするって事に荷担していたというより、実は男だった。という衝撃の方が大きかったからな。
「私も連れて行ってくださいませんか」
「お、なぜに?」
「少しでもお役に立って罪滅ぼしをしたいのです。足手まといにはなりません。それに主であるリズベッド様を救い出したいのです」
「リズベッド。主って事だから」
「はい。我らが魔王様です。トール様、お願いします。私も一行に加えてください」
移動中の食事などの生活面のお世話もしてくれるらしい。
回廊での戦闘で見せたランシェルの動きは見事なものだった。俺と戦った時は本気ではなかっただろうし、戦いの場では活躍してくれるだろう。
力仕事もお任せくださいと付け加えてきた。
そら男だからな。とは、口には出さない俺は紳士。
「などと言いつつ、後ろから私達を……」
空気の読めないコクリコがはっきりと言ってしまう。
こういう時の空気を読まない力ってのは欠点でもあるが、長所でもあるよな。
「その心配はないさ」
主を救いたいという気持ちは本物だし、それを自分たちでは出来ないから、俺たちにお願いしているわけだし。
「この命にかけて虚言は述べません。私はシャルナ様同様に回復魔法も使えますので、お役に立つと思います」
回復魔法はありがたいね。
でも、ゼノに仕置きという暴力を受けて、なぜ回復魔法を使用しなかったのか? と、聞きたかったが、普通にメイドをしているだけの存在がそんなの使えば、俺たちに怪しまれるからだよな。と、問う前に勝手に理解して、咀嚼して嚥下。
「なん……だと…………」
回復魔法が使えると知ったところで、ノービスさんが自分の立ち位置が揺らぐのではと戦々恐々。
回復魔法が使える時点で、俺のパーティーでの優位性はランシェルの方が上になってしまうよね。
恐る恐る攻撃魔法が使用出来るのかと聞いてみれば、ランシェルは使えないと返していた。それを聞いて安堵しているが、ファイヤーボールクラスなら、ゲッコーさんのグレポンとかでいいし。シャルナもいるし。お前のパーティーでのレゾンデートルは、魔闘家――――というより、武道家として頑張っていくしか存在できないと思うんだが。
「爪系の武器でも侯爵に頼んで準備してもらうか?」
「私が手にするのはワンドのみです」
なんなのそのこだわり。
メイドさんとの戦闘では、ワンドから魔法は出さないで、そのワンドで剣を捌いたり、メイドさんを突いていたよな。
もやは打撃武器として使用しているよね。
「爪が駄目なら、強度のある棍棒か、メイスみたいなのを用意してもらうか?」
「トール。私はロードウィザードですよ。そんな物を使うわけないでしょう」
鼻で笑ってきやがる。
お前の戦闘スタイルを目にした人なら、俺の考えが正しいと首肯してくれるぞ。
ウィザードと自負したいなら、それっぽい戦いをメインにしろ。
後衛にいろ! 常に後衛に布陣しろ!
香港映画みたいに動きがど派手すぎて、前衛というイメージしかないんだよ。
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