異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

FOX4

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死霊魔術師

PHASE-571【またボッチ】

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「中々にきりがないな。数だけは多い」
 グゥレイトォ! 数だけは多いぜ! って言ってもよかったんですよ。ゲッコーさん。
 SG552の引き金を丁寧に引いていき、ヘッドショットにて倒していくがスケルトン達は途切れることなく迫ってくる。
 白骨の大軍にゲッコーさんは面倒くさそうだ。

「AA-12をまた使ってみては?」

「それもいいが、色々と試したいからな」
 何処までの武器が効果的なのか、アサルトライフルなんかでも十分に対応できるのかを調べているらしい。
 ハンドガンでも倒せるけど、多数を相手にする時のTTKタイム・トゥ・キルの効率の悪さは俺で実証されている。

「多少、動き辛い格好だが前に出よう」
 ここでベルが動く。
 毛皮に包まれながらも高速なのは変わらない。
 抜剣からの浄化の炎でスケルトンを消滅させれば、

「!? これはよくなイ」
 やはりと言うべきか、ベルの炎を目にすればエルム街の親戚が警戒を強める。
 戦えばまず間違いなく敗北が訪れると理解したようだ。
 撤退してくれれば御の字。話し合いが出来れば最高。
 なのだが……。
 碁盤目のような町並みから次々と出て来るスケルトン。
 百や二百じゃきかない数だ。
 いくら弱いといっても、数の暴力はこちらの体力を奪ってくる。

「一カ所に固まれば敵に包囲される。分断させるために散開するぞ」
 言って直ぐにゲッコーさんが四方から迫るスケルトンにグレネードを投擲。
 爆発で隊列に穴が出来れば、その部分へと銃を撃ちながら突っ込んでいく。
 突破に成功すればスケルトンがゲッコーさんを追いかけていく。

「さらに分散させる。どう攻めてきたか
 頼りになるベルがゲッコーさんに続く。
 数の多いところにあえて単身で突撃し、多くの敵を引き連れていく。

「いきますよ」

「任せてよ」
 って、コクリコとシャルナまでもが勇猛に敵陣の中に斬り込んで行く。
 二人とも後衛だし、回復魔法はシャルナだけだから無理はしてほしくないのに……。
 なんで俺のパーティーメンバーの女性陣は、こうも強気っ子ばかりなんだよ。

 ――…………。

 ――……。

「いやいや! ちょっとまて! なんで俺を一人にする!」
 しかも……、またこの展開かよ。
 コキコキとした小気味のいいものではなく、首が左右に動けばグリッ! ゴリリッ! と不気味な音を発し、蹲踞の姿勢から跳躍すれば、高所より俺と同じ目線の高さに降りてくる。

「さテ、お前が俺の相手だナ」

「げにまっこと戦いたくないぜよ」
 なんでいつも俺ばっかりがボスクラスを相手にしないといけないんだよ……。
 よりにもよってエルム街の親戚じゃねえか……。
 ベルが感想は後で聞かせてもらうって言っていたな……。
 エルム街の親戚に警戒をしていたが、結局は俺に当てさせるように動くんだな。
 相変わらずのスパルタだ……。

「拒んでも無駄ダ」
 三十センチはある五本の鉄の爪が触れ合えば、キチキチやシャンっといった冷ややかな金属音が響き渡る。
 響かせる原因となった所作は、俺に向けての手招きだ。
 絶対に行きたくない。
 
 ――――が、

「ヒャァァァァァッ!」
 こっちが行かなくても向こうから来る。
 甲高い叫びと共に、身を低くして滑空するように迫ってくる走法。
 黒いトレンチコートを靡かせる走法は、まるで影を従わせているかのようにも見える。

「このヒャッハー系め!」
 仕掛けてくるなら致し方なし。
 残火にて成仏させてやる。
 すでにピリアは使用済み。基本ゾンビはリミッターが外れているってのが相場。
 膂力はかなりのものだろうけど、負ける気はしない。それだけの場数は経験している自負がある。
 でもって、

「ブレイズ」
 炎を纏った残火ならばアンデッドも怖くない。

「!?」
 死者の顔が驚きに変わっている。こんな所に少数で来てんだ。少しは出来るヤツと思って欲しいね。

「おりゃ」
 身を低くして迫ってくるエルム街の親戚に炎の刀身で袈裟斬り。
 ギャキンといった劈き音と一緒に、俺の残火の動きが止まる。
 押し込んだが止められてしまった。
 鉱物だろうが鋼鉄だろうが、バターのように斬る事が可能な残火の一振りを止めた。しかもブレイズが刀身に付与された状態の一振りを。

 驚きから一転してゾンビの口角が得意げに上がる。
 アンデッドの笑みは生者にとっては不気味なだけだ。
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