異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

FOX4

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死霊魔術師

PHASE-574【接近タイプ、遠距離タイプ】

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「魔力耐性のある装備か」

「その通りダ。そしてその発言で理解しタ。お前も魔力耐性のある装備だナ」

「当たり前だろう」
 こちとら火龍と新たに地龍の加護を授かってるぜ。
 どういう効果なのかまでは口にはしないけど。

「ならば――――もういいゾ」
 なにがいいのかな? 多分だけど、俺に背後から攻撃を加えていたヤツに話しかけているんだろうな。
 やはり第三者がいたようだ。

 ――ズッ、ゾゾゾゾゾ――――、地を勢いよく這ってくるような音がする。
 接近音が近づいてくれば、ゆっくりとしたゾリゾリという這いずり音に変わる。
 デカい蛇のモンスターなのかと思えばそうではない。

「うえ……」
 姿を現したのは下半身のない人間型のゾンビ。
 手入れがされていないクセのある伸びた茶色の髪が、顔全体を覆っている。
 背を反らせると覆っていた髪の間から、わずかだが顔が窺える。
 目は落ちくぼんだどころか、眼窩そのものに目がない。スケルトンみたいに淡い光が宿っている事もなく、闇が支配していた。
 上半身は黒衣のローブ。
 顔と、ローブから出ている皮だけの骨張った手の肌の色は、よどんだ青色。
 下半身は無いけども、別段その部分から内蔵が飛び出ているってことじゃないので助かる。
 切断されていると思われる下半身は、しっかりと筋肉によって覆われていた。

「なぜ効かない?」
 下半身はあれだけど、喋り方はエルム街の親戚よりはちゃんとしている。

「装備ダ」

「なるほど」

「お宅が遠距離から攻撃をしかけてたんだな」

「そうだ」
 お喋りタイムとなったので、こいつらの正体をプレイギアで素早くチェック。
 エルム街の親戚の名前は、名乗ったとおりビッシュ・クルーガー。
 種族はストレイマーターというアンデッドだった。
 弱点は火炎系のようだけど、装備品でその弱点を克服。
 レベルは54と、魔大陸の要塞で戦った者達と比較すれば、副官クラスのウルクに近い。
 
 俺に後方から遠距離攻撃を仕掛けて来たのは、ローバークロウラーというアンデッド。
 名前は……、アンデス・エーデルワイス。アンデッドには似合わない愛らしい名前をしていた。
 コイツのレベルも54とストレイマーターと同等。
 不得手は火炎となっているけど、ストレイマーターのコートのように、あの黒衣のローブにも弱点を克服するための耐性が付与されていると考えていいだろう。
 得手の一つに毒系魔法と記されていた。
 
「ストレイマーターに、ローバークロウラーのアンデス・エーデルワイスね。分かった」

「「!?」」
 揃って驚くわな。
 前者はともかく、後者は名乗っていないんだから。

「遠距離からの毒魔法はなんなんだ? ちなみに教えてやるが、俺には毒による攻撃は一切効果が無いからな」

「理解した。ただ者ではないな。ビッシュ」

「だろウ。アンデス」

「俺が使用したのはポイズンフレイルだ」
 なるほどフレイルか。衝撃が打撃系に似ているからそんな魔法名になってんだろうな。
 強烈な衝撃と追加ダメージ――というか、メインであろう毒攻撃による二段構えの中位魔法。
 対個に対しての強力な魔法なんだそうだ。
 戦法はストレイマーターがヒット&アウェイでこっちの注意を引き付け、背後からの長距離魔法での狙撃にて勝利するってのが常套のようだ。
 端から一対一ってわけじゃなかったようだな。
 そもそもタイマン発言はなかったしな。

「さて、対面も終えた。本気で行くぞ」

「分かっタ」

「本気で行くとか、そんな発言をすれば負けルートだぜ」

「訳の分からんことを」

「さっきからそうダ。エルムガイがどうとかナ」
 会話を交わしつつエルム街の親戚ことストレイマーターが接近。
 俺に爪による斬撃攻撃を行い、それが防がれれば、追撃の攻撃をせずに後方に下がるという、今までのコンボ攻撃とは違うスタンス。
 スタンスが変わる。即ち戦法にも変更があるということ。
 次に目に飛び込んできたのは、ローバークロウラーの前方で、キラキラと無数の物体が光を反射している光景。

「フリーズホーネット」
 下半身がないのに上手く体を反らして上体をしっかりと起こすと、広げた諸手の骨張った指先から、小さな氷の刃が顕現し連射される。
 無数の刃が俺を翼包囲するようにして襲いかかってくる――――。
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