異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

FOX4

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死霊魔術師

PHASE-605【やっちゃえ♪】

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「何を二人でイチャイチャと話しているのかしら」

「羨ましいなら仲間に入れてやってもいいぞ」

「いい男を気取っているわね。もう少し顔を整えてから言いなさい」
 ――…………。
 ――……ひでえじゃねえか……。
 何とも抉ってくる攻撃じゃねえか。リンさんよ。

「気にするな。男は顔ではない。生き様だ」
 ちょっと待って。嬉しい反面、ベルも俺の顔の事を残念な方だと思っているのか?
 だとしても、生き様さえしっかりとしていれば、俺のような残念フェイスでもベルと素晴らしい関係になれるのでしょうか?
 
 なれるのでしょうか!!!!

「だから目の前でイチャイチャしないの!」

「していない。話をしているだけだ。話せるだけの余裕がある証拠。つまりは貴女の攻撃は大したことがないと言うことだ」

「本当に生意気ね――白髪ちゃん!」
 花弁部分から手をこちらへと向けてくれば、

「アシッドレイ」
 紫色の帯が、リンより直線を描きながら俺たちに向かってくる。
 名前からして酸のレーザーみたいなもんだろう。

「綺麗な顔を毒酸で溶かしてあげる」

「おっかねえ事を言う美人だな」
 台詞を耳にしてからベルの前へと立つ。
 イグニースは使用しないで、籠手で顔を隠しながらのピーカブースタイルで受け止める。

「馬鹿なの貴男!」

「馬鹿ではない。なぜかって? それは俺には毒が通用しないからだよ!」
 受けきった後、大の字になって効果が無いことを見せつけてやる。

「マスター。あの人、炎も通用しなかったよ」

「加えて毒も効かないなんてね。大した存在よ」
 もっと褒めてくれても結構だ。

「感謝するぞ」

「仲間を第一に考える戦いが勇者のだから」

「そうだな。素晴らしいぞ」

「ですよね」

「なぜ鼻の穴が膨らんでいるのかは分からんが……」
 男は生き様。この言葉を胸に刻み、俺はベルに男としての生き様を見せる事に専念します。
 でもって、好きになってもらえるように努力します。

「やっちゃえガシャドクロ♪」
 可愛げな声に合わせて肩越しに見れば、立ち上がろうとするガシャドクロの姿。
 なので――、

「やっちゃえゲッコーさん♪」
 と、対抗するようにオムニガルを真似て可愛らしい声で言ってみれば、

「……やる気が削がれる」
 と、げんなりしたゲッコーさんからの返答。
 でもしっかりと劈く短い音が耳朶に届くと同時に、ガシャドクロがまたも五体投地。

「なんなのよアレ! マスター!」

「面倒くさいのを使用しているわね。こっちに向けられても困るし、気を散らせないと」
 そう言ってフィンガースナップ。
 ワラワラとグレータースケルトンがゲッコーさん達の前へと現れる。

「まあ、そうくるよな。が、問題ない。前衛は目の前の相手に集中してくれ」

「我々の力を見せつけてやります」

「安心していいよ。大きいのも小さいスケルトンも私達が対応するから」
 後衛からの心配を感じさせない声が届けば鼓舞されるというもの。

「ただ巨大になっただけで芸当はないのかな?」
 ベルの挑発じみた問いに対して、

「有るに決まっているでしょ」
 返してくる言葉と同時に、妖華の背後に輝く逆五芒星が顕現。
 神々しい輝きはアンデッドには相応しくないものだ。

「この力の間全体に対しての範囲魔法で仕留めてあげる」
 おっと、そんなもんを使用されると、どうやって防げば良いのか対処に困るな。

「そうなったらガシャドクロやスケルトン達だってただじゃすまないぞ」

「私はネクロマンサーよ。消滅しても再び使役するくらいわけない。それに後方のおじさまがいる限りガシャドクロも力を発揮出来ないし。だったら一気に片付けるのが妙手でしょ。これからの攻撃に耐えきったら褒めて上げる」
 語末の言い様。まるで俺たちを試すような語調だな。
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