異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

FOX4

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死霊魔術師

PHASE-606【杉花粉よりたちが悪い】

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「さて一気に仕上げといきましょうか」

「んなことは、その範囲魔法を使用してから言うんだな」
 跳躍して一気に花弁部分まで移動し、花びらに着地地点を定めたところで、茎から生えてきたトゲが矢のように放たれた。
 イグニースによって防ぐも攻撃は出来ずじまいだ。

「ごめんね~。これ二人乗りなの」

「くっそ!」

「交代しよう」
 落下していく俺の横をベルが上がっていく。

「貴女だけは絶対に来てほしくないわけよ」
 トゲの連射と、蔓を束にして巨木のような形状へと変えてベルへと振り下ろす。
 だけど意味はない。
 ベルが体に纏う炎は何人にも防ぐことも止める事も出来やしない。

「本当に何なの!? 理の外とか! フロックエフェクト。アーチプロテクション!」

「ほう」
 堅牢な障壁が二重となって顕現。
 だがベルのレイピアの前では無意味であり、浄化の炎が堅牢な二重の障壁を断ち切る。

「オムニガル!」

「任せてマスター」
 床に転がる装備者のいなくなった防具を操り、幾重もの壁として利用することで、ようやくベルの進行を止める事に成功。
 こっちとしては失敗なんだけども。
 進行を止めた事に、妖華の二人組が本気で安心している表情が印象的だった。

「うん」
 俺の横に着地すれば一つ頷き、

「こういう時、飛行魔法が使用出来ればいいのにな。トールは早急に飛行魔法を覚えるべきだ」

「ご無体な……」

「いや、今後の事も考え短時間でもいいから飛行出来るように習得に励め」

「ああ、はい……」
 これは絶対に覚えないと怒られるやつだな。
 勇者として、男としての生き様をベルへと見せると決めたばかりだしな。
 ここから戻ったらリズベッドにコツだけ教えてもらおう。
 本当ならちゃちゃっと習得できるんだろうけど、お手軽方法は横の中佐が許してくれないだろうからな。

「もう一度、仕掛けるぞ」

「任せろ」
 二人で切っ先を妖華の花弁へと向けて、

「冗談じゃないわよ。お手軽に何度も接近なんか許してあげない」
 背後のガシャドクロとグレーターはゲッコーさんたち三人が対応してくれている。
 その間に決着といきたいが――、

「エビルプラント。ヴェノムポレン」
 キラキラとした花粉が妖華より降り注ぐ。
 ヴェノムだから猛毒なんだろうが、俺には通用しないし、ベルも炎を纏っているから問題ないだろう。
 が、問題ありの面子もいる。

「ゲッコーさん」
 現在ガシャドクロをダウンさせ続けるゲッコーさんと、周囲のグレーター達を倒しているコクリコとシャルナ。

「ガスマスクで対応する」
 素早く宙空より取り出して二人に手渡せば、慣れた動きで素早く着用。

「毒回避の兜みたいだけど、皮膚からも入り込むからね~」
 楽しげなオムニガル。
 皮膚からも毒が回るとなれば話は別だ。
 花粉から少しでも離れるように距離を取るコクリコとシャルナ。
 シャルナがプロテクションを展開しようとすればグレーターによって阻止される。
 ガシャドクロも勢いづこうと動くが、そこはゲッコーさんがレールガンでしっかりと対処してくれる。
 が、レールガンによる攻撃は一時中断する事になる。
 スニーキングスーツは密閉性の高いものでもあるから毒花粉が体に入ってくる可能性は低いから射撃には支障が出ないだろうけど、残った二人は別。
 ゲッコーさん、念のためとばかりにアンチドーテを体にかけてからレールガンより離れて、シャルナにプロテクションを展開させるために掩護を行う。
 
 ドーム状のプロテクションを展開すれば、即座に三人がそこへと避難。
 グレーター達が挑発とばかりに障壁に剣を振り下ろす。

 この間にフリーになったガシャドクロは破壊された部分を修復させて動き出す。

「任せる」
 一言言い残してベルが疾駆。
 フリーになった巨体へとレイピアを振るっていく。
 
 斬撃部分が浄化の炎によって灰燼となるが、全体に炎が広がる前にその部分をパージするかのように切り離し、全体浄化を逃れるという中々のテクニックを見せてくれる。
 
 一人になった俺は皆の行動を目にしつつ、迫るトゲや蔓を躱したり、切り払いや防ぐとこで対処、専念。
 リンとオムニガルに事が有利に運ぶかのように、無駄に時間だけが経過するよろしくない状況。
 心なしか妖華後方に顕現した後光の輝きが強さを増しているように思えた。
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