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北伐
PHASE-717【回天の意味】
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「会頭」
「リリエッタ嬢、久しぶり」
栗毛の髪を揺らしつつ俺へと駆け寄る、主にクエストの受付を担当してくれている美人さん。
「助かります。あれだけの装備を集めてくださって」
「ダンジョンに潜って取ってきたんだよ」
「私とです」
俺の後ろから横に移動して得意げなコクリコ。
イルマイユのいたダンジョンでの品々は全てギルドハウスに無事に運ばれたようだね。
俺たちが王城へと行っている間に、メイドさん達やS級さん達が作業をこなしてくれて助かった。
「チコは?」
「ええっと、あの魔獣は荀彧様がお飼いになっているヒッポグリフとワイバーンと同じ厩舎に」
うん。ワイバーンは、侯爵から貸してもらっているだけなんだけど。ギルド内では先生が飼い主として定着しているのかな?
借りパクだけは避けたいので、ちゃんと侯爵に話しておかないとな。
しかも希少なスピットワイバーンだしな。パトロンの機嫌を損なわせてはいけない。
作業を終えたメイドさんやS級さん達。それにリズベッドの供回りである亜人さん達は、現在ギルドハウスの二階と三階で休んでくれているそうだ。
亜人さん達はすんなりと自分たちを受け入れてくれた事に驚いてもいたらしい。
ここではコボルトが人間と対等な関係で働いているしね。
亜人を差別しようものなら、最強の後ろ盾であるベルの怒りを買うことになる。
この部分は新米さん達でもギルドに入った時にしっかりと教え込まれている事だろう。
「トール。それよりも認識票をください」
「てことなんでリリエッタ嬢、コクリコに認識票を」
「色は?」
「紫で!」
「違うよ。白でお願い」
チッっと舌打ちが横から返ってくる。
コツコツと頑張っていくって事だっただろ。
俺と一緒に普通人は一歩一歩だぞ。
「あの。とりあえず名前の部分は金色で」
「伝えておきます」
差別化をしたいところはブレないな。コクリコ。
クラックリックやリリエッタ嬢と一階で話しをしている間も、ざわつきは大きくなる。
「あれが俺たちの会頭」と聞こえれば「その通りだぞ」と、返している声も聞こえてくる。
「凄い」「偉大な勇者」「奇跡の人」――などと、背中がむず痒くなってくる発言が方々から浴びせられる。
もちろんコクリコの事も木壁の時と同様に、新人さん達から尊敬の眼差しと言葉が向けられた。
気をよくしたコクリコさんは、
「メンバーだけでなく、一般の冒険者の皆さん。今回の食事代はこのロードウィザードであるコクリコ・シュレンテッドが出しましょう! 好きなものを好きなだけ食べて飲んでください」
俺もコクリコも今やお金持ちだからな。
日本円で八千万くらいを所持している。それだけあれば奢っても減らないという所から来る強気発言だろう。
大金は貯蓄。と、健全な発言をしたコクリコだったけど、出す時は出すようだ。
ある意味、成功者の金の使い方に似ている。
これには拍手喝采とお礼の嵐。
テーブルの上に立ち、大の字になってそれを受け、悦に入る。
ベルがいたら拳骨だったな。
「では会頭、音頭を」
おっとクラックリック。無茶振りが過ぎるな。
そう言うのはコクリコにやって欲しいのに。コクリコが奢るわけだし。
俺としては久しぶりの自室で、今後にそなえてゆっくりとしたかったんだけどな。
「会頭ですからね。ここは譲りましょう」
そうですか。嬉しくないよコクリコさん……。
でも会頭として挨拶もしないといけないのも事実。初めて見る顔もちゃんと見ておきたいし。
クラックリックから木製のタンカードを手渡される。
アワアワが注がれたタンカードだ。
話によると、ゲッコーさんの酒蔵で出来たビールだという。
上面発酵のエールだとクラックリックから教えてもらった。
酔って熱く語るギムロンから何度も聞かされた知識らしい。
上面だの下面発酵のラガーだのと言われて分かるのは、蔵元とギムロン達だけだろうよ。
タンカードを片手に、二階へと続く踊り場まで移動して――、
「困窮した世界の中で日夜励んでくれてありがとう。俺を含め、皆の活躍は世界から見れば小さいものだろうけど、お互いが協力して、小さい活動をコツコツとこなしていくことで大きなものへとしていこう。世界を良い方へと変えていこう。皆の力が天下の形勢を一変させる。それ即ち――回天。皆で今の情勢を覆してやろう! ジャイアントキリング見せてやろうぜ!」
タンカードを掲げれば勢いで泡が躍動する。
躍動した泡が一階の床にこぼれ落ちると、それを合図としたかのように、
「「「「おお!!!!」」」」
体の中にまでズンズンと響く歓声が返ってくる。
今回のは、当たり障りの無い発言とは一味違ったものだっただろう? コクリコ。
お前の引き出しに回天なんて言葉はあるまいよ。
「リリエッタ嬢、久しぶり」
栗毛の髪を揺らしつつ俺へと駆け寄る、主にクエストの受付を担当してくれている美人さん。
「助かります。あれだけの装備を集めてくださって」
「ダンジョンに潜って取ってきたんだよ」
「私とです」
俺の後ろから横に移動して得意げなコクリコ。
イルマイユのいたダンジョンでの品々は全てギルドハウスに無事に運ばれたようだね。
俺たちが王城へと行っている間に、メイドさん達やS級さん達が作業をこなしてくれて助かった。
「チコは?」
「ええっと、あの魔獣は荀彧様がお飼いになっているヒッポグリフとワイバーンと同じ厩舎に」
うん。ワイバーンは、侯爵から貸してもらっているだけなんだけど。ギルド内では先生が飼い主として定着しているのかな?
借りパクだけは避けたいので、ちゃんと侯爵に話しておかないとな。
しかも希少なスピットワイバーンだしな。パトロンの機嫌を損なわせてはいけない。
作業を終えたメイドさんやS級さん達。それにリズベッドの供回りである亜人さん達は、現在ギルドハウスの二階と三階で休んでくれているそうだ。
亜人さん達はすんなりと自分たちを受け入れてくれた事に驚いてもいたらしい。
ここではコボルトが人間と対等な関係で働いているしね。
亜人を差別しようものなら、最強の後ろ盾であるベルの怒りを買うことになる。
この部分は新米さん達でもギルドに入った時にしっかりと教え込まれている事だろう。
「トール。それよりも認識票をください」
「てことなんでリリエッタ嬢、コクリコに認識票を」
「色は?」
「紫で!」
「違うよ。白でお願い」
チッっと舌打ちが横から返ってくる。
コツコツと頑張っていくって事だっただろ。
俺と一緒に普通人は一歩一歩だぞ。
「あの。とりあえず名前の部分は金色で」
「伝えておきます」
差別化をしたいところはブレないな。コクリコ。
クラックリックやリリエッタ嬢と一階で話しをしている間も、ざわつきは大きくなる。
「あれが俺たちの会頭」と聞こえれば「その通りだぞ」と、返している声も聞こえてくる。
「凄い」「偉大な勇者」「奇跡の人」――などと、背中がむず痒くなってくる発言が方々から浴びせられる。
もちろんコクリコの事も木壁の時と同様に、新人さん達から尊敬の眼差しと言葉が向けられた。
気をよくしたコクリコさんは、
「メンバーだけでなく、一般の冒険者の皆さん。今回の食事代はこのロードウィザードであるコクリコ・シュレンテッドが出しましょう! 好きなものを好きなだけ食べて飲んでください」
俺もコクリコも今やお金持ちだからな。
日本円で八千万くらいを所持している。それだけあれば奢っても減らないという所から来る強気発言だろう。
大金は貯蓄。と、健全な発言をしたコクリコだったけど、出す時は出すようだ。
ある意味、成功者の金の使い方に似ている。
これには拍手喝采とお礼の嵐。
テーブルの上に立ち、大の字になってそれを受け、悦に入る。
ベルがいたら拳骨だったな。
「では会頭、音頭を」
おっとクラックリック。無茶振りが過ぎるな。
そう言うのはコクリコにやって欲しいのに。コクリコが奢るわけだし。
俺としては久しぶりの自室で、今後にそなえてゆっくりとしたかったんだけどな。
「会頭ですからね。ここは譲りましょう」
そうですか。嬉しくないよコクリコさん……。
でも会頭として挨拶もしないといけないのも事実。初めて見る顔もちゃんと見ておきたいし。
クラックリックから木製のタンカードを手渡される。
アワアワが注がれたタンカードだ。
話によると、ゲッコーさんの酒蔵で出来たビールだという。
上面発酵のエールだとクラックリックから教えてもらった。
酔って熱く語るギムロンから何度も聞かされた知識らしい。
上面だの下面発酵のラガーだのと言われて分かるのは、蔵元とギムロン達だけだろうよ。
タンカードを片手に、二階へと続く踊り場まで移動して――、
「困窮した世界の中で日夜励んでくれてありがとう。俺を含め、皆の活躍は世界から見れば小さいものだろうけど、お互いが協力して、小さい活動をコツコツとこなしていくことで大きなものへとしていこう。世界を良い方へと変えていこう。皆の力が天下の形勢を一変させる。それ即ち――回天。皆で今の情勢を覆してやろう! ジャイアントキリング見せてやろうぜ!」
タンカードを掲げれば勢いで泡が躍動する。
躍動した泡が一階の床にこぼれ落ちると、それを合図としたかのように、
「「「「おお!!!!」」」」
体の中にまでズンズンと響く歓声が返ってくる。
今回のは、当たり障りの無い発言とは一味違ったものだっただろう? コクリコ。
お前の引き出しに回天なんて言葉はあるまいよ。
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