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北伐
PHASE-780【必殺必中】
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「次は同時に撃つ」
呼応するように構えたS級さん達は、各々がターゲットと決めた者達に対して弾丸を撃ち込む。
全てが必殺必中。
「お見事」
五百メートル先であろうとも確実に頭部を撃ち抜くのはお見事としか言えない。
――……というか、俺はそれを口にしてしまった。
人の死に対して、お見事と称賛してしまった俺がいた……。
突然として迫ってくる死に対して、最早、最初の頃に湛えていた色欲に支配された笑みはなく、次は自分なのでは? という恐怖に、完全に支配されてしまったようだ。
「恐慌状態に陥ったな。次で決まるだろう」
バラクラバの一人が冷たく言えば、
「次も同時だ」
と、ゲッコーさんが指示を出す。
胸壁にて依託射撃の姿勢になっている面々から一斉に返事があり、その後、ピシリという銃声が聞こえる。
息の揃った同時射撃は、まるで一発だけが発射されたかのようだった。
馬上の傭兵たちがバタバタと倒れていく様を見て、狙撃は一発ではなかったというのを実感させられる。
それほどに銃声はシンクロしていた。
――決まると発言したとおりに、悲鳴を上げた者達が馬の横腹を蹴って踵を返せば、我先に全速力で撤退していく。
傭兵たちに随伴していた歩兵からなる正規兵たちは、騎馬に置いていかれまいと後を追う。
命がなくなった仲間達の事なんて関係ない。自分だけでも助かりたいというのが分かる撤退だった。
約三十人による狙撃。
個による狙撃が二回。同時狙撃が二回。
少ない動作だったけど、取り残された軍馬は六十頭ほど。それが途方に暮れてその場に留まっていた。
「いいですね。一気に馬を手に入れることに成功しましたよ」
先生は大喜び。
次には指笛を吹く。それを聞いたヒッポグリフとスピットワイバーンが廠より飛び立つ。
「こちらまで追い立ててください」
言えば、人語を理解するのは流石は幻獣と竜といったところ。
――まるで牧羊犬のようだった。
空中から追い立て回し、上手い具合に糧秣廠の中へと、取り残された軍馬を全て誘導した。
「乗り手は愚かでも馬は立派ですね」
ご満悦の先生。
ここに来てからというもの、次から次へと物資が手に入るから嬉しいようだ。
「ところで逃げていく者達の追撃はしないのですか?」
コクリコの素朴な質問。
先生もだけど、S級さん達もそういった動きは見せない。
六十頭ちかい馬を手に入れるだけで満足気味だし。
「ゲッコー殿も言っておりましたが、真綿でジワジワとです。そうですね。ジワジワ――名をつけるならば蚕食の計とでもしますか」
蚕食って、蚕が葉を食べるように端から徐々に支配していくって意味だったな。
この戦いだけでなく、事後の公爵領もそうした感じで侵攻し、支配地域を増やしていき、最終的に全てを掌握するって算段なんだろう。
「それに追い込みすぎると死兵に変わりますので」
こちらが負ける事はなくても絶対ではない。
窮鼠猫を噛む。この面子で死者が出ることは無いとは思うけど、怪我人は出るかもしれない。
勇者の従者は最強たれ。
だからこそ怪我を負わせることが出来ると知れば、倒すことも出来ると思われて、無駄に士気が上がって死を恐れずに突撃などをしかけられるのは嫌だという。
「主はどうです?」
俺が会頭だからね。追撃をするかしないかの最終決定権は俺が有しているわけだ。
「――――追撃はなしです。ただでさえ少ない人数を割く必要は現状ではないと思います。防備を整えて、砦側と合流した時の為に、直ぐに迎え入れられるように準備をした方がいいでしょうね」
「素晴らしいご判断です」
恭しい一礼を俺に行う先生。これで正解のようだ。
俺は才能ないからね。有能な方々の発言はちゃんと聞き入れますよ。
呼応するように構えたS級さん達は、各々がターゲットと決めた者達に対して弾丸を撃ち込む。
全てが必殺必中。
「お見事」
五百メートル先であろうとも確実に頭部を撃ち抜くのはお見事としか言えない。
――……というか、俺はそれを口にしてしまった。
人の死に対して、お見事と称賛してしまった俺がいた……。
突然として迫ってくる死に対して、最早、最初の頃に湛えていた色欲に支配された笑みはなく、次は自分なのでは? という恐怖に、完全に支配されてしまったようだ。
「恐慌状態に陥ったな。次で決まるだろう」
バラクラバの一人が冷たく言えば、
「次も同時だ」
と、ゲッコーさんが指示を出す。
胸壁にて依託射撃の姿勢になっている面々から一斉に返事があり、その後、ピシリという銃声が聞こえる。
息の揃った同時射撃は、まるで一発だけが発射されたかのようだった。
馬上の傭兵たちがバタバタと倒れていく様を見て、狙撃は一発ではなかったというのを実感させられる。
それほどに銃声はシンクロしていた。
――決まると発言したとおりに、悲鳴を上げた者達が馬の横腹を蹴って踵を返せば、我先に全速力で撤退していく。
傭兵たちに随伴していた歩兵からなる正規兵たちは、騎馬に置いていかれまいと後を追う。
命がなくなった仲間達の事なんて関係ない。自分だけでも助かりたいというのが分かる撤退だった。
約三十人による狙撃。
個による狙撃が二回。同時狙撃が二回。
少ない動作だったけど、取り残された軍馬は六十頭ほど。それが途方に暮れてその場に留まっていた。
「いいですね。一気に馬を手に入れることに成功しましたよ」
先生は大喜び。
次には指笛を吹く。それを聞いたヒッポグリフとスピットワイバーンが廠より飛び立つ。
「こちらまで追い立ててください」
言えば、人語を理解するのは流石は幻獣と竜といったところ。
――まるで牧羊犬のようだった。
空中から追い立て回し、上手い具合に糧秣廠の中へと、取り残された軍馬を全て誘導した。
「乗り手は愚かでも馬は立派ですね」
ご満悦の先生。
ここに来てからというもの、次から次へと物資が手に入るから嬉しいようだ。
「ところで逃げていく者達の追撃はしないのですか?」
コクリコの素朴な質問。
先生もだけど、S級さん達もそういった動きは見せない。
六十頭ちかい馬を手に入れるだけで満足気味だし。
「ゲッコー殿も言っておりましたが、真綿でジワジワとです。そうですね。ジワジワ――名をつけるならば蚕食の計とでもしますか」
蚕食って、蚕が葉を食べるように端から徐々に支配していくって意味だったな。
この戦いだけでなく、事後の公爵領もそうした感じで侵攻し、支配地域を増やしていき、最終的に全てを掌握するって算段なんだろう。
「それに追い込みすぎると死兵に変わりますので」
こちらが負ける事はなくても絶対ではない。
窮鼠猫を噛む。この面子で死者が出ることは無いとは思うけど、怪我人は出るかもしれない。
勇者の従者は最強たれ。
だからこそ怪我を負わせることが出来ると知れば、倒すことも出来ると思われて、無駄に士気が上がって死を恐れずに突撃などをしかけられるのは嫌だという。
「主はどうです?」
俺が会頭だからね。追撃をするかしないかの最終決定権は俺が有しているわけだ。
「――――追撃はなしです。ただでさえ少ない人数を割く必要は現状ではないと思います。防備を整えて、砦側と合流した時の為に、直ぐに迎え入れられるように準備をした方がいいでしょうね」
「素晴らしいご判断です」
恭しい一礼を俺に行う先生。これで正解のようだ。
俺は才能ないからね。有能な方々の発言はちゃんと聞き入れますよ。
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