異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

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北伐

PHASE-840【ピリアの鎧】

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 二枚看板は傭兵団の中でも強者ではあった。
 だが申し訳ないが、現在の俺の相手としては役不足。
 二枚看板を傭兵団の平均値として考えれば、全体は大したことのない面子だろう。
 だが、その平均値を個の武だけで引き上げる存在がいるとするなら――、

「こいつだな」
 もしくは力こそが正義の傭兵団において、副団長のポジションに座るガリオンよりも強いのが、まだ見ぬ団長ってことなんだろう。

「団長と出会う時は、用心しないといけないな」

「何を言う。お前はここで終わる。団長に会うことなどない」

「そう言った発言をするヤツは基本、負けるんだよな~」

「ならばその基本とやらを我が拳で打ち砕いてやる!」
 不敵に笑むのは余裕の現れ――か。

「はぁぁぁぁぁぁあ!!」
 気合いと共にガリオンが輝き、裂帛の気合いが突風を生み出す。
 構える眼前では――、オレンジ色の輝きを体全体に纏ったガリオン。
 今度のは四肢だけではない。

「やっぱりファースンってピリアは体全体で留めることも出来るんだな」

「オーラアーマーと呼ばれるものだ」
 全体に纏うオーラの鎧。
 拳や蹴りによる攻撃力の向上と、防御力の強化を同時にする攻防一体の技ってとこだな。

「行くぞ!」
 アクセルからの攻撃パターンは一緒。
 でも――、

「おお!?」
 拳打と蹴撃の速度が上がっている。
 拳を躱し蹴りを防げば、体が簡単に後方へと吹き飛ばされる。
 全体に纏ったオーラを必要な箇所に移動させることで、加速や攻撃力アップも可能とするようだ。

「お次はこれだ」
 体勢を整えて着地をしたところに、一足で間合いの一歩手前まで詰め寄ってくると、

「アンリッシュ・ワンショット。アンリッシュ・バラッジ」
 右と左のワンツーを嫌らしい距離から放ってくる。
 残火の斬撃間合いに入らない位置からの攻撃は回避が取りにくい距離。
 反撃しようにもバラッジの面制圧で動きを制限される。
 結果、イグニースで防ぐ選択肢しかなかった。
 攻撃が止むのを見計らってのマスリリースでこちらも応戦するが、その時にはアクセルで俺の背後へと移動し、

「アンリッシュ・バラッジ」
 と、今度は両手で面制圧を行ってくる。

「いっだい!」
 オーラアーマー状態の攻撃時、体に纏うピリアの一部を両拳に移動させて威力を高めているようで、アーマー展開時前のバラッジよりも痛みが大きい。
 しかもファースン使用時と違って、オーラアーマーを展開していることから常に拳に力を留めた状態になっており、留めるという行程がスキップされている事もあって、攻撃に移行する速度も上がっており、隙をつきにくくなっているのも難点だ。

「これ、つえーな」

「ようやく認識したか」

「認識はした」

「ふん!」
 でも、

「よっと!」
 光を纏った正拳突きを籠手でガード。今度は後ろへは下がらない。

「ぬ?」

「まあ強いけど、耐えることは出来る。つまりは俺一人でも十分に戦える相手だな」

「生意気な小僧だ。その口を少しは閉じたらどうだ」
 お? 苛立ちを見せたな。
 強者を醸し出していたけど、苛立ちは焦りからってところかな?

「大方、俺が攻撃に耐えたことを信じたくないようだな。それだけあんたにとって、今の正拳突きは自信に満ちた一撃だったんだろう」

「黙れと言っている!」
 うん。図星だな。

「生意気な事ばかり言っているが防戦ばかりだな。攻撃を仕掛ける余裕がないのかな? よくそれで大言を吐けるものだな」

「じゃあこっちも攻めるさ!」
 マスリリースを放つ。
 しっかりとオーラを纏った手刀で切り払われる。
 その隙を突いてアクセルで側面を取り残火を振るも、全体に纏うオーラアーマーの一部を腕部に移動させて、バックラーサイズの盾を成形して防いでくる。

「便利だな」

「そうだろう」

「維持するのも大変だろうに」

「一度の戦闘をこなせるくらいの集中力は有している」
 そりゃ凄い。
 
 お返しとばかりのバラッジ。
 距離を取ってイグニースで防ぎきる。
 にしても面制圧のピリア、アンリッシュ・バラッジ。近中距離でいい効果を発揮する。
 攻撃だけでなく牽制も出来る便利な技だ。

 習得したいもんだよ。
 
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