異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

FOX4

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ミルド領

PHASE-956【べろ~ん】

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 へたり込んでいた美人二人が、支え合って立ち上がろうとしている。
 どんだけ駄目なのだろうか……。
 手を伸ばせばしっかりと掴んでくれるから俺としては役得だけど。

 ダイヒレンの登場によって、再び最強さんはアビゲイルさんと一緒になって最後尾へと移動。

 コクリコを除く女性陣も前衛の俺達から距離を取っての後衛となった。
 リンは至っては斬獲した事でダイヒレンの白い体液が一帯に飛び散ったのがすこぶる嫌だったようで、わざわざフロートで宙に浮いて体液を回避していた。
 それを見ていた残りの女性陣はリンに頼み込んで、スクワッドからのフロートにて移動。

「やれやれだぜ……」

「やれやれですね……」
 俺に続いてコクリコも同様の発言。
 戦いの場で体液程度を気にするなんて。と、堂々と歩むコクリコの姿に、ベルをはじめとした女性陣からは勇敢だと感嘆の声が上がっていた。
 そこまでの事じゃないだろう。と、コクリコが呆れから首を左右に振り、俺とゲッコーさんも動作を真似る。

「さて、次へと進むか!」
 後衛の女性陣を鼓舞するように快活よく扉を通過。
 ゲッコーさんとコクリコはすんなりついてくるけど、他は様子見……。
 溜め息を一つついてから。

「問題なし。ダイヒレンはもういないぞ」
 言えばようやく扉を通過。
 ダイヒレン相手だとメンタルが豆腐だな……。

 ――――長い通路を進む。
 いくつかの扉によって区切られた通路の床は、コンクリート製でつなぎ目のない綺麗な造り。
 カツコツと足音を響かせて歩く中で、時折、大きな発砲音が鳴り響く。
 ゲッコーさんが手にするAA-12が火を噴き、通路前方から無秩序に迫ってくるゴブリンゾンビの集団を瞬く間に倒していった。
 綺麗な通路は俺達が通過することで汚されていく。ゴブリンゾンビ達の体液が原因で。
 とはいえ、通路を先に進んで行けば、こちらが汚さなくても腐臭や汚れが目立ってくる。
 
 ゲッコーさんの一人で面制圧できるもん!AA-12  のおかげで、俺達は基本やる事はない。
 こうなるとコクリコが戦いたいとウズウズしはじめ、見せ場はまだあるとベルがなだめる。
 でもダイヒレンがまた出てくるのでは? と思っているのか、コクリコをなだめる声は震えており、説得力はなかった。

 ――――。

「さて」
 次の扉が目に入る。
 といっても今までのとは違う。頑丈そうな鉄の扉はひしゃげて開いた状態。
 開いていたから通路にはゴブリンゾンビが溢れてたんだな。

「それにしても気分悪いわね」
 ご立腹なのはシャルナ。
 ゴブリンゾンビの数に対しての不快感だった。
 通路を進む最中、ゲッコーさんが倒したゴブリンゾンビの数は五十を超えていた。
 最初の部屋にあったカプセルの数と釣り合わない多さ。
 つまりはこの奥にも実験体になったゴブリン達専用のカプセルがあるってことだろうし、相当数のゴブリンがここで実験に使用されていたという事になる。
 
 以前、王都外周で戦ったホブゴブリンの人間は亜人を見下す。という発言が脳内にて再生される。
 確かにこんな事をしていれば、ゴブリン達は魔王軍として人間の敵となるわけだよ。
 リズベッドの側仕えであるアルスン翁がこの場にいたら、間違いなく人に対して嫌悪感を抱いただろう。

「お邪魔しますよ」
 中腰にてひしゃげた扉を潜る。
 足を踏み入れた場所は、今までの部屋とは比べものにならないほど広い空間だった。
 空間は円形からなるもの。

「まるで地下闘技場のようだな」
 ブルホーン山の要塞を思い出す。
 足の底から伝わってくるのは、先ほどまでの硬い感触とは違い、わずかだが足が沈む感覚。
 コンクリートの床から白砂の地面へと変わっていた。
 綺麗な白砂と言いたいが、赤黒い汚れでまだら模様となっており、美しさより不気味さを醸し出している。

「さあ出てきなさい! このコクリコ・シュレンテッドが成仏させてあげますよ!」
 ウズウズした気持ちを発散させるように、広々とした円形の中で誰よりも先頭に立って発する声はよく反響した。
 
 ――……大声であったけども反応はない……。と思っていた矢先に、

「甘いですね」
 上からの襲撃をコクリコは横に飛んで回避。
 白砂を抉るのは槍のようなモノだった。
 全体がぬめっているドドメ色。
 その正体は――、

「ありゃ舌だな」
 槍と鞭の特性を持ったような長い舌が、天井よりコクリコを急襲。

「ファイヤーボール」
 不意打ちに慌てることなく回避の姿勢から体勢を整え、お返しとばかりの十八番おはこで反撃。
 ブレスレットとアンクレットのタリスマンを発動させてのファイヤーボールは、天井からの急襲者に見事命中。
 
 爆発の熱が伝わったようで、俺の後ろにいたアビゲイルさんが「熱い」と小さく声を漏らしていた。
 直撃を受けた急襲者が落下してくる。
 白砂の地面に背中からぶつかりそうになったところで姿勢を反転させ、四肢にて着地。
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