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ミルド領・閑話
PHASE-1013【時間の使い方】
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「団長! 捕捉されます!」
俺のブーステッド発動の声を耳にして、続く焦燥からなる声の主はガリオン。
カイルに釘を刺されていたけど、自分の主を心配してついつい立会人としての中立を保てなかったご様子。
いいけどね。それも踏まえて立会人に指名したし。
それだけ忠誠心があるってことだから。
「にしてもよく見える」
アクセルを使用されても、ブーステッドを使用すれば捕捉が難しくないのはガリオン戦で証明済み。
ガリオンの時みたいに、俺がしっかりと視線を合わせていることに驚きを禁じえないといった表情には――なっていないな。
先の戦いで俺がブーステッドも残してるって発言をしてたからな。
使用されるのは分かっていたからか、マジョリカは冷静に俺と視線を合わせていた。
「アクセル」
俺も使用する。
マジョリカは後方に回り込もうとしていたようだけども、それをしっかりと塞ぐように前に移動し、
「ふん!」
横一文字。
ブーステッドありきなら、アクセルから即攻撃へとスムーズに繋げる芸当は容易くなる。
マジョリカには出来ないで、俺には出来る芸当。
各ピリアによる能力向上をさらにブーステッドによってブーストすれば、動体視力、膂力、移動速度と反応速度すべてにおいて俺が上回るというもの。
「「「「ああ……」」」」
今回の傭兵団による第1行第1段は激高のものではなく、嘆きからのものだった。
アクセルの最中に突如として姿を見せた自分たちの団長の姿は、吹き飛び地面に転がるといったもの。
忠誠心の高い者達が嘆くには十分な姿。
「お……のれ……」
「ちょいさ」
杖代わりとして木刀を利用し立ち上がろうとするところに追撃。
木刀を力強く打ち払って手から飛ばせば、五体投地を思わせるように前のめりで倒れる。
前言どおりの姿にしてやった。
ここでブーステッド解除。
数秒だけの使用だったから、体への反動は――――なし。
「くぁ……」
呼吸がうまく出来ないようだ。
「結構、強めに入ったからな」
マジョリカは囚われの立場。当然、鎧は装備していない。無地の囚人服だけ。
木刀とはいえ、各能力向上ピリアにプラスしてのブーステッドによる攻撃を受けてんだからダメージは相当だろう。
「回復してあげて」
言えば直ぐさまシャルナがファーストエイド。
ヒールじゃないところが一応の警戒といったところなんだろう。
未だ呼吸が辛そうな様子。ファーストエイドによる回復では完治まではいかないようだ。
それだけブーステッドによる一撃が強力な証拠。下手すると内臓破裂で危険な状態になってたかもな。
「これで俺の二勝一敗でいいか? こっちは鎧を着てたから駄目って言うなら、同じ条件でやるけど」
「……いやいい。どのみち攻撃が当たっていないのだから鎧も服も関係ない。で、どうする? 負けたのだから私を処刑するか」
「そうだな――――処刑がやっぱり妥当だよな」
言った途端に、ギャラリーの傭兵団が臨戦態勢とばかりに拳を構える。
対してこっちサイドも構える。
ベルの圧を受けていたけども、こっちサイドは俺の為。傭兵団は団長の為とばかりに今にも動き出しそうだった。
双方共に、素晴らしい忠誠心を見せてくれる。
その忠誠心に突き動かされて、両サイドの中から一人でも行動に移れば雪崩を起こすように一気に全体が動き、この庭に鮮血が流れることになる。
そんな事はさせないとばかりに、先ほどまでプロテクションを展開してくれていたスケルトンピルグリム達が、双方の間に割って入るように隊列を作ってくれる。
「リン、ナイス」
「当然」
俺のナイス発言に、こっちサイドの連中は察してくれたようで、肩に入れていた力を弛緩させる。
ナイス=戦闘は禁ずると理解してくれる早さに感心する。
「処刑となれば受け入れよう。だがそれは私だけでいいだろう。他の者は死ではない罰で頼む」
「駄目だ」
きっぱりと断れば、マジョリカの碧眼が丸くなる。
「……手厳しいな」
「敗者は嘆願は出来ても、結局は勝者が決定権を持っているからな。俺が駄目と言ったら駄目」
軽々しく言うもんだから、傭兵団の方から気炎となって視認できそうな程に怒りが立ち上っている。
「甘い答えをお前は導き出したが、その答えにこちらは勝利によって応えられなかった。結局は私の敗北が原因で全員が処刑となるか……」
「そうだな。全員、死ぬ結果になったな」
「……ああ……」
顔を伏せるマジョリカ。
そのマジョリカの横にガリオンが立つと、
「受け入れよう。だが我々から頼む。団長は最後だ。団長の死を見たくはないのでな」
「立会人ありがとう。その嘆願はしっかりと受け入れるよ」
「感謝する」
深い一礼。
強さだけが絶対である組織ではあるけども、礼儀はしっかりとしている。
むしろ、強者に対しては礼節を重んじるのかもな。
一応、俺はガリオンに勝利してるし、組織のトップの敗北を今しがた目にしたわけだしな。
いやしかし勿体ない。真っ当な傭兵団だったら、今ごろこの大陸で尊敬の眼差しを向けられる大人気の傭兵団になってただろうに。
恨みに固執した結果がこれだもんな。
ガリオン達に救われる前までに刻まれた絶望を怨嗟に変えないで、踏み台として自分の成長に活かせれば結果は変わっていただろうにな。
まあ、刻まれた絶望を成長に活かすのが難しいほどの傷を負っているのも事実。
俺が同じ境遇なら立ち直れないまま廃人になっているだろう。
だがやはり勿体ない。勿体ない時間の使い方だったぞ――マジョリカ。
俺のブーステッド発動の声を耳にして、続く焦燥からなる声の主はガリオン。
カイルに釘を刺されていたけど、自分の主を心配してついつい立会人としての中立を保てなかったご様子。
いいけどね。それも踏まえて立会人に指名したし。
それだけ忠誠心があるってことだから。
「にしてもよく見える」
アクセルを使用されても、ブーステッドを使用すれば捕捉が難しくないのはガリオン戦で証明済み。
ガリオンの時みたいに、俺がしっかりと視線を合わせていることに驚きを禁じえないといった表情には――なっていないな。
先の戦いで俺がブーステッドも残してるって発言をしてたからな。
使用されるのは分かっていたからか、マジョリカは冷静に俺と視線を合わせていた。
「アクセル」
俺も使用する。
マジョリカは後方に回り込もうとしていたようだけども、それをしっかりと塞ぐように前に移動し、
「ふん!」
横一文字。
ブーステッドありきなら、アクセルから即攻撃へとスムーズに繋げる芸当は容易くなる。
マジョリカには出来ないで、俺には出来る芸当。
各ピリアによる能力向上をさらにブーステッドによってブーストすれば、動体視力、膂力、移動速度と反応速度すべてにおいて俺が上回るというもの。
「「「「ああ……」」」」
今回の傭兵団による第1行第1段は激高のものではなく、嘆きからのものだった。
アクセルの最中に突如として姿を見せた自分たちの団長の姿は、吹き飛び地面に転がるといったもの。
忠誠心の高い者達が嘆くには十分な姿。
「お……のれ……」
「ちょいさ」
杖代わりとして木刀を利用し立ち上がろうとするところに追撃。
木刀を力強く打ち払って手から飛ばせば、五体投地を思わせるように前のめりで倒れる。
前言どおりの姿にしてやった。
ここでブーステッド解除。
数秒だけの使用だったから、体への反動は――――なし。
「くぁ……」
呼吸がうまく出来ないようだ。
「結構、強めに入ったからな」
マジョリカは囚われの立場。当然、鎧は装備していない。無地の囚人服だけ。
木刀とはいえ、各能力向上ピリアにプラスしてのブーステッドによる攻撃を受けてんだからダメージは相当だろう。
「回復してあげて」
言えば直ぐさまシャルナがファーストエイド。
ヒールじゃないところが一応の警戒といったところなんだろう。
未だ呼吸が辛そうな様子。ファーストエイドによる回復では完治まではいかないようだ。
それだけブーステッドによる一撃が強力な証拠。下手すると内臓破裂で危険な状態になってたかもな。
「これで俺の二勝一敗でいいか? こっちは鎧を着てたから駄目って言うなら、同じ条件でやるけど」
「……いやいい。どのみち攻撃が当たっていないのだから鎧も服も関係ない。で、どうする? 負けたのだから私を処刑するか」
「そうだな――――処刑がやっぱり妥当だよな」
言った途端に、ギャラリーの傭兵団が臨戦態勢とばかりに拳を構える。
対してこっちサイドも構える。
ベルの圧を受けていたけども、こっちサイドは俺の為。傭兵団は団長の為とばかりに今にも動き出しそうだった。
双方共に、素晴らしい忠誠心を見せてくれる。
その忠誠心に突き動かされて、両サイドの中から一人でも行動に移れば雪崩を起こすように一気に全体が動き、この庭に鮮血が流れることになる。
そんな事はさせないとばかりに、先ほどまでプロテクションを展開してくれていたスケルトンピルグリム達が、双方の間に割って入るように隊列を作ってくれる。
「リン、ナイス」
「当然」
俺のナイス発言に、こっちサイドの連中は察してくれたようで、肩に入れていた力を弛緩させる。
ナイス=戦闘は禁ずると理解してくれる早さに感心する。
「処刑となれば受け入れよう。だがそれは私だけでいいだろう。他の者は死ではない罰で頼む」
「駄目だ」
きっぱりと断れば、マジョリカの碧眼が丸くなる。
「……手厳しいな」
「敗者は嘆願は出来ても、結局は勝者が決定権を持っているからな。俺が駄目と言ったら駄目」
軽々しく言うもんだから、傭兵団の方から気炎となって視認できそうな程に怒りが立ち上っている。
「甘い答えをお前は導き出したが、その答えにこちらは勝利によって応えられなかった。結局は私の敗北が原因で全員が処刑となるか……」
「そうだな。全員、死ぬ結果になったな」
「……ああ……」
顔を伏せるマジョリカ。
そのマジョリカの横にガリオンが立つと、
「受け入れよう。だが我々から頼む。団長は最後だ。団長の死を見たくはないのでな」
「立会人ありがとう。その嘆願はしっかりと受け入れるよ」
「感謝する」
深い一礼。
強さだけが絶対である組織ではあるけども、礼儀はしっかりとしている。
むしろ、強者に対しては礼節を重んじるのかもな。
一応、俺はガリオンに勝利してるし、組織のトップの敗北を今しがた目にしたわけだしな。
いやしかし勿体ない。真っ当な傭兵団だったら、今ごろこの大陸で尊敬の眼差しを向けられる大人気の傭兵団になってただろうに。
恨みに固執した結果がこれだもんな。
ガリオン達に救われる前までに刻まれた絶望を怨嗟に変えないで、踏み台として自分の成長に活かせれば結果は変わっていただろうにな。
まあ、刻まれた絶望を成長に活かすのが難しいほどの傷を負っているのも事実。
俺が同じ境遇なら立ち直れないまま廃人になっているだろう。
だがやはり勿体ない。勿体ない時間の使い方だったぞ――マジョリカ。
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