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トール師になる
PHASE-1072【門前払いしてほしかった】
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「弟子を取った以上、責任をもってしっかりと面倒を見るのだぞ。そもそもトールも半人前の身なのだからな」
出来た帝国軍中佐は、テーブル上に並ぶボトルを片付けていく。
ゲッコーさんを見る目が若干冷たかったあたり、俺達が村に行っている間も同じような事をしてたのが分かる。
俺は弟子達の面倒を見て、ベルはミユキを抱っこしながら飲兵衛の面倒を見てたのかもな。
ていうか、どんだけ飲んでんだよ……。
まあそれはいいとして、
「その半人前が弟子を取るとか問題だよな」
流れで弟子を取ってしまったけども。
本音を言うならサルタナはいいとしても、やはり次期王であるエリスを弟子にするってのはストレスが半端ではない。
とはいえ、弟子二人がギムロンに得物を作ってもらっている時の笑顔や、弟子になれるという時の笑顔を思い出せば、今となっては断ることも出来ないからな。
「なあベル。どう思う?」
継いで問うてみれば、
「いや、いいのではないか。育てる側に回れば、いま自分に何が足りないかも見えてくるだろう。そういった事で言えば、私も半人前だからな」
最強の帝国軍中佐が半人前って言われても説得力はないけどな。
確かに感情の高ぶりで周囲が見えなくなったりして、力の加減が出来なくなった結果、未だに弱体化してる状態だけどさ。
「それに人を育てる程度には強くはなっている」
「マジでか!」
「ああ」
なんて嬉しい発言なんだろう。
これは俺の知らないところで好感度がかなり上がっているようだな。
「コクリコとギムロンを二人相手にして勝ったとも聞いている」
「おう。流石に地力だけの限定的な戦いになると苦労する」
「それでもこの二人に勝ったのは素晴らしい」
本当に嬉しい限りだよ。
ご褒美になんか素敵なイベントでも発生しないかしら。
「次の力試しが楽しみだ。いずれは全力の私と戦ってもらいたいものだ」
――……俺ちゃんそういうのはいらない……。
というか弱体化で思ったけど、一年も弱体化ってどうよ。いくら何でも長すぎだろう。
元に戻る為の必須条件とかあるのかな。
――……ゲームやる前に死んだからな……。
う~ん。と、唸りながら考え込んでいるその側では――、
「はぁぁぁぁぁぁあ……」
俺の唸り以上の溜め息が聞こえてくる……。
上機嫌なゲッコーさんばかりを見て、そちらには目も耳も向けるのを避けていたけども……。
「まあ家主殿、そんなに思い詰めるもんじゃないぞ」
ギムロンに酒を注がれれば、一気に飲み干すルミナングスさん。
俺が次期王の剣術の師匠になったことがエルフさん達の間で瞬く間に広がり、氏族の面々もその話題で持ちきりだったという。
その勇者を囲っているという立場であるルミナングスさんは、のべつ幕なしに氏族とその息のかかった連中から面会を求められていたそうだ。
俺達が帰ってくる夕暮れ前の出来事だったようだから、短時間でかなりの相手をしていたんだろう、とても疲れたご様子。
普段は綺麗に整っている髪も乱れており、余計に疲れて見える。
精神的にもまいっているようで、ギムロンが愛飲する度の強い酒を一気に飲んでも酔いが回らないとばかりに次を所望していた。
「こういった事になってすみません」
「いえ、勇者殿にはまったく落ち度はありません。エリスヴェン殿下が自ら申し出てのことですし、次期王として力を付けたいという思いは良いことです……」
言いながらも声には疲れが混じっている。
「しっかりしてよ父様」
「長いこと心配させていたお前に言われてもな」
「なによ!」
「まあまあ、さあもう一献」
有り難いと言いながら、シャルナとの間に入るギムロンからの酌に杯を傾ける。
なみなみと注がれた酒をグビグビ。
段々とペースが早くなっている……。
ドワーフが好む酒をそれだけ飲めば、倒れそうで心配になってくるね。
「失礼いたします」
「……また……か……」
使用人の美人エルフさんが広間にやってくる。
入ってきた使用人さんの表情は浮かないもの。
その表情から察したようで、ルミナングスさんは溜め息と共に立ち上がる。
どうやらまた来客のようだ。
うんざりとしているのか、通路へと進む足取りは重い。
「すでにこちらに――」
「そうか……」
力なく肩を落とすルミナングスさん。疲れ果てたというのが背中から伝わってくる。
「失礼する」
ああ……。こら特に疲れそうだわ。
俺の中で好感が持てない氏族の一人、ポルパロングじゃねえか。
謁見の間とその後の夕食の時は蒼白になっていたけど、本日はなんとも清々しい笑顔だね。
こういったタイプが清々しい表情で近づいてくるってのは、ろくな事じゃないのがテンプレートだよな……。
心底では――、門前払いだ、お帰り願え。って呟いている俺がいる。
まあ門前どころか、広間までズカズカと入り込んでしまっているけども……。
出来た帝国軍中佐は、テーブル上に並ぶボトルを片付けていく。
ゲッコーさんを見る目が若干冷たかったあたり、俺達が村に行っている間も同じような事をしてたのが分かる。
俺は弟子達の面倒を見て、ベルはミユキを抱っこしながら飲兵衛の面倒を見てたのかもな。
ていうか、どんだけ飲んでんだよ……。
まあそれはいいとして、
「その半人前が弟子を取るとか問題だよな」
流れで弟子を取ってしまったけども。
本音を言うならサルタナはいいとしても、やはり次期王であるエリスを弟子にするってのはストレスが半端ではない。
とはいえ、弟子二人がギムロンに得物を作ってもらっている時の笑顔や、弟子になれるという時の笑顔を思い出せば、今となっては断ることも出来ないからな。
「なあベル。どう思う?」
継いで問うてみれば、
「いや、いいのではないか。育てる側に回れば、いま自分に何が足りないかも見えてくるだろう。そういった事で言えば、私も半人前だからな」
最強の帝国軍中佐が半人前って言われても説得力はないけどな。
確かに感情の高ぶりで周囲が見えなくなったりして、力の加減が出来なくなった結果、未だに弱体化してる状態だけどさ。
「それに人を育てる程度には強くはなっている」
「マジでか!」
「ああ」
なんて嬉しい発言なんだろう。
これは俺の知らないところで好感度がかなり上がっているようだな。
「コクリコとギムロンを二人相手にして勝ったとも聞いている」
「おう。流石に地力だけの限定的な戦いになると苦労する」
「それでもこの二人に勝ったのは素晴らしい」
本当に嬉しい限りだよ。
ご褒美になんか素敵なイベントでも発生しないかしら。
「次の力試しが楽しみだ。いずれは全力の私と戦ってもらいたいものだ」
――……俺ちゃんそういうのはいらない……。
というか弱体化で思ったけど、一年も弱体化ってどうよ。いくら何でも長すぎだろう。
元に戻る為の必須条件とかあるのかな。
――……ゲームやる前に死んだからな……。
う~ん。と、唸りながら考え込んでいるその側では――、
「はぁぁぁぁぁぁあ……」
俺の唸り以上の溜め息が聞こえてくる……。
上機嫌なゲッコーさんばかりを見て、そちらには目も耳も向けるのを避けていたけども……。
「まあ家主殿、そんなに思い詰めるもんじゃないぞ」
ギムロンに酒を注がれれば、一気に飲み干すルミナングスさん。
俺が次期王の剣術の師匠になったことがエルフさん達の間で瞬く間に広がり、氏族の面々もその話題で持ちきりだったという。
その勇者を囲っているという立場であるルミナングスさんは、のべつ幕なしに氏族とその息のかかった連中から面会を求められていたそうだ。
俺達が帰ってくる夕暮れ前の出来事だったようだから、短時間でかなりの相手をしていたんだろう、とても疲れたご様子。
普段は綺麗に整っている髪も乱れており、余計に疲れて見える。
精神的にもまいっているようで、ギムロンが愛飲する度の強い酒を一気に飲んでも酔いが回らないとばかりに次を所望していた。
「こういった事になってすみません」
「いえ、勇者殿にはまったく落ち度はありません。エリスヴェン殿下が自ら申し出てのことですし、次期王として力を付けたいという思いは良いことです……」
言いながらも声には疲れが混じっている。
「しっかりしてよ父様」
「長いこと心配させていたお前に言われてもな」
「なによ!」
「まあまあ、さあもう一献」
有り難いと言いながら、シャルナとの間に入るギムロンからの酌に杯を傾ける。
なみなみと注がれた酒をグビグビ。
段々とペースが早くなっている……。
ドワーフが好む酒をそれだけ飲めば、倒れそうで心配になってくるね。
「失礼いたします」
「……また……か……」
使用人の美人エルフさんが広間にやってくる。
入ってきた使用人さんの表情は浮かないもの。
その表情から察したようで、ルミナングスさんは溜め息と共に立ち上がる。
どうやらまた来客のようだ。
うんざりとしているのか、通路へと進む足取りは重い。
「すでにこちらに――」
「そうか……」
力なく肩を落とすルミナングスさん。疲れ果てたというのが背中から伝わってくる。
「失礼する」
ああ……。こら特に疲れそうだわ。
俺の中で好感が持てない氏族の一人、ポルパロングじゃねえか。
謁見の間とその後の夕食の時は蒼白になっていたけど、本日はなんとも清々しい笑顔だね。
こういったタイプが清々しい表情で近づいてくるってのは、ろくな事じゃないのがテンプレートだよな……。
心底では――、門前払いだ、お帰り願え。って呟いている俺がいる。
まあ門前どころか、広間までズカズカと入り込んでしまっているけども……。
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