異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

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トール師になる

PHASE-1074【仲良く? 哄笑】

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 ――――静々とした足取りにて、黒いローブを纏った二人の女性が入ってくる。
 ローブと同色の黒地からなるヴェールで顔は隠されていたが、

「勇者殿の前だ」
 このポルパロングの発言に体をビクリと動かし、ヴェールを外す。
 外す手は若干、震えていた。

「おお……」
 思わず声を漏らしてしまう。
 俺のリアクションを目にして、ポルパロングが更に歪んだ笑みを浮かべる。
 俺が目の前の美人たちに魅了されたと思ったようだ。
 まあ魅了されているけど。

 ヴェールを外して一礼し、俺へと顔を向けてくる美人さん二人は、褐色の肌、銀色の髪、紫色の瞳からなり、笹の葉のように長い耳をもった――、

「ダークエルフ」

「左様です。その中でも選りすぐりの美人です」
 ウーマンヤールというエルフ世界では一番下に位置する階級の女性を俺にあてがってくる。
 階級を意識しているくせにこういった趣味があるということか。
 その階級をいいように利用して、さぞ楽しんでいるんだろうな……。

「いい趣味で」

「そうでしょう」
 ――……へっ。馬鹿には皮肉も通じないか。
 カリオネルといい勝負が出来るかもな。

「戦利品ですか?」

「左様です。反乱を起こした者たちですからな。捕らえて下女として雇ってやっております」

「感心できませんぞシッタージュ殿」
 ここでルミナングスさんが入ってくる。
 
 場の空気は完全に冷め切っているけども、

「何を言いますファロンド殿。本来ならばこの者達は反乱の罪で死罪も当然でした。それをこうやって生かし、尚且つ雇っているのです。しっかりと手当も出しております。今回に至っては勇者殿の役に立てるのです。この者達にとっては幸福そのものでしょう」
 はあ……、喋々とアホなことを……。
 そもそもエルフ王の決断で、ダークエルフ達はウーマンヤールに落とすことで極刑は無くなったはずなのにな。
 氏族という権限を利用しての趣味だろうな……。
 カリオネルとはまた違ったタイプの馬鹿だな。
 あいつは実力に見合っていない自信を有した馬鹿。
 コイツは場の空気がまったく読めない馬鹿だな。
 長命だからコイツの方がたち悪いのかな……。
 いや、馬鹿のディフェンディングチャンピオンはカリオネルで揺るがないか。あいつも空気が読めないし。
 まあコイツもかなりの馬鹿なのは分かった。
 だが馬鹿とはいえ氏族様だ。

「このダークエルフの美人二人は俺がもらっていいんですよね?」

「勇者殿!?」
 ルミナングスさんは驚くし、シャルナは俺に怒りの目を向けてくる。
 コクリコは幻滅したといったところかな。
 残りの面子は窺うといったところ。
 流石だね。思考が浅い二人とは違うというものだ。

「そう言ったではないですか。その為の連れてきたのですから」

「ということはですよ。所有権は完全に俺へと移行されて、あんな事やこんな事をやっても許されるって事ですよね!」

「ハハハハハ――ッ! 流石は勇者殿。強き御方はやはり色事も巧みでないといけませんからな。もちろん好きなように扱ってください。この者達は勇者殿に完全に譲渡するのですから。ほら、お前達も新たな主にしっかりと頭を下げるのだ」
 言われれば、言われるままに頭を下げてくる。
 さんざっぱら心と体に色々と刻まれたんだろうな……。
 だがまあ言質はとったし、ここにいる面々も証人となってくれる。

「いや~こんな美人さん達を与えてくださり有り難うございます。好きなだけ自由にさせてもらいますよ」

「どうぞどうぞ。これを気に勇者殿とは懇意な関係になれれば幸いでございます」

「こちらもそうなれればいいな~。と、思います」

「では私はこれで、これ以上いれば勇者殿のお楽しみの時間を奪うことになりますからね」

「ええ! ええっ!」

「「ハハハハハ――ッ!!」」
 固い握手を交わせばポルパロングは軽い足取りで屋敷から去って行った。
 俺とすっかり仲良くなったと思ってんだろうな~。
 馬鹿の強味って、鈍感で単純なところよね。
 
 とにもかくにも、手を消毒したい。
 出来ればアルコール濃度75%くらいので――。
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